偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

(500)日のサマー

"運命の恋"を信じるトムと、信じないサマー。2人の出会ってから終わるまでの500日間を描いた、ラブストーリーに在らざるボーイミーツガールの物語。



ええ、これは、極上にして極悪のラブコメですね。
実を言うと本作を観るのは2.5回目。

最初はたぶんまだ恋を知らなかった頃で、純粋にこのサマーちゃんというクソ女(そうなんです)が何考えてんのか分からんイミフな映画という印象。

次の1.5回目は、ちょうど失恋した後の時期で、このサマーちゃんというクソ女が何考えてんのか分からんイミフなクソうんこシット映画として......あれ、同じまま悪化してるけど......とにかく耐えきれず途中で怒って観るのやめちゃいました。

そして、それなりに恋愛を経験して特にこういう刺激もない安定期になりつつある今観たらまたサマーちゃんというクソ女が......あー、うん、これはもう、本作を嫌いなことは一生変わらないでしょう。

でも、大嫌いだけど、主人公の視点から見るとめちゃくちゃわかりみがつよい大好きな映画でもある、それがこの(500)(日の)(サマー)(笑)なんですね。





というわけで、はい。

まずは構成や演出が面白いですね。好き嫌い分かれそうだけど私は好き!

2人が過ごした500日間をシャッフルしてクリストファー・ノーランばりの複雑な事件列で見せてくれるんですけど、ラブコメにこれがとても合ってて。
ブコメってストーリーの展開がベタになりがちなんですけど、こうやってシャッフルされることで「なんでこうなるの?」みたいな引きになるんですよね。
それとともに、楽しかった頃とギクシャクしてる時を時間を飛び越えて連続して描くことで「あの時はこうだったのに......」という切なさも増す。
何より、恋をしてる時に好きな人との思い出を振り返る時って、こうですよね。
出会った時から時系列順じゃなくて、あの時は楽しかったなぁ、でもあんなことも、いやあれはあれでこうでこう......みたいにエピソードをバラバラに並べては切なくなる。
そんな恋してる時の思考の流れがそのまま映像化されてるようで、とてもわかりみがありました。


また、監督はもともとPV監督だったらしく、本作でも音楽の使い方が印象的だったり、演出がPVみたいな視覚的なギミック先行だったりするのも新鮮で面白かったです。
これもですけど、恋をしてる時ってやはり常に日常から3ミリくらい浮いたような心地がするものであるのと同時にそんな自分に酔ってるところもあるものでして。
だから、こういうさまざまなギミックをぶち込んでくるサブカル好みのする演出というのもまた恋する僕らのリアルな実感なんですよね。
そう考えると、本作は恋愛のワンダーなファンタジックな心境を実にリアルにそのまま描き出した作品であるとも言える気がします。決してファンタジーでも演出過剰でもない、これがリアル!!



そして、なによりもキャラクターの魅力が本作の最大の魅力でもあります。

主人公のトムくんは恋に恋するお花畑青年で、ドラマ型統合失調症な感じには自分を投影しずにはいられなくありつつも独特のなよい色気があって憧れるというか、、、言ってしまえば、「私がこうありたい私像」が彼です!というか私は本来ならああいう顔をしているべきであって、なんで精神構造はそう遠くないのに私だけこんなブサイクなんだと、それはそれで謎の怒りに駆られます。

閑話休題

しかし、彼がフラれてカラオケでバカみたいに外して叫ぶシーン、俺もやったよ。
私にとってそれは毛皮のマリーズであり銀杏BOYZでありスピッツであり川谷絵音なのですが、「あなたがあぁぁぁぁぁ!!この世界にいいぃぃぃ!!!」なんて藤原竜也ばりのシャウト決めてたあの頃を思い出して恥ずかしくも懐かしくなりました。



一方、サマーちゃんはまじクソ。クソと書いてうんこと読む。あるいは異星人と書いてエイリアンと読む。そんくらいむかつく女です()。
あんまり女はこうだとかいうとまた怒られたりフォロー解除されたりするんで言いたくないですけど、ある種男が思う典型的なクソ女(そして最高に魅力的なGirl)として描かれてるんですね。

とにかく顔が良いし()、こっちの考えてることなんて全部見透かしたようなとことか、突然奇行に走るミステリアスさとか、恋愛に対する態度とか......全てがもうこちらの理解を越えて〜越えて〜越えて〜ゆく〜なところがもうあざとイミフ可愛い......認めたくないけどとても可愛いんですね。小悪魔ビッチ!!くそ!シット!うんち!!(そう、語彙力失くすレベルで)。
いや〜〜〜でもIKEAで周りが全く見えてない感じめちゃ最高に憧れオブ・ザ・ファッキン僕が考える最強のデートなのにあれでガチ恋にならずにおられるお前は何者なんだ意味わかんねえ!!!!
いかんね、もう、感想というか取り乱すだけみたいになっちゃうからやめとこうかな。



でも、もっかいトムくんに戻ると、そんな彼女を自分だけは変えられると思っちゃうんですよね。それも分かる。でも、それは違うのも分かる......。けっきょくNothing’s gonna change her worldなんすよね。うえっ。

そう、サマーちゃんのことクソクソ言ってるけど、自分もまあクソだなみたいな。そういう反省にもたどり着きながら失敗だらけだけど特別な恋の時間が......うっ............美しいんだ............。


しかし、ラストがまた皮肉が効きつつも一つの恋の結論としてすごくわかりみがあってリアルだけどファンタジックでファニーでキュートでファックでキマりすぎてますね。
恋ってなんでこんなにクソめんどくせえんだろうと思いつつ、それでもあのジェットコースターみたいな気持ちの乱高下に憧れてもしまう最低最高のラブコメ、でした。

うん、私もペニス!!!って叫びたい!!!




以下ひとことだけネタバレで。




























彼女しかいないんだ!運命の人だった!海には他に魚がいる?小魚ばっかじゃねえか!

そう思うのはリアル。
しかし、そんなこと言っときながら、なんだかんだ夏が終われば秋が来ずにはいられないのもまたリアル。

......果たして、(何)日のオータム???