映画監督が演出を手がけるオペラ「マクベス」。事故に遭った女優の代役として主演に抜擢された新人のベティだったが、覆面の殺人鬼につけ回され、何度も殺人現場を見せられて......。
アルジェント作品の中でも隠れた名作と言っても良いであろう本作。個人的にはかなり偏愛してるんですが、この度U-NEXTで配信開始されたので2回目観ちゃいました。
『フェノミナ』にも通じる美少女虐待系スリラーなんですが、オペラ座という舞台の雰囲気ムンムンなところと鴉をモチーフにしたキレキレにカッコいい演出が最高です。
もう冒頭からして素晴らしいんですよね。
オペラ座のリハーサル風景をバックにそれを見つめる鴉(の眼)を映し出したり、生きた鴉を使った斬新すぎる演出に嫌気がさして出て行こうとする女優のPOVが映されたりと、オープニングのシークエンスだけで「見る👁️」というテーマを暗示しつつ不穏でスリリングでカッコいい映像に仕立てているのが只事ではないです。
本編に入っても、思わぬ大抜擢をされてしまった新人女優の主人公の言葉にはならない不安のムードが全編を覆っていて、そこにストーカー殺人鬼が現れることでそんな不安が具現化するようなところが良いですね。好きな不穏さよ。
そして殺害シーンがまた最高なんだよね!
いつも特殊な凶器とかを使って殺し方に凝るアルジェントですが本作は殺し方自体はナイフだったり銃だったりとわりと普通。その代わり、主人公が毎度柱とかに縛り付けられて目の下に針を貼られて殺しのシーンを見せられるというのが偏執的で素晴らしい。また殺し方は普通とは言ったもののダリア・ニコロディが殺されるところなんか、強烈なショック描写でありながらも音の使い方やスローモーションが独特なため単にびっくりさせるだけのしょーもない演出じゃなくて美しい芸術作品として仕上がっているのに痺れます。
犯人の正体とかはまぁどうでもいいっちゃどうでもいいんですが、その歪んだ動機は印象的。ラストはそれこそ『サスペリア』の潔い終わり方なんかと比べて蛇足感はありますが、最後までなんかやったろう!という感じは嫌いにはなれないしベタなやり口ながらも「トラウマ」を描くのには効果的だと思いました。