仏・マルセイユの自宅で回想録を執筆しているガルー。
かって外国人部隊所属の上級曹長だった彼は、アフリカのジブチに駐留していた。暑く乾いた土地で過ごすなか、いつしかガルーは上官であるフォレスティエに憧れともつかぬ思いを抱いていく。そこへ新兵のサンタンが部隊へやってくる。サンタンはその社交的な性格でたちまち人気者となり、ガルーは彼に対して嫉妬と羨望の入り混じった感情を募らせ、やがて彼を破滅させたいと願うように....。
Sight&Sound誌の史上最高の映画2022年版第7位ということで名前だけは聞いたことあった本作ですが、4K版となって日本初公開されるということで、日曜の仕事終わりに頑張って栄まで行って観てきましたよ!
いやもう、正直なところ全然よく分かんなかったけど、なんかめっちゃ良かった......。アホな感想ですみません。
アフリカのクラブ的なところで踊る男女、曲の中のキス音に合わせて踊る男も女に向けてキスをするところでパッとタイトルが出るオープニングからしてもうガンギマっててかっちょえ〜!と引き込まれました。
クラブのシーンの雰囲気とは対照的に本編はどこまでも青い青空の下で行われる外人部隊の訓練のシーンがメイン。映像は人物に寄り添わずにちょっと突き放したような距離感が感じられます。またナレーションはあるもののセリフは少なく物語性の薄いところも相まってどこかドキュメンタリーのような質感もあり、淡々としてともすれば眠くなりそうなんですが、映像と音の強烈さのせいで寝てる場合じゃなかった。
半裸みたいな男たちが色んなトレーニングみたいなことをしてるその肉体の躍動的な動きだけでもうずっと観ていたいくらい。特に、匍匐前進みたいな感じで低い所に張ってあるロープをくぐって進むシーンの、どこか虫とか動物を思わせる人体としては奇妙な動きを一人一人違うパターンで羅列したような映像がほんっとによくって、あそこだけでももっかい観たいな......。あと穴に飛び込んでからそっから腕力だけで上がってくるところも良かった。あれ、私はたぶん出来ないから「出来ない人いたら一生穴の中にいなきゃいけないの〜❓🥺」と想ったけど屈強な兵士たちが出来ないはずもなかったわ失礼しました。
そんな軍事訓練の光景は、殺伐としていそうで意外と楽しそうで、そこには実際に戦争が起きていなくて訓練だけしている状況の微妙な気抜け感とか、外人部隊特有の身寄りのない者同士が集まった家族のようなコミュニティの居心地の良さとかがあるんでしょう。めっちゃホモソな感じで苦手だなぁと思いつつも、なんかほっこりもしてしまった。
そんな男たちの世界が描かれる一方では現地の人たちの生活が時折それこそドキュメンタリー的に挿入されてきたりするのも良かった。暑く乾いた空気感が伝わってくるような現地の荒野の映像、一転して澄んだ海など、めっちゃ住みづらそうなジブチの地の光景そのものが美しかった。あとクラブのシーンではいかにもディスコな曲が流れるのに対してBGMはすげえ不穏なオペラみたいな曲っていうギャップも最高にイカしててゾクゾクした。
そんな感じで、ストーリーに頼らない(音も含む)映像そのものの快楽を味わえる映画なので映画館で観て良かったっすけど、ストーリーはストーリーで良かった。
なんせ説明が少ないからはっきりしたことは分からないんだけど、そもそもはっきりしていないような気もする主人公ガルーの上官ブリュノへの気持ちと、新人兵のサンタンへの苛立ち。普通こういう話って嫉妬を向けられるサンタン目線から描かれそうですが、そこを若く人気者の兵士に嫉妬を向けてしまう中年の兵士を視点キャラにすることで肉体の美しさとは対照的な人間の内面の弱さとか不完全さが描かれているようでギャップにため息が出る。
ラストシーンがまた強烈で、これってそういうこと......でいいんですよね......?「3人のうち1人が......」という序盤のモノローグがここで活きてきて皮肉めいた味わいもあり、儚く苦しくもどこか解放的でもある、複雑な余韻が残る終わり方。しかしあんなのがカッコいいのがドニ・ラバン凄い。