他人の夢に侵入し、情報を盗み出す技術者のコブ。とある事情から指名手配の身となった彼は、犯罪歴の抹消と引き換えに日本人実業家のサイトーの依頼を受ける。それはライバル社の跡継ぎ息子に「会社を潰す」という"アイデアを植え付ける"もので......。
100年ぶり2度目の鑑賞。
前回見た時はノーランにハマりたてで興奮すると共に難解さにあんまりついていけてなかったのも事実ですが、TENETを経て私は生まれ変わった!改めて見ると本作くらいまではまだ(細部の把握はともかく)ストーリーの筋は追いやすかったんだなぁと思いました。
とりあえず夢に侵入する産業スパイという設定そのものがまず魅力的すぎます。
そして、その「夢の中」の写し方が凄いんすよね。
本作では夢の中、夢の中の夢の中、夢の中の夢の中......という風に夢が何階層にも展開されていくのですが、各階層でそれぞれ街だったりホテルだったり雪山だったりと風景が違うので各階層が切り替わりながら映されても慣れてくると全然混乱しない。複雑な話のわりにはめちゃくちゃ分かりやすく描いてくれてるわけです。
その上で、例えば夢の第一階層で車が揺れると第二階層でも地面が揺れたりして、その組み合わせ方によって重力などの物理法則を超越した摩訶不思議アクションが現れるのが無機質な奇想といった感じですごく好きです。
ノーランの普通のアクションってちょっと誰がどうなってるのか分かりづらいところがあるのですが、こういうアイデア映像みたいなのになると映像の不思議さだけでどこか厳粛な気分にすらさせられちゃうような凄味があって天才なんですよね。
あと、脚本がうますぎるんだよな。
夢を何階層も織り重ねてスパイアクションをやってるだけでも凄いのに、そこにレオ様演じる主人公のコブとその妻モルとの秘密がホワットダニットのミステリっぽく描かれてもいます。真相が明かされることで、静かながら哀切で異様でもあるドラマが浮かび上がってくる。無機質なようでいてちゃんと人間ドラマになってるんです凄い。
そして、現実とは何か?というテーマを端的に突きつけるラストシーンも上手すぎます。印象的なラストシーンランキング上位。
そんな感じで、初めて観た時はこのオトナなドラマの味わい深さも分からずあんまりハマれなかったんだけど今回はややこしさも渋さもしっかり楽しめました。
