- 作者: 浦賀和宏
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 文庫
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主人公の洋子は佐久間という共産主義者の恋人がいる。しかしある時、佐久間の仲間二人が殺害され、佐久間も行方不明になってしまう。洋子が佐久間を探して彼の実家がある村を訪れると、そこには彼が飼っていた緋い猫がいるため、洋子は佐久間がこの村にいると確信する。しかし、村人たちは排他的な態度で佐久間などいないと言い張り......。
行方不明者を探しているけど周りの人たちがみんないないって言う系失踪ミステリー。前半は「バニー・レークは行方不明」や「フライトプラン」よろしく、主人公がおかしいのか他の人たちがグルになっているのかというサスペンスでぐいぐい読ませてくれます。とはいえ村の人たちの怪しさがもう......。
で、後半からは浦賀さんらしいエグい展開が待っています。この展開自体が本書の眼目なのであまり触れないようにしますが、まぁ凄絶。主人公に不幸を背負わせるのが持ち味の作風ですが、それにしても今回は酷くって、私くらいホラーに慣れてても胸糞悪くて読むのを止めたくなりました。
しかしこれ、読み終わってみるとどうにも、「これは、なんだったんだろう......?」という気持ちに襲われます。たしかにラストは衝撃的っちゃ衝撃的ですけど、それはミステリとしての意外性とかではなく、なんかこう............ダメだ、上手く言葉が見つかりません。とにかく、なにがしたかったのだろうと作者の意図まで考えて悩まされるような意味不明ながら衝撃的なオチでした。
あと、分量が短すぎるのも、なんだったのだろう感の一因だと思います。主人公の身に降りかかる悲劇の大きさに本の長さが見合ってないせいで、めちゃくちゃな悲劇をさらっと読まされる座りの悪さがあります。もっといつもみたいにどろどろとした心理描写を増やしてくれたら......それはそれで読みたくないけど、なん だったのだろう感はなかったと思います。
要するに、ミステリとしてだけ読むといまいちで、小説として読むとあっさりしすぎといったところで、結局のところ何がしたかったんだろうということに尽きます。最近売れてきてるみたいだしうるさいミステリファンじゃなく一般読者ウケを狙ったのかもしれませんね。