おいしくるメロンパンの新作が出ましてめっちゃ良かったので紹介したいのですが、その前にまずおいしくるメロンパンとはなんぞやということを軽くご紹介させてください。実はかなり好きなバンドなんです。よろしくお願いします。
おいしくるメロンパンは2015年から活動開始した3人組バンド。
キャッチコピーは「ダークさわやかスリーピースギターロックバンド」で、そのフレーズの通り、ハイトーンなボーカルとナイスメロディで切ない青春を歌う爽やかさと、一方で憂いの色が強い曲も多いのが魅力のバンドで、スピッツファンとしてはハマらざるを得ないバンドです。
また、ディスコグラフィーが5曲入りミニアルバムで統一されている美しさや、バンド3人だけの音にこだわってシンセとかストリングス入れたりとかしない「スリーピースギターロック」としての硬派さといったこだわりの強さも魅力です。
正直、おいしくるメロンパンという意味分からんバンド名さえなければもっと売れてると思うしもっと好きになれるんだけど......とバンド名だけが残念なんですが、ミニアルバムのタイトルは英単語一つでシンプルにカッコよかったり、曲名もミニアルバムのトラックリストを見ただけで聴きたくなっちゃうくらい良いのでネーミングセンスはあるはずなのになんでバンド名がおいしくるメロンパンなんだクソ......と思ってしまいます。改名してくれ。
とまぁ、そんな感じで名前以外は大好きなバンドなんですが、今作は中でも素晴らしかったのでついにアルバム感想記事を書くことに決意しました。
まずは、リリース形態が8thミニアルバム『eyes』+CDの特典として"8.5th"ミニアルバム『phenomenon』の2枚組という変則的な内容になっていて、そんなら10曲のフルアルバムにすれば良さそうなところをどうしても「5曲入りミニアルバム」にこだわるところが好きなんですよね。
そして、『eyes』は春夏、『phenomenon』は秋冬がモチーフの曲が収録されていて、2枚で対になる構成なのもオタク心を擽ります。
また、4作目『flask』、5作目『theory』はわりと実験的な内容で、そこから6作目『cubism』、7枚目『answer』とだんだん開けた内容になってきた近作の流れの中で、今作は実験的な部分とポップで開けた感じとが(まぁ曲数が多いからもあるけど)共存していて、今のおいしくるの決定盤といった趣になってて、おいしくるメロンパンを知らない人にこそぜひ聴いてみてほしい新作となっています(聴いてくれ)。
そして、これまで聴いてきたファンとしては、今作で特にボーカルのナカシマさんの声とか歌い方の幅が広がったってのがかなり大きいです。本作の先行シングル曲「五つ目の季節」を聴いた時に特にそれを感じて、この1曲の中で今までのハイトーンボイスの魅力と共に、特にCメロなどでは今までになく低い音域の声も出ていて、声の高低のレンジが広がって深みが増しています。また、「空腹な動物のための」ではいつものイノセンスを感じさせる歌声とは一転して攻撃的な歌い方なんですが違和感なくちゃんとカッコよかったりもして、サウンドがシンプルだからこそ声が良くなったのがダイレクトに伝わってきて凄え良いし今後にも期待だしライブにも行ってみたくなりました!
という感じで、8作目にして格段に進化したミニアルバム(たち)で、おいしくるメロンパン聴いたことない人にもぜひ聴いてほしいっす。
というわけで、とりあえずこの記事では1枚目の『eyes』の5曲について。
2枚とも同じくらいのウェイトが置かれているとはいえ、やはり1枚目の『eyes』がいわばA面であり、先行シングルの2曲をはじめ、全体にキャッチーな曲が並んでいる印象があります。
タイトルの『eyes』の意味ははっきりとは分かりませんが、1曲目の映像的な歌詞、2曲目の「君の目」、3曲目の現代社会への批評的な眼差し(目を逸らさないでというフレーズも)、4曲目の「君のまつ毛」という歌詞など、こじつけかもしれませんがeyesを感じさせる表現があちこちにあってアルバム全体のイメージにも合っていると思います。
1.五つ目の季節
本作の先行シングルとしてリリースされた曲で、おいしくるの王道な疾走感溢れる切ないギターロックチューンでありつつ、前述の通り歌い方の深みも増して新しさも感じさせる楽曲。
「五つ目の季節」というタイトルも、これまで季節を歌い続けてきた彼らのど真ん中ストレートでありつつ、さらに進化して新しい季節が来たことも示しているようで、2枚組であることとも併せて本作への意気込みを感じさせます。
個人的に好きなところは、イントロの手数の多いドラムの勢いと、2サビ前のどぅーんっていうベースの音。
あと、「それもまた君らしいね〜」の末尾の部分の外した音を引き継ぐように次の「そして僕たちは」のとこで下に転調するとことかゾクゾクします。
歌詞は「フィルム」「シーン」などの言葉が使われているように戻ることのできない記憶の中の時間を映像に喩えていて、そのためか映像的な描写が多く、特に
裾を揺らす白いワンピース
そのステップに踏み潰されてくシロツメクサ
ってとこの美しい残酷さが好きです。
花冷えの季節=春のどこか幻想的な雰囲気がこの映像的な歌詞に合っていてやっぱ作詞のセンスが凄えわと唸らされます。
2.シンメトリー
こちらは昨年にシングルとしてリリースされたサマーチューン。
前曲に続いてこれぞおいしくるメロンパン!という感じの曲で、真夏の明るすぎる太陽の光の爽快さと、その下でくっきりと濃く出来てしまう陰も感じさせるダークさわやかロックナンバー。
この曲はとにかく歌詞が好きで、特にCメロ以降は曲の展開と歌詞のエモさが呼応しててぐぅ〜〜エメぇ〜〜ってなっちまいます。
君に借りた本に栞みたいに挿した
水色の感情を水色のままあげたくて
溢れるのは夕焼け色の涙
あの頃のまま途中で止まってしまっている感情を栞に喩えて、あの頃の水色と現在の夕焼け色で対比させるあたりの巧さよね......。
2サビの終わりが「水色の感情は〜」で終わって、その後Cメロで「まだ水色のままなんだ」と続くところの区切り方も最高っす。
線対称の君と僕の共通点
伏し目がちなところ夏が嫌いなところ
タイトルを「線対称」と日本語にして回収するこの部分のエモさったらないですよね。
その後で、
今は少し好きになれてしまったよ
足元ばかり君はみていませんか
と、今は少し前に進んでしまったことを切なく描き出すのが好きすぎる......。
タイトルはシンメトリーだけど、シンメトリーが崩れることを歌ってるわけですね。
3.空腹な動物のための
憂いも滲ませながらもポップな2曲に続くのは、いつになく攻撃的なこの曲。
これまでにも激しい曲や尖った曲がなかったわけではないけど、この曲はそれをさらに先鋭化したような、かといってパッと聴き実験的な感じはしないキャッチーでストレートなゴリゴリのロックチューンです。
むしろ今までこういう曲なかったのでこういうのはやりたくないものと思ってたフシもありつつ、クソカッケェので嬉しい。
しかし声の低い部分が際立ってきた今作だからこそよりカッコよくて、その点では今だからこそって気もします。
冒頭、つんのめるようなドラムと共に「齧って齧ってちゃんと飲み込んで」という印象的なワンフレーズだけを歌ってからのベースイントロからしてもうテンションぶち上がり。サビ直前の「悪しからず」のとこのドスの効いた(ナカシマ比)声がまた最高。
感傷的になったって作品ぶったって
それは砂の果実
足掻いて引っ掻いて解った気になって
齧ってちゃんと飲み込んで
歌詞は抽象的ではあるものの、SNSで誰でもなんでも言える状況のことのように読みました。
それがあまりにお手軽になってしまって何かに深く向き合うことがなくなった現代への皮肉......みたいな。だとするとこんなブログなんかやってる私にもめちゃ刺さるんですけどね......。つらい。
1番では「砂の果実」なのが2番以降「夢の家畜」「猿の皮肉」とどんどん辛辣さを増していくサディスティックなところ、好きです。
4.ドクダミ
霧雨のような細かいドラムのイントロが印象的なミドルテンポのやや穏やかな(でも憂いの影も感じさせる)曲。
歌詞に引っ張られてるだけかもしれませんが音やメロディもどこか湿気を含んでいるように感じられ、歌い方もそれに合わせてしっとりしていて前の曲の激しさとのギャップでより美しく感じます。「そろそろ」ってとこの声が良すぎる。
歌詞は春から夏へ移り変わる途中の雨の季節に引いた風邪のお話。
大袈裟だ君は断りきれない
変な形の梨が甘い
で君が看病に来てくれている感じが想像できたり、
僕一人を欠いた世界は淀みなく回る今日も
の、家で休んでいる日の自分が行かなくても学校や職場が回ってる不思議さとかも分かりやすくあるあると頷けて良い。
「君に風邪がうつる頃には」→「君の風邪が治る頃には」という時間経過が描かれているんだけど、どこか風邪が治ってしまうことが寂しいみたいな感覚もある気がします。
ドクダミという言葉は直接は出てこないけど「線路沿いに咲いた花」がそうなのかな?でも薬草のイメージや初夏の季節感がぴったりで良いタイトル。
5.黄昏のレシピ
かっちょいいけどちょい気の抜けた感じもするベースの短いフレーズから始まり、歪んだギターのイントロからしてテンション上がります。
アップテンポとまでは言わないけどノリが良く、憂いや暗さの成分は全くなくってただただ楽しく少しだけ切ない、ミニアルバムの最後にすっきりした後味を残してくれる曲です。
まぁ、だいたい『phenomenon』も続けて聞くので最後の曲って感じもしないけど......。
サビのギターがちょっとガンズのスウィートチャイルドなんとかみたいでめっちゃ好きです。アウトロのギターソロも超カッコいいし。
切り刻む 今朝の誓い
押し潰す 昨日の後悔
盛り付ける君の名前
ごちゃ混ぜのサラダボウル
という混沌とした感情をサラダに例える冒頭の歌詞からして詩的なのは崩さずに遊んだ感じで良い。後で出てくる「なんちゃらのチーズ」とかもちょっとだけ悪ノリみたいで可愛げがあります。
代わり映えのないこの日々に積もる
とりどりの君の言葉が僕を作っていく
なんかもはやナカシマくん結婚したんか!?くらいの歌詞ですけど、まぁ本人はしてなくてもメンバー2人は既婚ですからね。29歳のリアリティが感じられて同級生としてはとてもエモいっす。
