- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 文庫
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オール讀物推理小説新人賞を受賞した「フクロウ男」や、フジテレビ「世にも奇妙な物語」で映像化された「昨日公園」など、全5編収録の著者デビュー短編集。本書の印象をを一言で言えば「狂気や哀しみを描いたノスタルジックホラー」になるでしょうか。しかし、ひとつひとつのお話ごとに、郷愁と恐怖、狂気と哀しみの配分が違っていて一口にノスタルジックホラーといっても色々な味が楽しめます。
夏祭りで目にした「河童の氷漬け」に心を囚われてしまった少年......。おどろおどろしく恐ろしく、しかしどこか懐かしく人間に潜む狂気を描いた「アイスマン」
昨日に戻れる公園で、死んだ友達を救うために何度も今日を繰り返した少年時代の1日......。号泣必至の切ない結末を迎える青春ホラー「昨日公園」
都市伝説になろうとする主人公はフクロウ男と名乗りインターネットを使って噂を広めていくが......。主人公の狂気をミステリータッチで描き、衝撃の結末を迎えるサスペンスホラー「フクロウ男」
謎めいた女流画家が会ったことのない自殺した画学生との恋を語り出すが、その話はやがて......。一人称の狂気的な恐ろしさに背筋も凍るような「死者恋」
通勤電車から見えるマンションの一室の窓辺には後ろめたさを感じる相手が立っていて......。主人公が見た不思議な"あるモノ"を大阪万博の思い出を交えて描いた「月の石」
このように、収録された5つの物語たちは、1冊の本としての統一性を持ちながら、しかしとってもバラエティ豊か。1冊の中で感動も切なさも謎解きもゾッとする怖さも味わえるお買い得な短編集なのです。
このような一見相反することを両立させ、新人離れした筆力で全話をハイクオリティに仕上げた、まさに破格のデビュー作。
ホラーファンはもちろん、ミステリーファンや青春小説ファンにも、いや、ジャンルの枠など超えて全ての小説ファンに読んでほしい珠玉の作品集です。