偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

スウィート17モンスター

こんにちは。青春拗らせマンです。

突然ですが、みなさんに質問です。以下のうち当てはまるもの全てに丸をつけてください。


・恋人がいない
・恋に恋している
・友達は少ない方だと思う
・パーティーが苦手だ
・頻繁に劣等感に苛まれる
・思い出すと叫びだしたくなるような恥ずかしいことをした経験がある
・無自覚に人を傷つけてしまったことがある
・自分は世界で一番不幸だと思う

 

いかがでしたか?

5個以上丸があるあなたは、この映画を観ましょう。

 

 

 

 

 

製作年:2016年
監督:ケリー・フレモン
出演:ヘイリー・スタインフェルドウディ・ハレルソンキーラ・セジウィック、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ブレイク・ジェナー

☆3.8点

〈あらすじ〉

17歳のネイディーンには彼氏がいない。友達も、小学校からの付き合いのクリスタしかいない。

しかし、そんな唯一の親友・クリスタが、ある日ネイディーンの兄と付き合うことに。自分とは違って何でもできる兄に以前から劣等感を抱いていたネイディーンは、友達まで兄に取られてしまったのだ。こうして、ネイディーンの孤独と疎外感と劣等感に彩られた日々が始まる......。

 

 

 

 

 

青い春と書いてセーシュンと読むらしいですね!

せいすん。青い?春?どっちかと言えば黒い冬って気がしますけど。

というわけで、青春を拗らせてのたうち回る少女を描いた痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い青春コメディ映画です。(「痛い」のところは尾崎世界観の声で再生してネ)。

 

主人公のネイディーンは、私が冒頭に書いた質問にだいたい当てはまっちゃうような拗らせ女子。妄想と劣等感だけが友達さ、って感じの女の子です。

でも、丸が5個以上あるあなたならきっとこう思うでしょう。「そんなの普通じゃん」、と。
そう、そこがこの映画のキモ。ネイディーンは普通に青春に苦しんでいるだけの、普通の女の子なんです。

だからこそ観てる私たちも「あるある〜」と共感したり「いやいや一旦落ち着こう?な?」と宥めたくなったり「もうやめて!とっくにネイディーンのライフはゼロよ!」と叫んだりしながら自分の中にある痛みを痛がりながらも、コミカルなエンタメとして見ることができるんですよね。なんたるマゾッホ

 

で、そんな風に痛いのにエンタメになっている大きな理由はやっぱりキャラの魅力なんですよね。

まずネイディーンが魅力的なのはもちろん。上に書いた通りで、彼女の滑稽ながら切実な有声無声の叫びにはいちいち胸が締め付けられます。

 

が、他のキャラだと特に2人の名脇役が最高でした。

 

まず1人は高校の先生。

イケメンすぎますでしょ......。いつも主人公のことを茶化してきますが、嫌味な中にも優しさが伝わってきて、こんな先生いたら惚れるでしょ、と思います。あ、いや、この映画は先生に惚れる話じゃないんですけどね。


もう1人が、主人公のことを好きなオタク男子くん。最初はただの情けないモブキャラみたいな感じですが、親しくなるほど味が出て、中盤では主人公ほったらかしで脇役の彼の方に感情移入しちゃったくらい。嗚呼、観覧車......。


彼らが味噌汁の煮干しと昆布みたいにいい味出してます。この2人がいなければ、この映画は塩辛いばっかのインスタント味噌汁になっていたことでしょう。

 

 

終盤に至るまで、主人公の身の回りにはどんどんつらいことが起きていきます。

主人公は次第に自分が悲劇のヒロインであるかのような態度を取り始めます。ぐわーっ分かる〜!

そうなんですよ。私もすぐ悲劇のヒロインぶるタチなんで気持ちはよく分かります。なんなら悲劇のヒロインぶるためにこのブログをはじめたぐらいですからね(エターナル・サンシャインの項参照)。悲劇のヒロインぶってる時はそりゃつらいけど気持ち良いもんですよ。全部世界のせいにして被害者ヘブンで管巻いてるわけですからね。でもね、ふと我に返って大したことないことにいつまでも自分だけがつらいみたいに思っている醜い自分をきゃっかんししてしまうともうダメで恥ずかしさで頭を壁にガンガンしちゃいますね。これが壁ならまだいいんですけど車の運転中に発作が始まるって事故りそうになることもしばしばで......。

話は逸れましたが、主人公がその悲劇のヒロイン思想とどう折り合いをつけるか、ここも必見です。身につまされます。


この映画の原題は“The Edge of Seventeen”。Edgeって「刃」とか「鋭さ」って意味があって、このタイトルではそっちで使われているのかも知れませんが、もう一つ、「端」とか「果て」って意味もあって、個人的にはまずこっちを思い浮かべました。主人公に青春の端っこまで追い詰められたようなどん詰まり感があったからでしょう。でも、いざ端っこまで追い詰められて落っこちちゃうと、意外と下でみんなが受け止めてくれるかもしんないよ、っていう優しさのあるラストには泣きました。泣ける映画はいい映画です。痛いけど。

 

 

ま、そんな感じで、拗らせ青春真っ只中の少年少女、拗らせ青春に打ち勝った元・拗らせ人間、そして拗らせ青春から未だ抜け出せない青春ゾンビの童貞処女諸君!!
「スウィート17モンスター」を観てくれ!!
観たからといってどうなるものでもないけど、観て抉られてくれ!!以上。