偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ゴジラ-1.0(2023)


大戦末期、特攻隊員の青年・敷島は戦闘機が壊れたと偽り大戸島に着陸する。その夜、島に巨大な怪獣ゴジラが襲来し、敷島と整備兵の橘以外は全員死亡する。
やがて復員した敷島は、ひょんなことから典子という女と、彼女が連れていた明子という子供と家族のように暮らすようになる。しかし、東京の町も少しずつ復興が進む1947年、核実験に巻き込まれて巨大化したゴジラが東京に上陸し......。

観るつもりなかったんだけどジャスコ行って時間空いたからふらっと観てしまった話題作。賛否両論渦巻いていましたが、なかなか良かったです。

どうしても近年のゴジラといえば『シンゴジラ』を連想してしまいますが意地でも同じことしねえよってくらいに正反対の作風で面白かった。個人的にはシンゴジが好きだけどエンタメとして楽しいのは本作かも。

とにかく本作ゴジラが強え、そんで怖え。
冒頭の、戦時中に大戸島で出会うゴジラの破壊神の如き凶暴さ凶悪さよ。
中盤の、本作の一つのクライマックスとなる東京襲来シーンなんかもう、圧巻ですよ。人々を踏み散らかし、ビルを歩くついでのように薙ぎ倒し、電車を子供の戯れのように噛みちぎるゴジラさんの大活躍がスペクタクル的な大興奮と、個人の力では抗いようのない圧倒的な破壊への絶望とを同時に感じさせてきやがって震える。
ゴジラがなんかやけに小顔なので体のゴツさとのギャップが不気味で怖かった。背中のトゲトゲからの熱線のギミックはカッコよかったけど、トゲの出方といい青い光といい、なんかちょっとオモチャっぽくてやや醒めてしまうところはあった。

それはさておき、そんなゴジラさんの迫力が凄い一方で主に人間ドラマの方に賛否両論あるっぽいし私の中でも賛否両論ある。
特攻から逃げ出した主人公の罪悪感ががっつりと描かれたところから、大切な人ができて生きたい気持ちと、ゴジラと刺し違えて死に直したい気持ちとの葛藤には苦しくなってしまう。また佐々木蔵之介吉岡秀隆ら一般市民のおっさんたちが命懸けでゴジラと戦おうとする様がカッコよく描かれていつつ、戦争において国が国民の命を粗末にしたことを痛烈に批判して「1人の犠牲も出さずに作戦を遂行しよう!」と死ぬための戦争→生きるための対ゴジラ戦という構図も上手い。
......んだが、それが全てセリフできっちり説明されているところがテレビドラマ的な演技と相俟ってどーしてもちょいダサみを感じてしまい、めっちゃ泣ける話なのに泣くに泣けないところがありました......。なんせ、みんな声がデカい!
また、これはもう言いがかりの域かもしれませんが、神木くんと浜辺さんの主演コンビに透明感がありすぎてなんか戦争という題材の泥臭さとのミスマッチ感を強く感じてしまいました。なんせ神木くんは一歳違いくらいで小学生の頃から見てるのでそんな彼が特攻隊とか言われても......みたいな、まぁ、あまりに個人的な違和感で言いがかりですが......。
しかし吉岡秀隆金田一耕助ゴールデンスランバーも大好きだし本作でもやっぱめちゃ良い味出してて最高だったな。あの人好きかもしれん。

という感じで、どうしてもドラマ部分の押し付けがましさが気になってしまうものの、クライマックスが海での戦いだったり、今の日本への眼差しを感じさせるラストシーンの余韻だったりと、とにかくエンタメ作品としてめちゃくちゃ濃密で常に面白かったので映画館で観れて良かったと思う。