偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

抱きしめたい(1978)


1964年、ビートルズがニューヨークにやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!。ニュージャージーに住むビートルマニアの少女たちは、ビートルズが出演するエド・サリバン・ショーを観にニューヨークを訪れ、ビートルズが泊まるホテルに潜入しようと企てるが......。


U-NEXTで新規入荷作品を漁っていたら本作のタイトルとジャケ写を見かけて「ビートルズか!?」と思って開いたら案の定ビートルズな上になんとロバート・ゼメキス監督のデビュー作らしくてさすがに気になりすぎたので観ました。めっちゃおもろかった。

『イエスタデイ』(2019)や『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)など近年のビートルズ映画では、曲の使用料が高すぎてか演者によるカバーで楽曲を使用していましたが、本作の製作時は最近ほど原曲を使うのが難しくなかったのか、普通にビートルズの原曲がたっぷり使われていて最高でした(いや、カバーにも違った楽しさがあって良いんですが)。
殊に本作は作中年代がセカンドが出た直後くらいなので、初期も初期の楽曲ばかりが多数流れて、最近はけっこう初期が好きな私としては嬉しかったです。

余談ですが、ビートルズって、初期が好きな時期、中期が好きな時期、後期が好きな時期、みたいにローテーションしながらずっと聴けちゃうから良いっすよね。生まれた瞬間からもうすぐ31歳の現在まで飽きずに聴き続けれてるの凄すぎる。

まぁそんな感じでまずビートルズファンとして純粋に楽しい本作。メンバーも過去の実際の映像では映りつつ、作中では絶妙に顔が映らないような形で登場するのがまた面白いです。

内容としては、ビートルズ推しの女の子たちがビートルズの出演するテレビ番組の生収録を見に行こうとするもののチケットを失くしてしまって新たに入手しようと奮闘したり、メンバーに一目会おうと彼らの泊まるホテルへの潜入を企てたりするスラップスティックコメディとなっています。
とにかく主人公たちをはじめ、モブやエキストラみたいな人たちまでみんなビートルズに熱狂しすぎていてめっちゃ怖いしめっちゃ笑えました。今見ると誇張しているようにしか見えないんだけど、実際ライブでは演奏が聴こえないほどの歓声(否、怒号、悲鳴、絶叫)で失神する人も大勢いたそうなので誇張じゃなさそうなのがまた怖い笑。しかし良くも悪くもこれだけ人々が何かに熱狂できた時代というのが眩しくて一抹の羨ましさを感じずにはいられません。現代の私たちにこんなワクワクは一生訪れないでしょうから......。

あと逆にビートルズ嫌いな男たちが「イギリス野郎にアメリカの女たちが奪われる」みたいなこと言ってるのも今見ると馬鹿馬鹿しすぎて笑えてしまうけど当時もそういうこと言う奴いたのかと思うと怖いっすね。
ともあれ好きであれ嫌いであれビートルズのことで持ちきりな時代の空気が凄えなぁと思う。

まぁそんで、特にホテルに潜入しようとするパートに顕著ですが、なんかもうびっくりするくらい王道でベタなドタバタギャグが畳み掛けられてめちゃ面白かったし、なーんかもう笑ってこういうので良いのかもなぁ......と思わされました。人がぶつかったり転んだりするだけでこんだけ面白いんだからもうこれでいいよ......。

基本的には音楽の楽しさとギャグのおもろさだけで成り立っている映画なんですが、人間的成長とか切ない恋模様とかがそんなに描かれなくても、とにかく好きなものを追っかけるためにどこまでも愚かで真っ直ぐになれる彼女らのバカバカしさ自体になんか元気を貰えるし、熱中できる推しを失った自分のつらさも突きつけられて悲しくもなりました。
また終盤ではいちおうしっかりと人生の選択をしたり愛の片鱗に触れたりとグッとくる人間ドラマも展開される隙のない上手さはさすがです。
狂騒の終わりの切なさも少し醸し出しつつ、あの名曲でノリノリに終わるエンディングも素晴らしい。史実の中に一雫の嘘を垂らす結末も、やっぱ上手だよね〜。

まぁなんかそんな感じで、エクストリームにハイテンションなこと自体がバカクソ楽しくも推しの大切さを教えてくれつつ何よりビートルズって最高だよな!と再確認させてくれるビートルズファンにはたまらん映画でした。
あ、そういえば、作中でしっかり「ヘルタースケルター」とセリフに入ってたりする遊び心もやっぱゼメキス感あるよね。BTTFの元ネタみたいなシーンもあるし、ゼメキスデビュー作として観ても面白ポイント多し。