偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

英国式庭園殺人事件(1982)


1694年、イギリス。ハーバート家の屋敷に招かれた傲慢な画家のネヴィルは、ハーバート夫人から夫が留守にしている2週間ほどの間に、屋敷の庭園の絵を12点描くよう依頼する。
ネヴィルは高額の報酬に加え、夫人がいつでも快楽の要求に応じることを条件に仕事を引き受けるが......。

ピーター・グリーナウェイ監督の2作目の長編作品。

とりあえず、なんかアガサ・クリスティ原作の英国本格ミステリみたいな邦題のせいでミステリなのかと思ってたら全然違ったのにはちょい怒ってます😡
原題は直訳すると「製図工の契約」。
それを踏まえると、オープニングで画家のネヴィルが夫人と異様な契約を交わした瞬間にパッとタイトルバックが入る演出がめっちゃカッコいいです。

中世ヨーロッパの華やかな衣装や美しい庭園が映されつつも、描かれるのは下品な会話や狭い世界での思惑とか策略とか欲望とか嫌味とかそんなんばっかでうんざりします笑。
画家のネヴィルもゲスいんですが、貴族たちも嫌な感じでブルジョワってもんを痛烈に皮肉ってる感じが好きです。

次作『ZOO』ほど徹底してはいないもののシンメトリックな構図が多用される映像なんですが、物語もちょうど真ん中あたりで再びオープニングのタイトルバックが再演されるような構造になっているのが面白かったです。
また、結局殺人事件の真相はよく分からないままに突然な終わり方をするのも印象的でした。いや、ミステリファンなので謎ははっきり分かるように解いてほしいのはありますけど......やはり邦題が悪い。
あと全体に風刺コメディ的な雰囲気はあるんだけど、銅像に扮する人だけそれにしてもコミカルでなんだったんだ......という感じ。あいつがいることでなんか嘘くさくなって本作自体が人工物であることを強調してるのかな、という気もしなくもないが......。