偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

三津田信三『魔邸』感想

こないだうち角川ホラーから復刊されていた家シリーズの第4作。
どうでもいいけど、角川ホラーでは『災園』を無かったことにしててむかつく。

魔邸 (角川ホラー文庫)

魔邸 (角川ホラー文庫)



小学6年生の優真は、義父の海外転勤の影響で、山奥に立つ叔父の別荘で夏休みを過ごすことになる。
しかし、別荘の近くには神隠しの伝承のある"じゃじゃ森"があって......。


というわけで家シリーズ第4弾。
シリーズといっても、少年が主人公で家が出てくること以外は繋がりはないのでこれから読んでもオッケーです。

死相学探偵2作を一気読みした後ですが、こういうガッツリした三津田ホラーは久しぶりだったので、懐かしい感慨に浸りつつも、やっぱりかなり怖かったです。

父親を亡くし、母親の再婚や転校で周りに馴染めないでいる主人公の設定がまず良いですよね。いかにも家系ホラーっぽくって!

序盤で畳み掛けるように語られる彼の過去の怪奇体験がもう既に怖い。
得体の知れないものに追われる怖さは三津田ホラーの鉄板ですよね。
意味は分からないんだけど、いや、意味が分からないからこそ恐ろしいです。

現在に戻って叔父の別荘に来てからは、何かしら意味がありそうなんだけど、それが分かりきらない不気味な出来事たちの怖さ。
やばいかもしれないし、何でもないことかもしれない......。分からないけど、夜の闇の中では何もかもが怖い。あの、子供の頃の夜中におしっこ行けない感覚を久しぶりに味わいました。

そんな中でも友達が出来てお互いのことを語り合うようなジュブナイルな展開もありつつ、終盤は息も付かせぬ怖さの畳み掛けもありつつ、一応のミステリ的な解決を見せつつも最後の最後まで油断できない怖さ。

(ネタバレ→)大人の視点から見れば、どう考えても義父は(性格悪いところはあっても)まともな良い人で、叔父は最初っから怪しかったんだけど、子供視点の未熟な認知があの恐るべきラストの一言を生み出すというのが、子供が主役のホラーらしい怖さでめちゃくちゃ良いですね。

出来れば私も夏休みの夜中に徹夜で読みたかったけど、もう夏休みのある歳じゃないのに幻の夏休みを想い続けている私こそ1番のホラーかもしれない。