学校ではいじめられ、家では狂信的な母親から虐待を受ける少女キャリー。しかし彼女は感情が昂ると超能力を使うことができた。プロムを目前にしたある日、彼女を虐めていたうちの1人であるスーはボーイフレンドのトミーにキャリーをプロムに誘うよう頼み......。
10年くらいぶり2度目の鑑賞。
冒頭、体育の授業のバレーボールでキャリーが全然打ち返せなくてチームの子たちから暴言を投げつけられるシーンがまんま私の高校時代の経験と一致してて、そこでもう引き込まれてしまいました。
そこからの、キャリーがシャワーを浴びるシーンの、明らかにペニスのメタファー以外の何物でもないシャワーを浴びてイキ顔してるキャリーという仄めかしから「女」になって......という流れの凄絶さでもう気が滅入ります......。
作品全体にも直接的にエロいシーンはないけどセックスの存在が強烈に匂っていて、そのことがただのオカルトホラーに止まらない不穏さや不気味さを醸し出しています。
ストーリーは、超能力少女が虐められ虐待されつらい思いをし続けた果てにキレる......という超シンプルなものなんですが、「超能力」という目を引く設定を終盤までは全く活用せずにひたすらキャリーの悲惨な日々を描いていくのが凄いよね。普通なら自身に芽生えた能力に悩んだり使い方を誤って暴走したりしそうなところ、そういうのはほとんどなくてただただキャリーを中心にしたハイスクールの群像劇で攻めてきます。
そんな超能力ホラー、ともすれば退屈になりそうなところを、シシー・スペイセク演じるキャリーのキャタクターの強烈さと、脇を固めるキャラクターたちの魅力でもって全く飽きずに観ていられるんですよね。
キャリーはもう半分くらいは顔なんですけど、可愛いけど怖いのがどんどん可愛くなっていって最後めっちゃ怖い!みたいな。しかし顔だけじゃなくて友達いない人特有のあの敏感さや卑屈さがとても身に覚えがあって「わかる〜」ってずっと思ってた。私がキャリーほど虐められなかったのはただ良い学校だったからだけなんだよな、ありがとう母校。
そして脇役ではトラボルタさんが出てるのにびびりつつやはりキャリーの母親が良い悪役すぎる。というか、初見時はとにかく死ねよこのクソババアと思ってたんだけど、いざ2回目観てみると私も大人になったからかこの母親の気持ちもだいぶ分かっちゃうんですよね。最後の独白とかしんみりした気持ちになってしまった。まぁそんでも娘に当たる時点で死んだ方がいいのは確かなんだけど。
中盤まではそんな感じの濃いキャラたちが淡々と人間ドラマを繰り広げていくわけですが、クライマックスに至って急にハイテンションになって演出面でもスプリットスクリーンや万華鏡みたいな映像など凝った技法が使われまくって、めちゃくちゃしんどい話なんだけど興奮しちゃう。これぞスカッとアメリカ!
最後の方はホラー映画のお約束みたいな感もありつつインパクトある映像でそれをやってるので強烈。まぁラストのくだりは個人的にはちょっと蛇足にも思えてしまいますが、、、。
まぁそんな感じで久々に観たけどやっぱり面白かったわ。デ・パルマ作品、他のもだいぶ昔に観て以来なのでこれを機に見返してみようかしら。
以下ちょっとだけネタバレ。
なんか昔観た時のイメージでみんな悪いやつだと思ってたらトミーとスーは本当に計活のこと知らずに善意でやってたみたいで驚きましたけど、正直それはちょっと無理がある気がしないでもない。というかずっとこいつらもグルだと思いながら観てたので、すぐには理解できなかった......。
最後母親がキリスト像と同じ磔刑の姿になるのは(ちょっとあざといけど)皮肉で良い。そしてキャリーがあんな母親でも最後まで愛していて彼女とともに死んでいくのがつらすぎる......。
最後のスーの悪夢のくだりは映像も不気味で面白いけどキャリーに焦点を当てた家の炎上シーンでそのまま終わっても良かった気がして、最後にいきなり別のキャラ主体になるのは蛇足な気がしてしまいました。