偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ニノチカ(1939)


ソ連からパリへ派遣された3人の使者たち。しかし資本主義世界の暮らしに味を占めてなかなか帰ってこないため、様子を見に同士ニノチカが派遣された。決して笑顔を見せず冷徹に仕事をこなす彼女だったが、敵であるはずのフランス男レオンと恋に落ちてしまい......。



エルンスト・ルビッチ監督、ビリー・ワイルダーも脚本に関わったラブコメ

それまでけっして笑うことのなかったグレタ・ガルボが笑顔を見せたことで「ガルボ、笑う!」というキャッチフレーズが付けられた作品でもあるようです。
私はガルボの出演作は本作の直前の『椿姫』しか観たことないですが、たしかにあの作品でも笑わないクールな美貌が素敵だと思った記憶はあります。
......なんですが、笑うと可愛いのよさ〜〜。
演者のイメージを誇張して利用したような序盤の冷徹さがまず鉄仮面すぎてめっちゃ面白いんですよね。相手役のレオンが渾身のジョークを決めても絶対に笑わない。いや、あのジョークの面白さは私にもよく分からなかったけどね......。
それがとあるきっかけで爆笑しちゃってからはそれまでの冷徹さが嘘のようにふにゃふにゃし出してめっちゃ可愛いし愛おしいんですよね。
まぁ〜ラブコメの魅力なんて半分はヒロインの魅力っすからね!それだけで名作っすわ。

んでまぁストーリーもビリー・ワイルダーが書いてる(?)だけになかなか面白かったですけどね。
対立する立場の2人の恋......というのはラブコメとしてはベタな設定ながら、その2人の対立というのが資本主義と共産主義を背負ったものであるのがユニークなところ。
個人の自由がなく、それこそ自由に笑うことも出来ないようなソ連全体主義的な息苦しさを痛烈に批判しているんですね。
しかし、一方では資本主義の馬鹿馬鹿しさや格差も仄めかされていたりもします。また、ニノチカソ連の3人の使者の食事のシーンでは、1人が自分の卵を割ってしまったことに対し「3つで4人分作れるわ」と、資本主義の競争にはない共産主義という考えの美点も描かれていて、決してソ連下げの欧米上げではないところが好きです。
2人の恋というのも、2つの考え方の良いところを合わせれば世界は良くなる......みたいなメッセージの具現化のようにも感じられ、軽快で笑って胸キュンしつつもどっぷりと社会的なメッセージも込められているところはさすがだなと思います。

あと、「思い出は検閲できないよ」みたいなセリフが良かった。