偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

プレゼンス 存在(2024)


とある一軒家に佇む"存在"はその家で起こる全てを見ていた。中古で売りに出された家に引っ越してきたのは、両親とティーンエイジャーの兄妹の4人家族。妹は親友を亡くして鬱状態にあり、両親も彼女への態度などを巡ってすれ違いの状況にあり......。


ソダーバーグ監督による、幽霊の一人称視点が特徴のホラー(?)映画。

家を舞台に霊が主人公の作品としては『ア・ゴースト・ストーリー』や『私はゴースト』などが思い浮かびますが、本作は完全に幽霊("プレゼンス")視点のPOVなのが新鮮でした。それによってどこかゲームみたいな映像の面白さもあり、観ている自分もこの家族に対して「酷いことにならないでほしい」という祈りを抱きつつも客観的にただ観続けることを強要されることで奇妙な緊張感があったのも良かったです。またそうした視点の影響もあってか登場人物のクローズアップが皆無で引き気味のカメラワークだったので家族の顔も実はそんなにはっきりとは見えず、それがまた客観性というか普遍性というか、「ありふれた家族」のお話であることを強調している気がします。

そしてストーリーに関しても、終盤を除けばそんなに劇的なことは起こらないためリアルな肌感があるんですが、それでいてPOV視点のため説明が少なく家族の抱える問題などがなかなかはっきりと見えてこないというミステリーめいた構成になっているため単調ながらも緊張感が持続するのが素晴らしかったです。
何が起きているのかはっきりとは分からないながらも、父は妹の、母は兄の肩を持つことで家族が分断されていたり、妹の兄の友人への危ない恋にハラハラしたりと、劇的すぎずリアルな質感を損なわないままにフックが仕掛けられているのも上手いと思います。
スピリチュアルなものへの見方とかは無神論者で科学信者の私からすると少し鼻白んでしまうところはあるものの、近所の霊能者みたいな人が来るところとかのいたたまれなさも良かった......。

そして、この80分程度の短さだからこそ効いてくる地味な展開で溜めに溜めたあとのスピード感あるクライマックスは、意外性とかじゃなくて緩急の上手さによって衝撃的になっていて痺れました。シンプルながらこれしかないと思わされる終わり方も素敵でした。
幽霊視点ということでてっきりホラーだと思っていたけど(というかホラー的なスリルももちろんあるけど)、それ以上にありふれた家族の人間ドラマとしてじっくりと魅せてくれるところが素敵な、印象深い小品という感じの作品でした。