偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

山下紘加『エラー』感想

『あくてえ』を読んで面白かったので読みました!


普段はスーパーでアルバイトをし、年に一度大食い選手権に出場している一果。大会四連覇中でキュートなルックスからも人気だった彼女の前に、最強の敵が立ちはだかる......。

というわけでフードファイターの女の子一果ちゃんを主人公にした中編(もえあずのイメージで読みました)。

私自身、フードファイト(という言葉も最近聞くようになったけど子供の頃にテレビチャンピオン見てた頃はただの「大食い選手権」)というものに作中で言われるような偏見......てか嫌悪感を抱いていたのでまぁ居た堪れないところもありつつ......。子供の頃にテレビで見ていた大食いと現在のフードファイトの違いとか、スポーツとしての側面とショービズ(見世物)としての側面のギャップとか、ウワサの真相とか......そういう大食いという競技の内幕がいろいろと描かれていて業界モノの小説としてまずは面白かったです!
あと食べる描写がすごかった。
エグい身体感覚の描写によって読んでるだけで胸焼けしそうになりつつ、ペース配分から咀嚼時の顎の疲れへの対策に至るまで負担を減らしてたくさん食べられるような食べ方を計算しながら食べ進めていく様はゲーム的でもあるという二重の凄さがありました。大食いにこんなテクニカルな側面があったこと自体知らなかったしなぁ。

そして、定職に就かずアルバイトをしながら大会に備える主人公の一果の世界は狭く、彼氏とか昔の友達とか番組関係者とかが出てくるもののその誰とも深い繋がりを持たない孤独な彼女の姿がまた印象的。
その中で大食いに自身の存在意義の全てを預けているような危うさもあり、承認欲求などの心理的な欲求を食欲に仮託して描かれる死闘とその果てのラストは強烈なインパクトを残します。
なんつーか、ラストシーンで画面が暗転して「エラー」というタイトルバックが出るイメージ。いい終わり方です......。

という感じで、大食い競技にあんま興味なかったけどめちゃ面白かったしオススメです!