先日読んだ歌集『アーのようなカー』の著者によるエッセイの短歌添えのZINEです。

生活は腐敗との戦いだから
米を炊け炊け生活フォーエバー
タイトル通り、死ぬまで続いて行くし続いてしまう生活の中のしょーもなくて映画や歌詞にはならなそうな、だからこそ愛おしい場面を秋冬春夏と四季に沿って綴ったエッセイ集となっています。
とにかく題材がしょぼくて、ほとんど家と職場と西友が舞台で友達もいなそうで同居人のSくらいしか人も出てこない、それなのになんでこんなに面白いんだ???と読み進めるほどに狐につままれているような感覚に陥ります。
私も著者と同じでだらしない性分なのでほとんど内容には共感できるものばっかだったんですが、それだけに自分にも当てはまるようなことをここまで面白く書けてしまうのに嫉妬すら感じました。
なんせ「パソコンにコーヒーこぼしちゃった」とか「ルンバっていいよね」程度の内容しかないので、この面白さは純粋に文章のセンスだと思うんですよね。トホホって感じだしめちゃ庶民的でなんなら低俗とすら言えることばっか書いてあるのにどこか品があり、独特の視点がありつつ奇を衒ったり斜に構えた感じがなくピュアだったりするから安心して読んでいられるのも好きすぎます。
あとはまぁ特に好きな話についてちょこちょこ触れていきます。
とりあえず最初が「机の隅に物を置くからよく落とす」みたいなので、もう既に共感の嵐でした。
なんだろうね、私の場合端っこに置くと据わりが良い気がして端に置いちゃうっつーか、端っこ以外の場所におこうとするとどこに置いて良いのか分からなくて戸惑っちゃうんですよね。端というガイドラインが欲しい的な。
あとヨドバシカメラ地獄のやつもめちゃくちゃ共感した。私もガチャガチャした店に行くと気分悪くなってしまうので、ドンキも嫌いだしジャスコでも都会の大きくて圧の強いところはしんどいんですよね。なんか圧で疲れてへたり込みたくなってしまう感じ。近所のジャスコは昔からある寂れたところだし天窓があるから平気なんだけど。でもドンキとかもすごい混んでるからみんな平気なんですよねきっと......と思ってたので、同じような仲間がいて嬉しいです笑。
そのほか、ルンバの話はルンバを買ったわけですらなくただルンバってさぁ〜っていう雑談なのにめちゃくちゃ面白いのがズルいのと、後ろの方でスピッツ短歌があって「この人もスピッツ好きなのか!」と興奮してしまった。読んでる本の著者が思いがけずスピッツファンだと嬉しくなっちゃいますよね。あと他にもたまや最近聴いてるフィッシュマンズも出てきたり、ほぼうちの地元豊田市も出てきたりと、人としてダメっぽいところも含めて親近感が強かったです。まぁ冷静に考えたら短歌・エッセイ・土人形とジャンルを跨いだ創作・表現で全て私にドンピシャなものを作っている時点で親近感など覚えるには雲上人すぎるんですが......。
まぁそんな感じで、とにかく笑えるエッセイが読みたい人にはおすすめです!ちなみにもうすぐ著者の新作のエッセイ集が出るらしくてそれも楽しみなり。