地図にない森に迷い込んだ女性ミナ。森の中のマジックミラー張りの小屋に辿り着いた彼女はそこに滞在する3人の男女と出会う。彼らは昼の間に食料を調達し、夜は小屋に閉じこもって身を守る。毎日夜になるとやってくる"ウォッチャーズ"たちから......。
というわけで、敬愛するM・ナイト・シャマラン監督の次女、イシャナ・ナイト・シャマランの監督デビュー作。
なんつーか、良くも悪くもだいぶMナイトに寄った作風で、それ故に嫌いにはなれないんだけど、なんせ悪いとこまでそっくりなので、「あー、まー、そーよね......」という感じでした......。
とりあえず森の中にあるマジックミラー号......じゃなくてマジックミラー小屋と、毎夜毎夜そこを訪れる"奴ら"......という設定の魅力は素晴らしく、予告編を観た時点で「へーおもしろそー観に行こー」と思わされました。また中盤まで奴らの姿が見えず目的も正体もわからない不気味さでしっかり怖がらせつつ(ちょっと音でビビらせる演出も多いのは嫌ですけど)、後半は思わぬ展開になってなんだそりゃと思いつつもなんだかんだいい感じにまとまるあたりの構成もまぁしっかりしてて、少なくともMナイトのよく分からん近作よりは面白かったです......。いい意味で「イマドキそんなんやる〜?」みたいな古典的なネタを、マジックミラー号とかリアリティショーみたいな袋に移し替えて現代風にアレンジしてるあたりもまぁ面白い。
登場人物たちが、衝突することはあってもみんな基本的には善人で悪い人が出てこないあたりもMっぽく、主人公のトラウマとの和解を主軸に据えながら他のキャラクターたちも作中では掘り下げないながらもそれぞれの事情をチラ見せして愛着を沸かせてくるあたりもらしいよね。
ただ、それはそれとしてとりあえず小屋での暮らしに対して「風呂とかトイレとかどうしてんの?」レベルのツッコミどころが無数にあって、まぁトイレはその辺ですりゃいいにしてもなんで風呂もないのにそんな小ざっぱりしてるんだ......というのが気になってお話に集中出来ないほどでした。まぁそれは大袈裟にしても、中盤で出てくるあれとかもいちいち「それどうなってん?」みたいな雑さがあって脱力......。
終盤の展開もよく言えば二転三転だしテーマ的にも必要ではあると思いつつも、1番いいとこが終わってから意外と長く引っ張られるので「あれ、終わるの?まだ終わんないの?」と微妙にダレてしまいました。
そんな感じであんま褒めてないけどまぁでもやっぱり憎めない作品であることは違いなく、Mともども今後の活躍にも期待したいです。
以下ネタバレ。
小屋で主人公が観ているリアリティショー番組やインコ(?)の声真似が"奴ら"のやってることの伏線になってるのは面白かったけど、リアリティショーが出てきた段階でなんか『NOPE』みたいに観ることの加害性みたいな話に繋がるのかと思ったらそんなこともなくただ妖精さんたちが人間観察してましたってだけだと薄く感じてしまうのはある......。
そもそも一度入ったら容易に出られない森にどうやってあんなハイテク小屋建てたんだとか、教授の奥さんって病気で死んでるはずなのに本人いなくてどうやって擬態したんだとか、色々と気になる点が多すぎて夜も眠れない。
あとキアラは夫を失ってすぐにダニエルといい感じになるな、というのはちょっとモヤモヤする。
しかし、いわゆる悪趣味な大富豪たちが趣味で人間集めて遊んでるみたいな話になりそうな雰囲気からのまさかの妖精さんだったという飛距離はなかなか面白かったし、前半は姿が見えないことが怖い奴らが、後半ではその奇怪な姿で怖がらせてくる二段階恐怖も素晴らしい。
ストーリー的には、最終的にこの出来事が主人公が自身の罪と向き合うきっかけになるとともに、妖精たちの中でのマイノリティだったマデリンが人間という新しい居場所の可能性に気付くという希望を感じさせる終わり方は(近年の重たい映画を見慣れていると甘すぎに感じるものの)なかなか良かった。