「愛が動機なら やってはいけないことなんて 何ひとつ、ない」(本作ポスターより)
兄と妹の禁断の恋を、セリフも少なめに淡々と、ともすれば退屈なまでに淡々と描いた作品です。でも、全体にどこか文学的な雰囲気と色気があって、退屈だけど飽きはしないという絶妙なラインでふにゃっと楽しめる映画です。
製作年:1992年
監督:矢崎仁司
出演:由良宣子
☆3.8点
兄と妹がいた。
妹は、兄の恋人になりたかった。
ある時、兄が記憶喪失になった。
ーーそしてアイスは、ハルオの記憶が戻るまで、ハルオの恋人になることを決める。
......というあらすじが、なんと冒頭にテロップでさらっと紹介されてしまいます。
アイスはなんで兄のハルオのことが好きなのか、ハルオはどうして記憶をなくしたのか、その辺が一切省かれていきなり本題に入るので、背景は全てこちらの想像に委ねられます。
そのせいもあってか、観てる側からは近親相姦という実感は薄かったです。それが映像や演出の美しさとも相俟って、エグさや汚さを感じさせない純愛ストーリーに仕上がっています。
さて、少なくとも男から観た場合、本作の1番の魅力はそのままヒロインであるアイスの魅力であると思います。
可愛いけどエッチで、明るく振舞ってるけど闇が深くて、街娼として生計を立てていて、いつもアイスを食べながらお兄ちゃんに恋してる。私には想像もつかないような不思議な生き物。
この感想の冒頭に「ともすれば退屈なまでに淡々と」していると書きましたが、彼女にドキドキさせられるシーンが多かったのでそれだけで実際には全く退屈しませんでした。
というわけで、ここらでアイスちゃんの可愛いシーン・ベスト5を発表します。
第5位!
壁の上を両手を広げてバランスを取りながら歩くシーン
男ってバカね。全男子は両手を広げて歩く美少女に弱いのです......。
ちなみにこの近くにある堤防で足ぶらぶらもフェチいです。
第4位!
客に「いっぱいしようね」と言うシーン
観て貰えば分かるけど、この近さからの「いっぱいしようね」は反則です。
第3位!
ハルオの髪を切ってあげながら自分の髪を搔き上げるシーン
そもそも黒髪ショートの髪型が非常に好み。それでこれはもう......好きになっちゃうよ。
第2位!
鏡に向かって口紅を塗るシーン
お化粧という本来極めてプライベートな行為を観客だけがカメラのレンズをマジックミラー代わりにして覗き見る事が出来る。これ映画の醍醐味。にしても窃視というのは良いものですね。
そして栄えある第1位は〜〜っ
ぱっ(暗転)
どこどこどこどこ〜(ドラムロール)
じゃん!(スポットライト)
第1位!
スクランブル交差点の真ん中でパンティを履き替えるシーン
です!
......いやぁ、こんなんダメでしょ。ハレンチ容疑で逮捕しちゃいたい。
ちなみにこのシーン、
この画像左上にご注目ください。日の丸に黒いリボンがありますね。これ実は、天皇崩御を悼むためのものらしく......そんな時に街角でパンツ脱ぐな!自粛しろ!!
というわけで、アイスちゃんの可愛いシーンランキング改め性癖暴露大会を終わります。
ちなみにその他のシーンだと、ハルオがキャバクラに連れてかれて上司のおっさんに「彼ね、記憶喪失なんだよ」と紹介されるとお嬢さんたちが「きゃーかっこいー握手してー」と異様に湧くシーンが好きです。記憶喪失かっこいいのか?
......という感じで2人は仲良く楽しくちょっとエッチな日々を過ごしますが、そんな幸せな日々のすぐ横には様々な昏い感情が存在しています。
そういう常に危なっかしいところでギリギリ保たれているような物語のスリリングさが、淡々とした話ながら飽きさせない秘訣かなと思います。
ラストも印象的です。とある理由でアイスを食べられなくなっていたアイスにハルオがアイスを差し出すシーンは、本来なら当然考えるはずのネガティヴな感情を押し流してしまうほど強烈に美しいのです。
近親相姦も、売春も、記憶喪失も、切なさも、苦悩も、不安も、全てが美しいものに思えてしまう、そんな危なさを湛えた毒薬のような映画でした。そしてエロかった。