偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

エル・マリアッチ(1992)


ギターケースひとつだけを抱えてメキシコのとある町に流れ着いたマリアッチ(歌手)の青年。一方、ギャングのアズールは金を独占したかつての仲間モコへの復讐のためギターケースに銃器を詰め込んで刑務所から脱獄した。マリアッチは、服装とギターケースからアズールと間違われてモコの雇った殺し屋たちに追われることになり......。



『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの伊澤彩織さんが好きだって言ってたので観ました。全然知らなかったんだけど、ロドリゲス監督の初長編で、本作の続編が代表作『デスペラード』だったんですね。本作は7000ドルという超低予算で作られているそうです。だからもちろん迫力とかは大作には及びませんが、曲がりなりにも学生時代映研に入ってた身としてはたゆまぬK.U.F.Uを武器に低予算なりのカッコ良さを追求してるところに痺れます。
とりあえず、根無し草の主人公が人違いでギャングのいざこざに巻き込まれるというシンプルなストーリーながらアクションありロマンスありで魅せてくれます。
主人公のマリアッチ役の人がこう絶妙に、ナヨいけど実は強そうな顔をしてて説得力が凄かった。主人公に名前がなくて「マリアッチ(歌手)」としか呼ばれないところも根無し草感があって良いですね。彼が困りながらも図太く襲撃から身を守るところはいわゆる「ナメてた相手が実は......」系みたいな味わいもあって好き。
ほんとになんてことないメキシコの普通の町のロケーションもかえって大作映画にはないリアリティが感じられて良いし、亀とか犬とか猫の置き物の使い方も素晴らしい!亀とすれ違うシーンとか、別に要らないようなシーンなのに何故か印象的ですもんね。
アクションに関しては若干ワンパターンな感がありますが(何回軽トラの荷台に隠れるねん)、クライマックスの絶体絶命なところはハラハラさせられるし、そこから痛快さもありつつ虚しい余韻も残る結末も素晴らしい。
しかしこのラストから次作では主人公がアントニオ・バンデラスになると思うと笑っちゃうけど、人間あれだけ壮絶な経験をしたらバンデラスにくらいなっちゃうものなのかもしれないね。