偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

アメリ(2001)


空想が好きで人と関わるのが苦手なアメリ。しかしある日おせっかいから人を幸せにする喜びに気づき、やがて自身の幸せを求めて駅で一目惚れした青年に遠回しすぎるアプローチを仕掛けるが......。



たぶん10年ぶりくらい2度目の鑑賞。
ポップでキュートでおしゃれだけどちょっと毒もある不思議ワールド全開で、とても面白かったです。

ストーリーの大筋としては奥手というか恋をすることに踏み切れない主人公のアメリが一目惚れした青年に"出会う"までの迂遠な紆余曲折を描いたもの。
なんせ普通の恋愛映画なら冒頭10分くらいで済むことに映画一本まるまる費やした作品なので、まぁやきもきさせられることよ!宝探しゲームみたいなこと仕掛けたり秘密のメッセージを送ったりして、気になる相手に声かけるためだけにスパイ映画みたいな無駄な心理戦を繰り広げるので焦ったいったらないんですけど、その自意識と臆病さには恋愛初心者だった頃の自分を彷彿とさせられて「わかるわかるよ」と見守るような気持ちで観ました(初心者の頃と書きましたが、今が上級者というわけではなくドロップアウトしただけのことです)。
また本筋である主人公アメリの恋模様に関しては恋愛以前みたいな内容ではあるのですが、脇役たちがまたそれぞれ魅力的で、群像劇みたいにも観られます。特に登場シーンは短いけど宝箱と再開するおじさんが印象的でした。あとドワーフくんが可愛い。

そしてなんと言ってもそんなキュートで優しくもちょっぴり毒もあるストーリーを描く映像や演出が最高です。
緑と赤を基調としたもはやほとんどツートンカラーみたいな映像は、序盤では緑多めなのがアメリが恋と向き合おうとする後半になるにつれて赤の割合が増えてより情熱的になっていくのが良かった。
またギミックが詰め込まれまくってるアイデア満載の演出も楽しくて、大きなことは起こらないストーリーながらも常に変なことが起こってるワクワク感があり楽しいです。
なんとなくですが、外堀を埋めまくるところといい、小ネタの連発や現実より少しだけファンタジックな世界観といい、森見登美彦の作品を彷彿とさせるところがあり、森見ファンの私としては大好きな雰囲気でした!