偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

戸谷洋志『スマートな悪 技術と暴力について』感想

あえて疑問を口にしてみよう。スマートさがそれ自体で望ましいものであるとは限らないのではないか。むしろ、スマートさによってもたらされる不都合な事態、回避されるべき事態、一言で表現するなら、「悪」もまた存在しうるのではないか。


えーと、確かあとがきにずっと真夜中でいいのに。が出てくるという情報を得てそれで読んだんだと思いますが、面白かったです。

政府が提唱する「超スマート社会」を引き合いに出し、便利になるのは良いことかもしれないが、単純にスマートであること=良いことと捉えるのは果たしてどうなのか?スマートになることで取りこぼしてしまう倫理もあるのではないか?という疑問を出発点に、タイトル通り「スマートな悪」についての論考が繰り広げられていきます。
中でも、ナチスドイツが行ったスマートな虐殺という極端な「悪」と、満員電車における押し合いへし合いの暴力という身近すぎて認識していなかったような「悪」が例に挙げられるあたりがとても面白くてふむふむなるほどねと思いながら読んだ。

最後に提示される「ガジェット」という解決策はなかなか抽象的ではあってこれをさぁ今から実践だ!というのはなかなか難しいけど、こないだ読んだ『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にも通じるところがあり、そういう世の中になったら良いよねぇ......と思った......。
あとガジェットの話からずとまよへの流れが良くて、ずとまよ超にわかファンとして嬉しかったです。扇風琴カッコいいよね......。