偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ラーメンズ第11回公演『CHERRY BLOSSOM FRONT 345』

同居人にシソンヌを布教して全作無事見終えたので、今度は逆に同居人が好きなラーメンズを布教されて観てます。


収録内容
本人不在/エアメールの嘘/レストランそれぞれ/怪傑ギリジン/小説家らしき存在/マーチンとプーチン2/蒲田の行進曲


さてそもそも私はラーメンズのネタを観るの自体はじめてで、テレビとかにもあんまり出てないからかろうじて片桐さんは顔と名前は知ってるくらいの認識しかありませんでした。

そんな、ほぼラーメンズ初体験だったわけですが、めちゃ面白かったです。というか、結構好きなのかもしれません。

やっぱまず脚本がいいっすね。
映画の小ネタもちょいちょいあるし、話がミステリっぽいのも多いし、小林賢太郎と趣味が合いそうなんですよね。
しかしミステリっぽい作り込まれたネタがある一方で、アドリブとしか思えないやつや没ネタをまとめたとしか思えないやつなど、勢いで押し切るやつもちょいちょいあって、知的なのかバカなのか......という紙一重感が良かったです。
そして演技力もすごい。特にセリフとかよりパントマイムっていうのか、シンプルなセットで小道具とかもないんだけどあるみたいに動くのが上手いんですよね。このパントマイムでなんか小道具が実際にあるよりもむしろ引き込まれてしまいました。



本作が第11回の本公演らしいですが、とりあえず今後もこれ以降のやつを順々に見ていこうと思います。

では以下各話の感想。
ちなみに私はDVD買ったけど全部Youtubeでも観れるみたいですのでよかったらぜひ。



「本人不在」

今回こうやって実質初めてラーメンズを観た、その1本目のネタがこのネタで良かったと思います。
大仰なパントマイムの構えから何かと思えばそれか〜という冒頭のちょっとした謎と解決を皮切りに、小ボケを繰り返しながらもところどころで今まで見えていた話が姿を変えていく様もミステリ的。
オチも意外性はないものの綺麗にまとまってるし、ミステリファンが楽しめるコントでした。
これはハマるかも......と初っ端から思わされましたね。



「エアメールの嘘」

卒業旅行という大きなテーマは軸にありつつも話があっちゃこっちゃへ展開する不思議な話でした。
その中でタイトルにあるエアメールの嘘の部分はやはりちょっとミステリーみを感じたりもしますが、むしろ映画ネタのところで大好きな映画の略称が面白おかしく使われていたのが嬉しかったです。小林さんもミステリ好きっぽいからあの映画絶対好きだよね。



「レストランそれぞれ」

タイトルにある「それぞれ」.の表現の仕方が斬新すぎるんだけど、あまりにしれっとやるから一瞬これが普通なのかなと思ってしまいました。
そして、その手法によって起こる"ズレ"を笑いに変えるあたりは地味に技巧的だと思います。
タイトルからも想像できるように群像劇っぽい構成になっていますが、いい話っぽい部分とシュールでわけわかんない部分の落差が激しくてそこも笑っちゃいました。



「怪傑ギリジン

出オチやんという感じだけどそこから訳のわからないことを一人で言い続けるのは圧巻(?)。
脚本はあるんだろうけど、どこまでが脚本でどの程度アドリブなのかが全然分からない、面白いという意味でのぐだぐだ感が最高っすね。ここまで作り込まれた話ばかり観てきたので箸休め的に観れるとともにこういうのもやるのかと驚かされました。



「小説家らしき存在」

からの、こちらはガチガチのミステリー/スリラー。
あまりにもくだらない作家先生の話の内容に苦笑に近い笑い方をしていると、いつの間にか周りの空気がシリアスになって、そこからは笑いとハラハラとの緩急がすさまじい。
オチとかどんでん返しとかがどうこうではないんだけど、この設定そのものにミステリのトリックに近い驚きがあり、それを軸に宙ぶらりんな状態のサスペンスを展開して行くのにぐいぐい引き込まれてしまう傑作です。



「マーチンとプーチン2」

からの、またシュールすぎて全然わけわかんないんだけどなんか面白い系のやつ。
アフォリズムのように短い冗談ともなんとも付かないものが連ねられていくだけのネタで、コントに組み込めなかった没ネタを集めたのでは......などとも思ってしまいますが、これはこれで楽しいっすね。詰め合わせ感が。
それにしても2ってことはこれより前の公園で1もあるんですかね。恐るべし。



「蒲田の行進曲」

タイトルの通り『蒲田行進曲』を下敷きにしているらしいですが、不勉強なもので観たことなくて、あらすじを調べてみてやっとこのネタの意味が分かったりなどしたわけですが。
でも知らなくても良いっすね、これは。
意外性の強い2人の関係性。下手すれば小林さんのキャラの気持ちが全く分からなくなりそうなところを、説明しすぎずにしっかり感情移入出来るように持っていくのが上手いっすね。
バカバカしさからだんだんと泥臭い青春ドラマのようになっていって、バカバカしさも照れ隠しなのかななんて思ったりもしたり。
しかし片桐さん演じるあほんだらのろくでなしのあの不思議な魅力はなんなんでしょう。好きです。