1945年6月の神戸。
父は戦地にいて母は空襲で亡くした14歳の清太と4歳の節子の兄妹の生を描いた作品。
っつーか観たくなかった......。だから観たくねえって言ったのに......。
多感な子供の頃に『はだしのゲン』を読んで戦争の悲惨さというものを多少なりとも想像したことはあるのでこんな子供が戦争の犠牲になる......しかも冒頭で既に2人とも死ぬって分かってる......ような映画なんかつらくて観たくないに決まってんだけど、しかし素晴らしい映画でした。
序盤から空襲で母親が死ぬシーンとか子供向けアニメとは思えないほど容赦なさすぎるし、これが『トトロ』と同時上映されたってのが1番の驚きですよね。
ただ前線ではなく銃後の女子供老人の世界が舞台なので敵の攻撃の脅威とかよりも飢えや全体主義の同調圧力が怖さの主眼になってます。
......というか、むしろ戦争の話ではない感じすらしますね。
というのも、主人公の清太は戦争中でしかも親戚の家に厄介になっているにもかかわらず、働きもせず家の手伝いもせずに夏休みみたいに毎日節子と遊び呆けているばかりなんですよね。
これに対して親戚のおばちゃんが嫌味を言いたくなるのは当たり前というか、むしろ嫌味程度で済んでいて優しすぎる気さえします。
だから「清太がクズすぎる」みたいな感想の人が一定数いるのはその通りだと思うんです。
ただ、個人的にはこれはクソ全体主義の奴隷になって生きるよりも人間としてのプライドを持って死ぬことを選んだ坊ちゃんの反骨精神のお話な気がするんすよね。
一緒にしちゃいけないですけど、私も「あいつはホモ」だの「お前はシンショー」だのつまんねえことしか言わないクラスメイトに合わせるなんて絶対出来なくてそのために若干イジメられるという不利益を被っても意地を曲げられないタイプの子供だったのでかなり共感しちゃうところがありました。
「お国のため」という空気自体がもう完全に生理的に無理でそういう理屈で生きてるやつなんか眼中にないみたいなとこ、好きすぎる。
もちろんそれで地域社会との関わりを断てば生きてはいけないってのが悲劇。
でもクソJAPAN帝国に小さな反旗を翻して2人だけで暮らした短い時間は蛍の光のような刹那の美しさに満ちていて泣くしかなかったです。
節子があまりにも可愛いから、終局に至ってから節子との思い出の全てを思い出して泣けてしまうんですよね。
ほいでラストシーンがまた非常に意味深かつ印象的でしたね。
その辺は下にネタバレで書いていきます。
ともあれ、観たことを後悔しかしてないってくらいの傑作でした。
冒頭で「僕は死んだ」と独白した清太と節子の霊魂(?)が、ラストシーンでは現代の神戸の煌びやかな夜景を山の上から見下ろしているという意味深な終わり方。
2人の霊魂があの時を繰り返し繰り返し追体験しながら現代に至るまで消えられずにあるという感じ?
我々現代人への戦争を忘れるなというメッセージだったり、完全に復興したように見えても戦争の傷跡はまだ残っている......みたいな見方もできると思います。
また、個人主義的な現代と、地域社会との関わりを断った清太たちとを重ね合わせているようにも。
逆に、経済成長ばかりを追い求めて過労死だの格差だのが問題になる現代に戦時下の社会から個人への圧迫を重ねているようにも......。
とにかく、戦争を知らない子供たちである私がしんどい気持ちにはなりながらもどこか昔のこと他人のこととして眺めていたのを最後に画面の向こうから告発されるような忘れがたいラストシーンでした。
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