偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

デスプルーフ(2007)


耐死仕様(デスプルーフ)の車を使って美女を惨殺する変態殺人鬼のスタントマン・マイク。テキサスのとあるバーを訪れた彼は、そこで出会ったブロンドの美女パムを家まで送り届けると称して車に乗せ......。



タランティーノ監督による、70s80sのB級映画へのオマージュ企画『グラインドハウス』のために制作された長編。
企画モノということもありタランティーノ作品には珍しく2時間ない短さですが、軽く観れるけど低俗な娯楽映画の良さが濃密に詰まっていつつも現代的な感覚も取り入れられていてめちゃくちゃ面白かったです!

画面にノイズも走るザラついた画質の映像、たまにブツっと途切れたりする雑な編集などB級感の演出も楽しく、そこにセクシーな美女たちがたくさん登場するのでそんだけで最高です......。特に前半の主人公(エロいダンスする人)と車で送られる金髪美女のパムさん、あと後半で出てくるチアガール衣装のお姉さんが好きすぎた......。あと脚フェチタランティーノの面目躍如でほぼ全員美脚を惜しげもなく披露してくれるので眼福でしかない......。

変態殺人鬼スタントマン・マイクさんはカート・ラッセルが演じているのでめちゃくちゃ渋くてかっこいいイケオジなんだけどやってることは盗撮覗きストーキング痴漢というクソ小者悪党みたいな感じのダサさとのギャップが面白かった。
彼が意味深な感じで登場するけど最後の方ではもう恐怖の神秘性みたいなものが丸っきり剥がれてただの哀れなゴミカス野郎に成り下がるあたりはアンチ・殺人鬼映画みたいな趣もあって今風だなぁと思った。

対して彼に反撃する女子会のカッコ良さよ!(仲間に入れてもらえなかったチアガールが可哀想)
女子の集まりが酷い下ネタを言いまくりながら練り歩くの最高だし、キメの下ネタ(?)をぶち込むタイミングがここぞ!って感じで下ネタ言うにもこんだけセンスがあるともはやオシャレ。あと、「バニシングポイント好きな女なんていない」みたいなことをバニシングポイント好きな女というキャラに言わせるあたりの、『「バニシングポイント好きな女」が好きな男』への皮肉めいた感じも笑った。しかし、私もバニシングポイントを観ていないのでパロディシーンみたいなのの元ネタが分からなくて悔しいしバニシングポイント観なきゃな......。いや、元ネタ知らなくてもあのクソ危険運転は楽しいから良いんですけど!

そしてクライマックスのカーチェイスがもう最高よね。車2台で追いかけっこするだけでなんでこんなに楽しいんでしょう、映画ってすげえや!という気分になる。反撃に転じる時にあんだけ怖い思いしたはずの彼女がノリノリでまた危険乗車して「行くぜオラァァ!!!」とか言ってんのぶち上がりすぎてそのまま死ぬかと思った。
そんでラストシーンがもう、映画史上最高のラストでしょこんなん。......というのは言い過ぎかもしれんけど、でもマジでこれ以外にここまで鮮明に印象に残ってるラストシーンってあんまり思いつかないかも......ってくらい最高。
なんつーか、映画なんてこんなんで良いのよ!と言いたくなる、バカみたいな痛快さが堪らん。そうよ、こんだけ現実の生活でストレス溜まってる私たちなんだから映画くらいこんくらいの頭悪いスカッとで良いじゃない!興奮!