偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

キング・コング(1931)

いまだに新作が作られ続けてるキングコングの元祖。


冒険映画の撮影のためにジャングルの奥地へと向かった撮影クルーたちと主演女優のアン。そこで原住民によって生贄とされたアンはコングに攫われてしまい、撮影クルーと船員たちは彼女を追って恐竜などの巨大生物の住む島へと足を踏み入れる......。



こういう昔の映画って「こういう話でしょ?」と思ってたのが意外と違ってたりしますよね。
本作もただコングが暴れる話かと思えば、意外とストーリーもちゃんとしてて面白かったです。
まず序盤は冒険映画の監督が「冒険映画に女なんか出したくないけど制作会社がヒロイン出せって言うし......」とか愚痴ったりするメタっぽい映画制作への言及が結構あって面白かったです。
そしてそもそも島に着くまでの霧の煙る船旅の映像とかも雰囲気あって良かったり、島でもコング以外の恐竜とかもいろいろ出てきて遊び心いっぱい詰まってて楽しいです。
コングがストップモーションアニメだったり、スクリーンに映した恐竜の映像の前で役者が演技してたりと、今観ると技術的にショボく感じてしまう部分に、むしろレトロな可愛さと創意工夫して頑張ってることへの敬意を感じます。

島に来るまで、島でのあれこれに続いてコングがシティに連れられてきて大暴れするという三幕目では、都会の風景の中にジャングルから来たコングがいる違和感ありまくりの光景が鮮烈。電車のシーンとか外連味が効いてて凄い好きだな。

コングに攫われたヒロインを救出するという話ではあるんだけど、一方でコングはヒロインを他の恐竜から守ったりと騎士なところもあります。それが人間の都合で無理やり見せ物にされることへの憐れみも感じさせて、人間側に寄りすぎてないというか、文明批判的な側面もあるところも良かったです。