偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

2019年に読んだ小説ベスト10(ミステリ編)

おはこんばんちわ。もういくつ寝るとクリスマスからのお正月ってな坊さんもダッシュするこんな時期になってまいりましたがいかがお過ごしですか?
私はといえば相も変わらず特に書くほどのこともないループもののような日々を過ごしております。

そんなわけで、今年読んだ小説ランキングやっていきます!




※こないだ見たイルミネション。



さて、今年はわりと映画より読書に寄ってた気がしまして、読了冊数はおよそ80冊。

読んだ本はミステリが中心ではありつつけっこういろんなジャンルに渡っているので、今年はミステリ編と非ミステリ編の二本立てで10作品ずつまとめたいと思います。

それではさっそく、まずは今年読んだミステリのベスト10〜。




10位 殺意の集う夜(西澤保彦)

西澤保彦『殺意の集う夜』読書感想文 - 偽物の映画館

嵐の山荘で集まった人々を次々と過失致死させてしまった結果的シリアルキラーの主人公のパートと、もう1人の主人公である悪い刑事さんのパートが交錯するドタバタジェットコースターミステリ。

西澤作品らしい邪悪でクセの強い登場人物のオンパレードと終盤のアイデア量やばい怒涛の謎解きで読むのをやめる隙が見当たらないくらいに引き込まれた傑作です。




9位 スノウブラインド(倉野憲比古)

倉野憲比古『スノウブラインド』読書感想文 - 偽物の映画館

卒論の口頭試問を兼ねて、曰くのありすぎる教授の屋敷に招待された学生たち。
屋敷が雪に閉ざされた夜、謎に満ちた殺人劇の幕が上がり......。

個性的にして記号的なキャラクター、曰く付きの屋敷、衒学趣味、密室殺人......ミステリ、いや、探偵小説のコードをこれでもかとぶち込みながら、中盤で超展開を迎えると一気にアンチミステリみたいになったかと思いきや、最後には詩情に溢れる物語が顔を見せるというなかなかにプログレな展開が楽しい傑作です。




8位 こわれもの(浦賀和宏)

浦賀和宏『こわれもの』読書感想文 - 偽物の映画館

恋人の死のショックから作中のヒロインを殺してしまった漫画家の主人公の元に、予知能力者を名乗る手紙が届き......。

浦賀和宏の単発作品らしい、エモさと仕掛けが両立された作品。
ジェットコースターのようなスピーディな展開の中で2人の主人公の恋愛観や恋愛経験がリアルに切々と迫ってきてエモい。
そして、終盤の怒涛の展開から、ラストでタイトルの意味を実感させられた時の静謐な感動に震えた傑作。




7位 Another エピソードS(綾辻行人)

綾辻行人『Another エピソードS』読書感想文 - 偽物の映画館

人気作Anotherの裏で起きていた、もう一つの物語(ルビ:Another Story)。

あの夏、別荘に避難したミサキは、賢木と名乗る幽霊に出会い......。

幽霊の視点で語られる物語で、まずは幽霊の設定が凝っているのがホラーマニアの綾辻さんらしくてニヤり。
そして、死に惹かれる青年の独白に共感する部分も多く、青春小説としても素晴らしい。
そして、ミステリとしての仕掛けが明かされてからも青春小説としての余韻が醒めないどころか深まるのが見事な傑作です。




6位 白光(連城三紀彦)

連城三紀彦『白光』読書感想文 - 偽物の映画館

問題を抱えつつもどこにでもあるような家庭で、4歳の少女が殺される事件が起こる......。

事件をきっかけに家族のそれぞれが抱える秘密や嘘が次々と明かされながら、しかし人間心理の謎がどんどん深まっていくという連城三紀彦らしい長編ミステリ。
際限なく反転し続ける心のどんでん返しにもはや何がなんだか分からないくらいになっていると、大オチではあまりに大胆不敵な企みが明かされ、巧すぎて驚きを超して作者が気持ち悪く思えるくらいの傑作です。




5位 紅蓮館の殺人(阿津川辰海)

阿津川辰海『紅蓮館の殺人』読書感想文 - 偽物の映画館

高校生の名探偵とワトソンが、山火事に覆われた館で起きた殺人事件に挑む。

館モノに山火事というタイムリミットサスペンス要素を加えつつ、「名探偵という生き方」をテーマに据えた新鮮にして古き良き本格ミステリ
しかし、ロジックうんぬんよりもキャラクターの抱える秘密を暴いたりがメインになるため、案外本格ミステリを読み慣れていなくても楽しめる広義のミステリーと呼ぶべき作品かと思います。
そして、名探偵というテーマで若さの特権と喪失を描き出しているところも、一見ミステリファン向けのようでいて、その実青春を経験したことのあるすべての人に通じる普遍的な青春小説としても読める。
総じて、ミステリファンは歓喜しつつ、間口は広く誰でも楽しめそうな傑作です。




4位 カササギたちの四季(道尾秀介)

道尾秀介『カササギたちの四季』読書感想文 - 偽物の映画館

リサイクルショップを営む華沙々木と日暮。華沙々木は日常で起こるちょつとした事件を解決する"名探偵"だが、彼の推理には実は秘密が......。

今年は道尾秀介をずっと読んでたので。
本作は探偵と助手の関係性にひねりがあるお話で、そこだけ見ると麻耶雄嵩とかにありそうな設定なんですが、それをきちんとハートウォーミングな日常の謎連作短編集に仕上げているのがお見事。もちろん道尾作品らしく可愛い女の子も出てきます。
小説としてもミステリとしても大満足の傑作です。


3位 medium 霊媒探偵 城塚翡翠(相沢沙呼)

相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読書感想文 - 偽物の映画館

推理作家の香月は、霊媒と名乗る少女・翡翠と出会い、彼女と共にいくつかの事件を解決していく。一方、巷では女性を狙う連続殺人鬼が暗躍し......。

青春日常ミステリの旗手・相沢沙呼による、初の殺人ミステリ。
天然霊媒美少女というあざとすぎる(かわいい)ヒロインとカッコつけつつこちら側の人間(非モテ)であることが丸わかりな主人公のむずキュンなやりとりに萌え萌えしてるとガツンと食らわされます。
少なくとも、オチに途中で気付かなければ帯の仰々しい惹句と同じように大絶賛せざるを得ない傑作です。




2位 人喰いの時代(山田正紀)

第二次大戦前夜の北海道。呪師霊太郎と椹秀助という2人の若者が遭遇したいくつかの事件を描いた連作短編集。

まずは各話にミステリとしてのオモローな趣向が凝らされていて、なおかつ人の恐さや業を描いたドラマにもなっていて、単純に短編集として面白い。
そして、最終話に一冊全体の大オチがくるんですが、これが今までの全てをひっくり返しながらも、それによって今までの物語がより深まるような余韻を残すものだからすごい。
連鎖式短編集の隠れた傑作です。




1位 シンフォニックロスト(千澤のり子)

千澤のり子『シンフォニック・ロスト』読書感想文 - 偽物の映画館

とある中学校の吹奏楽部で、「部内でカップルが出来ると片方が死ぬ」というジンクスの通りに部員が不審死を遂げ......。

フォロワーのマブダチの作家さん。
そのフォロワーが他の作品をわりとボロクソに言ってる中、本作だけはやたら褒めていたので読んでみたんですが、まぁ凄かった。

主人公のクソ野郎がうじうじと好きな子に馬鹿にされてるのを嘆きながらもたくさんの美少女からモテモテしてるのを見て怒り狂っているうちにもどんどん伏線が仕掛けられ、ネタが明かされるやこれまで見えていた物語の裏に別の物語が浮かび上がる。
ミステリであることと青春小説であることがお互いに相乗効果になっている、青春ミステリの理想型と言ってもいい傑作です。







......というわけで、今年読んだミステリのベスト10でした。
改めて見返してみるとやっぱり大仕掛けの青春ミステリが多いですね。そうなんです、好きなんですそういうの。それ系でなんかオススメあったら教えてください。

では、次は非ミステリ編のベスト10でお会いしましょう。ばいちゃ!