コメディアンを夢見るルパート・パプキンは、憧れの大スター・ジェリーに付き纏い、自分を人気番組「ジェリー・ラングフォード・ショー」に出してくれと頼む。しかしジェリーが自分のネタの録音すら聞いてくれないことに憤ったルパートはやがて極端な行動に出て......。
思えば以前『ジョーカー』を観た後に元ネタの本作を観た覚えがあるんですが、狙ってないんだけど『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』を観たこのタイミングで本作2回目を観てしまいました。
いやはや、やっぱり面白いわ。
しかしなんとも不思議な映画ですよね。ストーカーを描いた作品でタイトルに反してコメディではないんだけど、かといってホラーでもないし、なんだかんだ笑えるからコメディなのかもしれない気もしてくる......けど、観てる時の1番大きい感情は「いたたまれなさ」なんですよね。
主人公のルパートは34歳で母親と2人暮らしのフリーターでエゲツない妄想癖がある男。まぁ完全にヤバい人。自分がコメディアンになりたいという都合だけで大スターに付き纏い、そのくせ小さい劇場で下積みから頑張るつもりはなく、熱意の方向性を間違えているから本当にお笑いが好きなのかどうかすら分かりません。
当然観ていて彼に共感は全く出来ないんだけど、なぜか強烈に引き込まれてしまって目が離せないんですよね。「目が離せない」と書いてて気づいたんですが、ルパートに引き込まれてしまうのは魅力とか共感とかじゃなくてただただ危なっかしすぎるから、という子供から目が離せないみたいな感覚なんだと思います。
相手の言葉や起こった出来事を全て自分のいいように解釈して暴走するんだけど、とはいえ頭がおかしいだけで悪い人ではないし暴力を振るったりもしないので無害っちゃ無害で、だからちょっと可愛げすら感じてしまうのが悔しい......。
しかしこれに付き纏われるジェリーや彼のマネージャーの美女はとてもかわいそう😢そして思いっきりヤバい奴だと思ってる感じ出しつつも表面上穏やかに対応するのがまたいたたまれない......。そしてそれをものともせず、「お帰りください」と言われてもなぜか「おかまいなく」とか言いながらロビーで座って待つところとか爆笑してしまいました。
また、本作では彼の都合の良い妄想の場面がたくさん出てくるんですが、「都合良すぎてこりゃ絶対妄想ですね」と分かるんだけどそんでもあまりに堂々と現実のように妄想をするシームレスさが怖くも面白い。そしてラストに至っては妄想ならいいんだけど現実ならば皮肉すぎるっていう反転が起きるのも面白かったです。
そして、彼とは別にもう1人、こっちはジェリーにガチ恋勢の女性ストーカーのマーシャというキャラが出てくるんですが、面白いのが彼女とルパートは同じジェリーのストーカーなんだけど目的が違うから同担拒否みたいにならずにお互いがお互いを頭のおかしなファンだと思い合いながらも協力関係にあるんですね。この2人の喧嘩するほど仲が良い(?)みたいな掛け合いがもう毎度面白くて、2人で喋ってる時には愛おしさすら感じてしまう......。
という感じで、アブナいファンというものを描いていて彼らは完全に振り切れちゃってて共感とかは一切できないにも関わらずサイコ野郎と切り捨てられない悲哀があって、まさにいたたまれないとしか言いようがないのよね。一方ではこうしたアブナいファンを作り出すショービズというシステムそのものへの皮肉も潜ませているのも良い。スタッフがイタズラ電話を取った時に、観てるこっちはルパートがかけたものだと知っているのもあるけど「こんなん絶対こいつ(ルパート)の仕業じゃん」って思うのに全然ピンときてなくて、こういうヤバい人が他にも無数にいるってことだろうな......と怖くなった。
昨今の推すということが何か崇高なものみたいにされる風潮は気持ち悪く思うのでみんな本作を観て頭を冷やして欲しいでつ......。
