偽物の映画館

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三津田信三『九孔の罠』感想

最近追うのをサボってた三津田先生ですが、死相学探偵が完結したと聞いて慌てて読みました。完結編のいっこ前にあたる第7弾。

九孔の罠 死相学探偵7 (角川ホラー文庫)

九孔の罠 死相学探偵7 (角川ホラー文庫)

超能力を持つ子供たちを研究する"ダークマター研究所"では、見込みのない"年長組"の子供らをリストラしようとしていた。
黒術師はそこにつけ込み......。


はてさて、今回は超能力研究所の子たちを守れ!という感じのお話でして。
子供たちとは言っても、"年長組"なので20歳前後の子達で。
そのうちの1人の女の子が俊一郎の事務所に依頼に来るわけでして。
その子がなんというかこう、マイルドなツンデレみたいな感じでめちゃ可愛いわけでして。
かと思えば、俊一郎にゾッコンの関西弁ガールや、おしとやかガールやクールビューティーガールなんかが登場するわけでして......。
要は、三津田信三はいつからハーレムラノベ作家になったんや!!!と言いたい。俺はそう言いたいわけです。
まぁ、祖父江偲さんが可愛いことからもその片鱗は覗けていたわけですが......。
彼女たちが可愛いからこそ、彼女たちを守れなかった俊一郎の苦悩が説得力を持ち、彼の成長が伝わりやすくなってるので、一石二鳥な感じはします。

ハーレムについてばっか書いてしまったけど、ホラーミステリとしてもライトながら面白かったです。
各ガールたちが遭遇する怪異はさくっと読める三津田怪談短編という感じだし、「九孔の穴」という呪術自体がめちゃ怖い。
そして、事件の謎以外に、黒捜課の中で何かが起きているらしいという謎も強烈な引きになっています。
そして、女の子たちを護衛するというサスペンスに重点が置かれ、なかなか事件の全貌が見えづらいなぁ、なんて思ってるところで解
決編へ。
この解決がまたなかなか異色で、シリーズももうすぐ終わりというところで(ネタバレ→)黒捜課側の完全勝利というのを見せてくれるあたりはエモいです。

そして核心にやや迫りそうなところで終わるんだけど、でもこの状況であと一冊でほんとにちゃんと完結するんやろか......という不安も少しありつつ、ともあれ最後の事件を楽しみに読みたいと思います。