偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

押井守『誰も語らなかったジブリを語ろう』感想

押井守監督によるタイトル通りジブリを語る1冊。

厳密にはジブリ以前の『風の谷のナウシカ』から『思い出のマーニー』までの映画21作品を監督別(宮崎駿高畑勲、第3の監督たち)に1作品ずつ語っていくという本。
対談の形式になっていて、映画ライターの渡辺麻紀氏が聞き手を務めているのですが、この渡辺さんのあっけらかんとしたキャラクターが面白く、押井さんのほぼ暴言だらけの殺伐とした感じ(?)を癒してくれていていいコンビだなと思います。

かっちりした評論ではなく2人のおしゃべりを聞いてる感じなので読みやすいんですが、一方で結局は監督やジブリ自体をばかりディスってるので各作品の内容への掘り方がちょっと浅く感じてしまったのが残念なところ。

そうはいってももちろん私みたいな素人には思いもつかないような視点から語られているのでめちゃくちゃ面白かったです。
「宮さん(駿)はアニメーターとしては天才だけど監督としては二流」というのが、物語構造の広げるばっかで畳まれなさや、テーマとフェティッシュとの矛盾などから語られるのにはなるほどと思いました。お話はボロクソだけどアニメとしてはバリクソ褒められているので、むしろ本書を読んでからまた宮崎駿作品のあの動画自体が気持ちいい感覚を観たくなってきてしまいます。
あと「高畑さんはクソインテリ」と言われまくってて高畑派の私としてはショックでした......笑。

しかしこんだけボロクソ言いまくっててもどこかツンデレ的な愛が伝わってくるのでジブリファンとしても不快にならずむしろダメなところはダメとした上でそんでもやっぱジブリって凄えなと思わされるし押井さんの作品は『うる星2』しか観たことないので他のも観てみたいなとも思わされました。
とりあえず『紅の豚』だけ実は観てないので早いうちに観なきゃね。