- アーティスト: ヒメーシュ・パテル
- 出版社/メーカー: Polydor Records
- 発売日: 2019/06/21
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最&高&最&強でした!
売れないアマチュアシンガーのジャックが、幼なじみでマネージャーのエリーに夢を諦めることを告げた夜、世界は12秒間の停電に包まれ、ジャックは交通事故に遭う。
目が覚めると、そこはビートルズの存在しない世界だった。ただ1人ビートルズを覚えている彼は、その名曲たちを使って一気にスターダムを駆け上がるが......。
といった感じのお話。
ビートルズの楽曲がふんだんに使われていたりビートルズの小ネタもたくさん盛り込まれていますが、内容自体はビートルズの伝記ではなく主人公・ジャックの等身大の愛の物語でした。
まぁ、今さらビートルズでボラプをやられてもどうかと思うので、こういう形でのビートルズ映画ってのも凄く良かったと思います。
私自身はビートルマニアってわけじゃないんですが、彼らの曲はそこそこ聴いてますし、なんせHere Comes The Sunを聴きながら産まれてきた男なので、こりゃもう感慨深深でした。
しかし、ビートルズの曲ってのはもう到達点というか、至高というか。今聴いてもなおどんな新曲よりも新鮮な感動を持って聴こえるし、ゆってもエリナリグビーとかは100回以上は聴いてるでしょうけど飽きることもない。きっと未来永劫飽きない。
そんな楽曲たちを、主人公によるパク......カバーという形で時に弾き語りで、時に原題風にリアレンジされて聴けるのがまた素晴らしくて、下手に原曲そのまま使うより全然愛を感じました。
あと、これ全部のシーンをライブ録音で撮ってるらしくて、その良い意味での荒さと勢いもまた素敵でした。サントラでもその雰囲気が出てて観て以来結構聴いてます。
また、ビートルズ小ネタもわりかし初心者にも優しいものも多く、私程度の知識量でもかなりたくさん拾えてめちゃくちゃ笑いました。マニアな人はもっと分かるのかな。
何より、ビートルズの不在によって彼らの楽曲の圧倒的な存在感を浮かび上がらせる設定が素晴らしい!
50年以上も昔の曲を現代の若者たちがストーリーに載せたりいいね👍しまくったりする描写が全然大袈裟に感じられず、「こんだけ曲が良ければ熱狂するに決まってる」という説得力があるんですね。実際私も今年に入ってからビートルズのアルバムを順番に少しずつ聴いてて今はホワイトアルバムあたりまで来たんですけど、青盤赤盤の元から知ってた曲の素晴らしさを再確認するとともに知らなかったアルバム曲の良さも新発見してその偉大さに打ち震えていたところなので、極々個人的にタイムリーな映画でしたね。
とはいえ、上にも書いた通り、本作はビートルズ本人のドキュメントではなく1人の青年の物語でもありまして。
かのバンドの全ての曲を自分だけが知っているなんて状況になったら、こりゃ絶対やりますよね。いや、私はビートルズの歌詞とかわかんないから出来ないけど、例えばスピッツだったら完全にやりますよ。まぁ自分じゃ歌えないから楽曲提供とかして印税でがっぽがっぽ......。
......なんて私なら考えちゃいますが、ジャックはあくまでミュージシャンになるという夢を叶えるためにビートルズの曲を使ってしまいます。しかし、そうして分不相応な階段を駆け上がるうちに葛藤に苛まれたりもする。
その辺にどう落とし前を付けるのか......?というところに関しては、やや甘すぎる気もしましたが、そこはもう、ファンタジーというか、おとぎ話のようなものですのであまり突っ込むのも無粋でしょう。
一方、そうやって夢を手に入れていくのとは逆に遠ざかってしまうのが幼なじみでマネージャーのヒロインの愛しのエリーちゃん。彼女に対するジャックの態度はもうめちゃくちゃ情けないものですが、そこに共感がハンパない。ただ流されるばかりでお互いの気持ちを上手く測れない感じ。そして、そこからの切なすぎる展開は王道にして最強に泣けますよ〜。ああいう恋愛モノに非常に弱いのでちょっとメンタル死にそうになりながらもクセになっちゃいます。
だって、こんな気持ち、どうすればいいのさ!!!だああぁぁぁ!!!ちくしょう!!!
(というか、エリーちゃんまさかのベイビードライバーのデボラちゃんの女優さんだったんですね。人間の顔を髪型でしか判断できないので気付きませんでした......)
でも、エリーちゃんめちゃくちゃ魅力的でした。トンネルのシーンとか可愛すぎるでしょまぢムリ......(>_<)
作中で使われるビートルズの曲は、最初の方はライブのシーンなら激しい曲、ギャグのシーンではギャップを狙って名曲を......みたいにシーンに合わせて使われていたのが、終盤になるとだんだんとジャックの心情に寄り添うような選曲になっていきます。
ビートルズの叫びを等身大なジャックの叫びに再解釈してハードなサウンドで掻き鳴らしたあの曲......愛の落とし前を付けるのに最適すぎるあの曲......。この辺になるともう今までそんなに気にしてなかった歌詞がすぅ〜っと入ってきて私の強固な涙腺ダムもついに決壊の時を迎えましたね。はい。
あと、極め付けは"あの"サプライズ。
ネタバレなしには多くを語れませんが、あのシーンのあのメッセージがめちゃくちゃ優しくて暖かくて素敵で、でも私にはどうも手の届かないものでもありそうで、またちょっとかなり泣けちゃったよ......。
このメッセージが、今改めてビートルズについての映画を作ることの意味になっていますからね。まさに、愛こそすべて、ですよね。うん。
他にも、エド・シーランの面白さとか、ファザー・マッケンジーに爆笑とか、ジャケ写はあかんのかい!とか、もう全部のシーンが笑えたり泣けたり音楽にアガったりできるめちゃくちゃ楽しい映画で、やっぱ映画館で見れてよかったというか機会があればもう一回見に行きたいまであるぐらいハマっちゃいました。
最高。
以下ひとことだけネタバレで。
うん、ビートルズがいなかったら、ジョン・レノンは死んでなかったかもしれないんですよね。
すぐこういうこと言うのもあれですけど、この設定において説得力のあるサプライズという意味で特殊設定ミステリのような驚きも感じられて面白かったです。
と同時に、ジョンの語る言葉がこの作品の全てで、人生の全てでもある。幸せとは何か、というその答えが、でも実際にはとても難しいことでもあって、こんな生き方が出来たらなと憧れつつ、皮肉屋っぽいところにはニヤニヤしちゃったりもしてああもう!エモい!エモいとしか言えない!!
好きな人を大事にしようと思いました。