偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

スプライス(2008)


科学者のクライブとエルザ夫妻は人間の遺伝子を使って新種生物の生成に成功する。生まれた奇怪な生き物をドレンと名付けて育てる2人。ドレンは徐々に人間の女性のような姿に成長していくが......。


『CUBE』を見返したら面白かったので、観てなかったヴィンチェンゾ・ナタリ監督作の本作を観てみました。というか意外とナタリさんこれと新作以外は観てたわ。

舞台は閉鎖空間というわけではないもののほぼラボと山小屋に固定され、主要キャラも科学者の夫婦と生み出された生物ドレンの3人だけなので、やはりソリッドシチュエーションっぽい感覚のある作品です。
『CUBE』もSFホラー的な設定を使って現実社会を風刺したような作品でしたが、本作もクリーチャーが殺戮を繰り広げる話かと思ったらクリーチャーに仮託した子育てって難しいよねホラーだったので、より生々しい怖さがありました。
序盤では子供(クリーチャー)が生まれた瞬間から無償の愛を注ぐ女と、なんか気持ち悪っ!と感じてしまう男の対比がリアルで「うわぁ......」と思わされるんですが、しかしそれにしてもクリーチャーの造形がキモくてとても良かった。
本作も実はあんまりグロいシーン多くないんだけど、序盤の実験の件とか、学会発表のくだりがインパクト強すぎてなんかめちゃグロかった気がしちゃうのが凄え。

そして中盤以降からだんだん夫婦とドレンの三者の関係性が変わっていく流れがスリリングでその果てにある衝撃のあのシーンの甘美さにゾクゾクしてしまう......。ドレンが不気味でありつつ官能的でもあり、なにより不憫......。人間のエゴに振り回される彼女が1番可哀想だし、こんな可哀想な思いをさせるくらいならやっぱり子供なんか作るべきじゃないよね!という思いを新たにした。

そして終盤はちゃんとアクションホラーの王道みたいなクライマックスも用意されてるし、「それが伏線だったか!」というちょっとしたサプライズもあり、ラストシーンもインパクトあり、めっちゃ面白くちょっと考えさせられる、素晴らしいエンタメ作品でした。