両親の喧嘩が原因で自宅の階段から転落し昏睡状態となった幼い少女エマ。彼女が目を覚ますとそこは不思議な世界だった。両親の声が聞こえるラジオを手に家に帰る道を探す彼女だったが、顔が空洞で歯だけがある怪人に追われ......。

ギレルモデルトロやシュバンクマイエルの名前が引き合いに出されて宣伝されていたのでどうしても期待値が上がりすぎてしまった......というのは私の側の反省ですが、それにしてもイマイチでした......。
昏睡状態の少女が悪夢の世界に迷い込むというダークファンタジーで、公式サイトによると、「全編にわたり使用期限切れの10万フィートの35mmフィルムとヴィンテージのレンズを使って撮影し、CGを一切使用せず、プラクティカル・エフェクト(実際に撮影された要素を使った特殊効果)を駆使し、ストップモーションアニメと実写を融合して作り上げた」作品ということですが、観た印象としてはせっかくのその手作りの良さが活きていなくて、むしろCGを駆使してデジタルで撮ったみたいな質感にさえ感じてしまいました。
なんだろう、とりあえず色合いが全体にコントラスト強めの画面暗めだからInstagramでめっちゃ加工してる人の写真見たいな雰囲気になってしまっているんですよね。
あと、そんな画面の暗さに加えて、もやもやとぼやかしたり、やたら揺れたり怪異の動きが早かったりしてせっかくの特殊造形もじっくり見られず、結果的に映像美に期待して観に行ったはずが、良いと思える画がひとつもなかったのが非常に残念でした。
またストーリーもだいぶかったるかったです......。
昏睡中の少女が悪夢の迷宮に迷い込むという設定はめちゃくちゃ魅力的だし、悪夢の世界と現実とのリンク(現実の両親との思い出が悪夢の世界で戦う武器になる)のアイデアはとても良かった。ただ、明確なゴールがなく怪異の正体とか目的とかもいまいち掴めないまま行き当たりばったり的に進んでいく展開に惹かれるものが少なく、真ん中らへんけっこう寝てしまった......。
家族の再生のドラマというのも良いっちゃ良いし好きっちゃ好きではあるけど、仕事ばっかの父親と精神的に不安定な母親という設定も、細部のエピソードにも新味がなくベタすぎるように感じてしまいました。
ただ一つ、エマを演じる主演のヘイブン・リー・ハリスさんは弱冠7歳にして素晴らしい演技と可愛くも個性的なルックで強烈な存在感を放っていて素晴らしかった。てかこの子監督の娘さんらしいです。実の娘を主演に据えているからこそリアルさに寄ってしまって目新しさがない平凡なストーリーになってしまったのかな......?とも思ってしまいますが、まぁやろうとしてることは好きなので父娘とも今後の活躍を期待したいと思います。