偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

CUBE(1997)


目が覚めるとキューブが連なる建造物に閉じ込められていた男女6人。彼らは部屋を渡り歩きながら脱出経路を探すが、いくつかの部屋には死の罠が仕掛けられていて......。

キューブ (Cube)

キューブ (Cube)

  • ニコール・デ・ボア
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覚えてないけどたぶん10年近く前に観た本作。
前回観た時の感想を読み返してみると、「謎解きモノかと思ったら違ってたしイヤな気持ちになるだけでいまいち(意訳)」とのことでしたが、大人になって(?)から観るとめっちゃ面白かった!こういう再評価があるからむかーし観た映画もたまには観返さないとね💫

というわけで本作ですが、本作でお馴染みのヴィンチェンゾ・ナタリ監督の長編映画デビュー作。

初見時の感想通り、脱出方法の謎解きに関しては数学の天才キャラがなんか私にはよく分からん計算をして「この部屋は安全!」とか言ってるだけでよく分からないし、結局なんでキューブに閉じ込められたのかとかの説明も特にないのでミステリーだと思って観ると肩透かしではありまつ。
しかし本作の魅力は別のところにありました。

まず、閉鎖空間そのものの恐怖と、その状況において暴かれる人間の本性への恐怖。
これは私が前回見たときは閉所恐怖症じゃなかったせいかもしれんけど、とにかく狭くて窓がない空間が怖すぎる。テレビで見てる分には良いんだけど劇場で見たらパニクりそうで怖いし、実際ここに入れられたらたぶん自ら罠に飛び込むと思う。
その罠のバリエーションの多さも楽しくて、ストーリー的には意外と人間ドラマメインなので人がぽんぽん死ぬわけじゃないけどその分オープニングのアレと顔にぶっかけられるアレのインパクトが際立っていて最高。映画に出てくる好きな死体ランキングトップクラスかもしれん。
そんなグロいシーンもサービスで見せてくれつつ、人間が怖い側面が強い。
少人数で閉じ込められ、協力して外に出るという目的のために動く彼らですが、その和を乱す人間も出てきたりして上手くいかないのが現実社会の縮図のようでヒリヒリします。序盤と終盤でキャラクターたちの印象がガラッと変わるのが上手い......。
外界と隔絶された空間と6人のキャラクター。ある程度キャラ付けが記号的なのが、かえっていろんなタイプの人間の簡潔な暗喩のようでもあります。男と女、警察に医者に会社員に学生に犯罪者に障害者と多様な人間を揃えたビオトープのよう。
本作の展開自体が、差別や不寛容、戦争のメタファーのようであり、幾重にも皮肉な風刺の効いた結末は絶望的でもあり希望のようでもあります。本作におけるCUBEがパンドラの箱だったのだと思い知らされます。

あともちろん低予算なのを逆に利用してワンセットのCUBEを連ねて無限の空間のように見せるアイデアとかもエゲツなくて、低予算ソリッドシチュエーションホラーの先駆作として今なお語り継がれるだけある傑作だと思います。前観た時はイマイチとか言ってマジごめん。