偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』感想

観たことある映画の『回転』『ザ・ターニング』の原作ということで気になっていた作品です。
あと、大学の頃に後輩に勧められてたんだけど、卒業して疎遠になってきてもう2度と会うこともないのかなと思うくらい時間が経ってようやく読みました。彼は元気やろか。


光文社古典新訳文庫土屋政雄氏訳の版で読みました。
新潮文庫版もぱらぱらっと見たんだけど、こっちのが読みやすそうだったので......。でもマジで読みやすくて翻訳モノ慣れてない身としては嬉しかったです。



両親がおらず、兄妹と使用人だけが暮らす田舎のお屋敷。兄妹の伯父に家庭教師として雇われた若い女性の「わたし」は、屋敷にいるはずのない男の姿を見る。その日から、「わたし」の周りに恐ろしいことが起こり始め......。


はい、というわけで、文学史上における価値とか社会への目線とか、そういう難しいことは分かんないっすけど普通に読んでて面白かったです。

いわゆる「信頼できない語り手」の先駆的な作品らしいです。
そもそもプロローグ部分でこの物語が二重の枠の中にあることが明かされていて、このお話自体が全て虚構、または伝聞の過程で変形したものである可能性が示唆されます。
それはそれとして、本編の語り手である家庭教師の「わたし」が非常に胡乱な存在であり......。
彼女、めっちゃ良い人なので、最初のうちは感情移入して読んじゃうんですが、ところどころで「ん?」ってなるんですね。その微妙〜〜な不信感が、だんだん「んんん???」「えっ???」と膨らんでいく薄気味の悪さ。
起こる出来事自体は幽霊らしい男や女が出たり子供たちの様子が変だったりするくらいなんだけど、語り口の巧妙さで読まされてしまうあたり心理小説の先駆みたいに言われてるのも納得です。

そうは言っても前半はやはりあんま何も起きないのでやや退屈ではあるんですが、後半から一気にギアが上がって一気読みしてしまいました。
印象的なラストシーンも素晴らしい。あそこで終わるのがかっこいいですね。


全体に仄めかしだけで成り立っているような話なのでいかようにも解釈できそうですが、隠されていることでより強く感じるセックスの匂いを踏まえてみると、概ね固まってくる感じはします。
ちゃんと考察したいけど気力がないので、とりあえず感想だけで終わっておきます。3年前ならもうちょいがっつり書けたんだけど......。歳だわ。