偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

君に捧げる「作中作」ミステリ10選

😎へへへ、昨日Twitterでお友達のフミさんに捧げるためにやったやつですが、貧乏性なのでついでにブログに載せて記事数を稼いどこうと思います🔥🔥


今回選んだのは作中作が出てくるミステリの10選。
個人的な好みが反映され、作中作をテキストとして読み解いていくタイプの作品ばかりになりました。

それでは10選れっつごー。





1.三津田信三『作者不詳』

謎を残して終わる怪奇小説ばかりが載った同人誌を入手した三津田信三は、自らその謎を解いていく。しかしやがて彼の身の回りで奇怪なことが起こり始め......。


作中作単体で読めば怪奇小説としてムンムンな雰囲気を楽しめます。しかし枠部分が解決編になることでクセのあるトリックが炸裂するミステリ短編集に早変わり。しかし、最後まで読んでみるとやはり長編怪奇小説になってしまうという、ホラーとミステリの味変が効いた贅沢な逸品です。





2.依井貴裕夜想曲

山荘で開かれた同窓会で、参加メンバーたちが次々と殺されてゆく。事件のさなか、俳優の桜木の元には事件を小説化したような原稿が届き......。


これはもう作中作を使ったメイントリックがヤバいです。思いついたとしても普通やらねえだろっていう狂気じみたアイデア。それを成し遂げたことに拍手。この騙しへのこだわりはさすが泡坂妻夫の弟子。
正直労作すぎて読みづらいけど、このトリックを体験するためだけにでも読む価値あります。





3.米澤穂信愚者のエンドロール

氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾。
とあるクラスが文化祭に出展する予定のミステリ映画。しかし、解決編の脚本が書かれず尻切れトンボに。クラスの一員から相談を受けた折木らは脚本家の意図した「解決」を探すが......。


「未完のミステリ映画」の真相を探っていくわけですが、なんせ未完なので解釈だけならいくらでも可能。書かれた部分までを問題編として登場人物たちによる多重解決が繰り広げられていくのが圧巻。もちろんこのシリーズらしい苦味も。青春ミステリの傑作です。





4.島田荘司『ネジ式ザゼツキー』

記憶障害の男が書いたのは、蜜柑の木の上の国やネジ式の関節の妖精が出てくるファンタジーともとれる物語。それを読んだ御手洗潔は、物語に隠された男の過去を解きほぐしていく。


作中作のテキストがわけわかめで、とっかかりが全く見えないのに、御手洗にかかるとするする〜〜とまさに絡まったイヤホンのコードをほどくように読み解かれてしまうのが鮮やかとしか言えねえ。同じ路線の『眩暈』や『アルカトラズ幻想』もオススメ。





5.浦賀和宏『究極の純愛小説を、君に』

樹海へと合宿に来た高校の文芸部の一同。しかし、謎の殺人鬼により部のメンバーはひとりひとり殺戮されていく。
八木剛は、密かに想いを寄せる草野美優を守ることができるのか......!?


作中作に隠された秘密を読み解いていくのが楽しい。そしてなにより、著者の別作品である「八木剛士シリーズ」をも本作の作中作のように取り込んで繰り広げられるメタすぎる展開が圧巻。さらに、著者の訃報により彼の本名が明かされたことで、本作はさらに深い余韻を残します。追悼。





6.泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』

奇術ショーに出るはずの女性が殺害され、遺体の周りには奇術仲間が書いた奇術掌編集『11枚のとらんぷ』に出てくる小道具が散らばっていた。本の作者は謎解きに乗り出すが......。


本の中に本がまるまる一冊入ってるってことにまずわくわくせざるをえないですよね。作中作自体が著者の奇術愛と遊び心の伝わってくる楽しい作品であり、それが作中現実と繋がっていく鮮やかさもまさにマジックのよう。長編第1作にして泡坂さんらしさ全開の名作です。





7.沢村浩輔『夜の床屋』

本作は正直なところ作中作ものってほどではない気もしますが、一応作中作入ってるしあまりTLでも名前を見かけることが少ないので紹介します。

大学生の主人公たちが遭遇する日常の不思議を描いた短編集ですが、後半から超展開を見せて予想外の場所に着地するのに唖然。

作中作は、その着地への鍵を握っていて、作中現実とのあまりに遠い飛距離を演出しています。
また、全体に文体やキャラが上品な感じで、なんとも名状しがたいし面白いと断言は出来ないけど、好きとは断言できる偏愛の一冊です。





8.綾辻行人『どんどん橋、落ちた☆』

ミステリ作家綾辻行人の元に作家志望の青年から犯人当て短編の"問題編"が持ち込まれる。真相を当てようと意気込む綾辻だったが......。


先に紹介した『作者不詳』の元ネタとも思える、著者本人が作中作に挑む短編集。
とはいえそこは綾辻さん。うんうんと呻吟した挙句なかなか真相を当てられないのが可愛いです💕
各話、素人の青年が書いたという設定だからこそのメチャクチャな内容で、こんなものを商業的に発表するにはそりゃ作中作ということにでもしないと難しいだろうなぁ、という感じです。もちろん褒めてます。





9.ニック・カサヴェテス 監督『きみに読む物語

アルツハイマーで記憶をなくしゆく老女と、毎日彼女に会いに来ては、彼女の若い頃の日記を読み聞かせる老紳士。日記には、若き日の熱く激しい恋のことが記されていた。


はい、私がこれを入れないわけがないですよね。美しすぎるゴズリングとマクアダムスの熱烈な恋にきゅんきゅんで死ぬやつです。しかし、最後まで観ると意外と作中作ミステリ(まぁ日記だけど)にもなってる。作中テキストと現実との関係に泣いちゃう傑作です。ミスチル桜井も絶賛!





10.アン・リー 監督『ライフ・オブ・パイ

とある小説家が、取材のためインド人の青年・パイのもとを訪れる。パイはかつて嵐の中をトラと共に漂流して生還していた。パイは小説家にその時の一部始終を語って聞かせるが......。


口頭ですが、過去をお話として整理して語るというのも広い意味での作中作ということにしといてください。
パイ少年がトラと共に漂流する場面の映像が美しい冒険ファンタジー映画です。
が、それだけではなく、壮大なスケールと意外な展開で「物語を語ること」自体を描き出しているあたり、作中作ミステリとも言えると思います。





という感じで、小説メイン映画ちょこっとで私らしいセレクトが出来たかと思います。
次週以降も気が向いたら週一でやりたいけど弾切れしそうな気しかしないっすね。まぁぼちぼち。
んじゃ、ばいちゃ😎😎