偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』読書感想文

もともと森見登美彦は好きなんですが、ミーハー気質なので映画化決定と聞いたらむらむらと読みたくなって読みました。


ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)


森見作品は感想を書きづらいことで有名(私の中で)なので、今回も例によって手短に済ませます。


〜あらすじ〜
ここのところめきめきと頭角を現している小学四年生・アオヤマくん。彼の住む街に突如ペンギンが発生。勉強熱心なアオヤマくんはペンギン発生の原因を研究することにする。
研究を進めるうち、アオヤマくんは仄かな憧れを抱いている歯科医院のお姉さんとペンギン現象に関連があるらしいと気づき......。



森見作品にはわりと珍しく(な気がする)小学生が主人公ということで、同じく少年が主人公の『有頂天家族』(こちらは狸ですが)に近いほのぼのとした雰囲気があります。似ているといえば、少年が年上のお姉さんを慕っているところも(ちょっといぢめられるところも)似てるかもしれません。
ただ、ペンギンが出たりはするものの、こっちの方が現実寄りではあるので、まるっきりファンタジーとして傍観者の視点で読んだ『有頂天家族』よりも、主人公に感情移入しやすかったですね。

......いや、カマトトぶるのはやめましょう。私が本作の主人公アオヤマくんに感情移入出来た一番の原因は、やはりおっぱいを愛しているからでしょうね。
アオヤマくんは毎日おっぱいのことを考えています。しかし、

お姉さんのおっぱいを思わず見ていることがぼくにはある。いくら見ていても飽きないということがある。触ってみたらどんなだろうと思うことがある

そう、彼のおっぱいに向ける眼差しはとても純粋で、彼の目を通してお姉さんのおっぱいを見ると、我々が性欲に塗れて忘れてしまったおっぱい本来の美しさと神秘性が見えてくるのです。
私たちはいつの間にかおっぱいを純粋に見ることができなくなっていました。この作品を読んだことで、小学生の頃憧れたおっぱいの美しさを再び思い出せた気がします。これからはおっぱいを大事にして生きていこう、と実感するきっかけになりました。ありがとう、アオヤマくん......。



というので終わるのもアレなんでストーリーについてもちらっと。
基本的にはアオヤマくんが夏休みを使ってペンギンの謎を追うのが主軸なのですが、そこは森見登美彦ですからミステリーのようにはならず、話は脱線を繰り返しながらゆるやかに進んでいきます。また、ペンギン以外にも色々と怪現象が起きてどんどんヘンテコなものが増えていきます。
しかし、最後まで読んでみると、なんとなーく全てがふわふわっと収まって謎の感動が産まれるからステキですね。
切なくもあり、それでも前に進んでいくという力強い希望も見えて、この読後感がそのまま夏休みが終わる時の気持ちにそっくりなんですよね。それも、一夏の恋を経験した夏休みの......ってそんな経験ないですけどね。

私はもう大人なので夏休みはありませんが(正確には1日だけあったけどもう終わったよ......)、この本を読んでなんとなく夏休み気分を満喫できた気がします。いや本当は気分じゃなくて実際に休みたいですけど......。
そんなこんなで、夏休みを満喫する子供たちに、また夏休みへの渇望を抱える社畜たちにぜひともオススメしたい夏の一冊です。映画も見る。