偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

小説

西澤保彦『死者は黄泉が得る』読書感想文

たしか去年あたりに「今年は西澤保彦を読むぜ」と息巻いたものの実は3冊くらいしか読んでなかったので、今年こそはマジで西澤保彦を読むぜ!......というものまぁアテにならないけど、気が向いてるうちは......。死者は黄泉が得る (講談社文庫)作者: 西澤保…

小川勝己『イヴの夜』読書感想文

非モテ青年の光司にやっとできた恋人・真由子。しかし、彼女は何者かに殺された。 一方、デリヘルに勤めるひとみは、店の運転手の男に淡い好意を寄せるが......。上手く生きられない2人を描いた、号泣必至の切ない極上ラブストーリーです。イヴの夜 (光文社…

道尾秀介『月と蟹』読書感想文

はい、道尾リバイバル第4弾。 2009年から毎回連続で直木賞候補に名前の上がっていた道尾さんがついに5度目の正直で受賞を果たしたのが本作。 その当時には「あ、道尾秀介とったじゃん」と思ったものの、個人的には道尾離れの時期だったのでそれから放置して…

道尾秀介『透明カメレオン』読書感想文

中学生の頃にハマった道尾秀介ですが、このたび例によってひさびさに読みました。本作は、道尾さんの作家生活10周年記念作品と銘打たれていて、彼が初めて読者のために書いた小説でもあるらしいです。 最近はご無沙汰でしたが一応昔からのファンとしては感慨…

倉野憲比古『スノウブラインド』読書感想文

昨今では珍しく新人賞などは取らずに本書でデビューし、その後もう一冊だけ長編を上梓したっきりの幻の探偵作家、倉野憲比古。 ずっと前にフォロワー氏に勧められていたものの文庫派だからハードカバーはなぁ......などと言っているうちに読む機を逸していた…

連城三紀彦『白光』読書感想文

ひっさしぶりの連城三紀彦。 旧サイトにはたくさん感想のっけてるようになかなかのファンではあるのですが、少なくともこっちのブログ初めて以降は読んでなかったですね。この度久しぶりなので短めの長編でなおかつ評判もいい本書を選んでみましたが、うん、…

深緑野分『オーブランの少女』読書感想文

ミステリーズ!新人賞に入選した表題作をはじめ、「少女」をモチーフにした五つの物語を集めたデビュー短編集です。オーブランの少女 (創元推理文庫)作者: 深緑野分出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/03/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) …

多島斗志之『私たちの退屈な日々』読書感想文

『少年たちのおだやかな日々』に続く、日々シリーズ2冊目......とは言っても、どちらも全話が独立した短編集で、特に話の繋がりなどはあるわけもないということでこっちを先に読みました。私たちの退屈な日々 (双葉文庫)作者: 多島斗志之出版社/メーカー: 双…

トマス・H・クック『緋色の迷宮』読書感想文

とある田舎町で、8歳の少女エイミーが突然姿を消した。 写真屋を営む"わたし"ことエリックは、息子のキースが少女を拐かしたのではないかという疑念に駆られる。その疑念はやがて、現在の妻と息子から過去の父母や兄妹まで拡散し、よく知っているつもりであ…

井上ひさし『十二人の手紙』

これからしばらく昔読んだ本の当時の感想を載せていきます。移転。 十二人の手紙 (中公文庫)作者: 井上ひさし出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2009/01/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 36回この商品を含むブログ (19件) を見る タイトルの通り、…

島田荘司『毒を売る女』読書感想文

久々島荘。毒を売る女 (光文社文庫)作者: 島田荘司出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/02/24メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 本書は独立した短編・掌編を集めた作品集です。 そういう性質の本だから、ミステリからサスペンス、社会派、青春…

2018年に読んだ本ベスト10

とりあえず時間がないのでリストだけ。あとで追記するかも。 10.ホテル・ローヤル 9.魔法の水 8.十二人の手紙 7.半席 6.撓田村事件 5.不思議島 4.かがみの孤城 3.友情 2.こころ 1.夏草の記憶

現代ホラー傑作選 第3集『十の物語』

現代ホラー傑作選シリーズ。現代ホラー傑作選 (第3集) (角川ホラー文庫)作者: 高橋克彦出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1993/07メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 収録作品はこちら↓ 山田風太郎「人間華」 山村正夫「魔性の猫」 三橋一夫「角姫」 …

坂木司『アンと青春』読書感想文

前作ではアンちゃんが仕事を通して出会う人たちのお話という感じが強く、アンちゃんは(読者と一緒に)彼らのキャラの濃さに驚く語り手という印象でした。今作では、そんなアンちゃんが色んな人たちとの出会いを自分の内面に反映させていくお話で、アンちゃん…

トマス・H・クック『心の砕ける音』読書感想文

現実家の兄・キャルと、ロマンチストの弟・ビリー。田舎の港町に暮らす正反対の兄弟の前に、ドーラという流れ者の女が現れた。 ビリーはドーラに恋をし、ロマンチストらしく彼女を「運命の女」だと思うようになる。 しかし少しして、ビリーは殺され、ドーラ…

深水黎一郎『大癋見警部の事件簿』読書感想文

「読者が犯人」に挑戦した野心作『ウルチモ・トルッコ』でメフィスト賞からデビューした著者による、本格ミステリのお約束を茶化しまくったコメディ短編集、あるいはミステリ評論集(決して"ミステリ短編集"とは呼びませんからね!)です。大癋見警部の事件簿 …

青山文平『半席』読書感想文

時代小説というものをほとんど読みません。 読んだことがある時代小説を考えてみましたが、ほんとに、大好きな泡坂妻夫先生の諸作と、時代小説というよりは少年漫画に近い山田風太郎の忍法帖くらいしかありませんでした。 そんな私ですが、ミステリ界隈で「…

浦賀和宏『十五年目の復讐』読書感想文

十五年目の復讐 (幻冬舎文庫)作者: 浦賀和宏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/10/10メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 著者の前作『Mの女』を読んだ時には、正直なんだかよく分からない話だなと思いました。というのも、『Mの女』は短いページ数…

浦賀和宏『姫君よ、殺戮の海を渡れ』昔書いたの

姫君よ、殺戮の海を渡れ (幻冬舎文庫)作者: 浦賀和宏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2014/10/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る糖尿病の妹がキャンプに行った利根川でイルカを見たと言う。誰も妹を信じないことに憤った主人公は、妹と友…

浦賀和宏『ファントムの夜明け』昔書いたの

私の中ではここ数年恒常的に浦賀和宏ブームが起こっています。そのためブログを始める前に書いてた浦賀作品の感想をこっちに移して来ようかと思います。ファントムの夜明け (幻冬舎文庫)作者: 浦賀和宏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2005/03/01メディア: …

トマス・H・クック『夏草の記憶』読書感想文

チョクトーという田舎町で診療所を営む医師のベン。彼は今でも30年前のことを思い出す。高校生だったあの頃、転校生としてチョクトーの町にやってきた少女・ケリーに恋をしたこと。そして、あの夏、ケリーの身に起こった悲劇のことを......。夏草の記憶 (文…

海猫沢めろん『愛についての感じ』読んだ記録

新三大奇書としてお馴染み(?)の『左巻キ式ラストリゾート』の著者。まさかもう一度この人の作品を読むことになろうとは思いませんでしたが、今作は普通に面白かったです。愛についての感じ (講談社文庫)作者: 海猫沢めろん,市川春子出版社/メーカー: 講談社…

桜木紫乃『ホテルローヤル』読書感想文

北海道東部にある『ホテルローヤル』というラブホテルに関わった人たちの人生を切り取った連作短編集です。直木賞を受賞した際に話題になりましたが、著者本人の実家がそのまま「ホテルローヤル」という名前のラブホテルで、そういう家に生まれた人が、ラブ…

多島斗志之『不思議島』読書感想文

多島斗志之。 本人が失明することを厭って失踪してしまったということが話題になった作家ですが、結局発見されることなく、恐らく死亡認定がなされてしまっているであろう年月が経ってしまっています。そういうことは知っていながらも作品は読んだことがなか…

米澤穂信『真実の10メートル手前』読書感想文

『さよなら妖精』『王とサーカス』に連なる大刀洗万智のシリーズの短編集。真実の10メートル手前 (創元推理文庫)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/03/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る 1話目は新聞記者時代の、2話…

武者小路実篤『友情』読書感想文

武者小路実篤という名前は前から聞いたことがあったのですが、彼の耄碌してから書いたらしい文章 僕も八十九歳になり、少し老人になったらしい。人間もいくらか老人になったらしい、人間としては少し老人になりすぎたらしい。いくらか賢くなったかもしれない…

浦賀和宏『HELL 女王暗殺』読書感想文

前作『HEAVEN 萩原重化学工業連続殺人事件』の姉妹編というか前日譚というか、な続編です。HELL 女王暗殺 (幻冬舎文庫)作者: 浦賀和宏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/06/08メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 色んな話が交差してややこしかった…

三津田信三『碆霊の如き祀るもの』読書感想文

刀城言耶シリーズ、前作より6年ぶりの第七長編。 元は刀城言耶シリーズのつもりだった炭鉱もののホラーミステリが『黒面の狐』として出されたこともあって期間が空きましたね。というか、むしろそれ以前の年1冊ペースでこの濃厚なシリーズを出版していた状態…

浦賀和宏『HEAVEN 萩原重化学工業連続殺人事件』読書感想文

元は2011年に講談社ノベルスより発表された、萩原重化学工業シリーズ(=安藤直樹シーズン2)第一弾。この度どういった大人の事情があったのか、講談社ではなく幻冬舎から大幅な加筆修正を経て文庫化されました。 講談社も早く安藤シリーズ文庫化して〜〜 HEAVE…

浦賀和宏『透明人間』安藤直樹シリーズその7

透明人間 (講談社ノベルス)作者: 浦賀和宏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/11/17メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る幼い頃、理美は透明人間を見た。それから少しして、理美の父は雪が積もる神社の境内で不審死を遂げた。状況は殺人とみられ…