偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)

80歳の姿で生まれ、歳をとるにつれて若返っていく男、ベンジャミン・バトンの一生を描いた大作。


観る前は「老人の姿で生まれるって、成人サイズでママのお腹からずるずるって出てくるのかな?結構グロいな?」と無駄な心配をしていましたが杞憂に終わりました(?)。

設定こそ奇抜なものの、描かれるのはフィンチャーらしい「人生とは」という普遍的なテーマ。

少年期に、その容姿から老人たちとともに育ち、常に死を身近に見てきたベンジャミン。
幼い頃から死を身近なものとして内包していた彼が生きていくにつれ生命力に溢れるイケメンブラピになっていく様を観ることで、生きるということについて考えさせられます。
しかし童貞を喪失する場面とかめちゃ笑ったし、そういうところどころユーモアを挟んでくるのもステキ。

そして、恋愛映画としてもこれはダメなやつ(良い意味で)。
すれ違いまくる主人公とヒロインを描いているんだけど、なんせガチで成長の方向がすれ違ってるから、切なさ百倍。
日の出や日没の前後に一瞬だけ見られる薄明の時間帯のことをマジックアワーと呼ぶらしいですが、2人の年齢が一瞬だけ同じになる時期が、まさにそのマジックアワーのような美しさでした。ベンジャミンにとっては日の出前の、デイジーにとっては日が落ち始める頃の......。

「お互い追いついた」

しかし、進む方向が違うから、追いついた後はまた離れていってしまう。
追いつく場面が美しいだけに、そこから先は涙ちょちょぎれずには観られませんでした。
それでも、人生は素晴らしいというキャッチフレーズを実感するには十分の美しさと暖かさにエモ鳥肌が立ちましたね。
『セブン』を観た後だと余計に沁みるんだよねこれ。