なななんと、前回のC.M.Bの記事からほぼ3年、Q.E.Dで言えば5年ぶりの「全巻読破計画」の続きでして、もはや全巻読む気がほんとにあるんか!?という感じですがまぁ今後も頑張ります。
というわけで、いよいよQ.E.Dファーストシーズン完結の50巻まで。と言っても、普通にそのまま「Q.E.D iff」に続くので何ら最終回らしさもなくいつも通りのエピソードが並ぶだけですが、まぁいつも通りがいつも通りに面白いので大満足です。
それではさっそく各話感想!
てか久々すぎてこのシリーズの記事だけこのブログでは例外的に採点をしてるってことも今思い出した......。
(各話採点基準↓)
★1 →→→→→いまいち
★★2 →→→→まあまあ
★★★3 →→→普通に面白い
★★★★4 →→とても面白い
★★★★★5 →めっちゃんこ面白い
41巻
「バルキアの特使」★★2
バルキア共和国で移民排斥政策により3万人の虐殺を引き起こしたスワミ前大統領がベルギーで逮捕された。自国でスワミを裁きたいというバルキア出身の友人の頼みでバルキア側の代理人となった燈馬。しかし、ベルギー側の代理人は森羅だった......。
『C.M.B』19巻の「大統領逮捕事件」と対になるコラボ作品。
C.M.B側のお話はかなり面白かった気がするんですが、こっちは正直そんなに......。
やっぱり森羅くん側から見れば燈馬くんは最強の敵だけど、燈馬くんからしたら従兄弟の子みたいな感じであっちサイドほどの緊張感はなく、燈馬くんの冷静なところも森羅くんと比べちゃうと物足りない気がしちゃいます。
事件の真相も事件の内容に対してシンプルすぎてちょっと物足りない気もしちゃうし、裁判シーンは正直国際法とかまるっきり知らないのでどこまで本当なのかもよく分からず、全体にちょっと消化不良な感。
「カフの追憶」★★★3
かつての知人のリンに、服役中の夫カフを助けてやって欲しいと頼まれた燈馬。面会するとカフは自身の無実を訴え何者かに嵌められたと主張するが、燈馬は彼の話からある真実を見抜き......。
アメリカのミステリ映画にありそうな、刑務所で囚人と面会しながら事件について推理するという形式が懐かしくて好き。また、事件そのものに加えてカフとリンの「予知能力」という特異なものが絡んだ馴れ初めなどの半生記としても面白い。
真相はちょっと「えー?」って感じもあるものの、謎の男の正体が明かされるところとか鮮やかで良かった。
42巻
「エッシャーホテル」★★★3
玉の輿で大富豪になった美女エリが建てたエッシャーの作品をモチーフにしたホテル。しかしそのお披露目パーティーで取材に来た貴社の男が殺された。エッシャーの無限階段を立体化した、首など吊れるはずもないオブジェの上で......。
まずはエッシャーがモチーフのホテルという奇抜な設定が魅力的。
過去の事件と現在の事件とが語られますが、そのそれぞれにエッシャーというモチーフならではのトリックも仕掛けられていて(モチーフがあるだけに分かりやすくはあるものの)面白かった。
なんとも切ない余韻も好き......。
「論理の塔」★★2
燈馬の旧友で技術者のミアは、開発に成功した高性能CPUを爆破予定のビルに隠し、自分を苦しめた上司や恋人、信頼する同僚と謎のバイカーの男にその場所を探すヒントを授けた。しかし彼らが持つヒントは互いに矛盾だらけで......。
論理パズルを爆破寸前の高層ビルに仕掛けるという大胆な謎は面白いけど、パズルの答えはなんか納得がいくようないかないような微妙な感じだったのが残念。
43巻
「検証」★★2
製薬会社の社長が殺され、アリバイのない娘婿が逮捕された事件。燈馬たちは事件の検証番組のロケに参加し、事件当日に社長宅に招かれた他の人物たちに犯行の機会がなかったかを探るが......。
これはなんか微妙......。まず検証っていう設定がそんなに活かされていない上にテレビで実際の事件をこういうふうに検証するっていうのもリアリティが薄い。
また、事件の真相に関しても(ネタバレ→)普通に侵入できそうなのにハナから外部犯の可能性が考慮されていないのが不自然で、実際そのとおりだったので「だろうと思ったよ」という感じでした。
「ジンジャーのセールス」★★★3
ひょんなことから銀行の投資先の監査を手伝うことになった燈馬に、融資を求める宇宙開発会社が雇った天才セールスマンのジンジャーという男が新開発の宇宙船のセールスをかけてくる。しかし宇宙船は実際には完成しておらず......。
天才セールスマンのジンジャーというキャラクターがとても魅力的で、彼にある程度肩入れして読まされるだけに燈馬くんが古畑任三郎に見えてしょうがないんだけど、倒叙に近い話かと思わせて思わぬ真相が出てくるあたり面白く、ただでさえ魅力的だったジンジャーというキャラに読み終わってさらに愛着が湧いてしまいました。
44巻
「チューバと墓」★★★3
探偵同好会の3人はひょんなことから殺人現場を目撃し匿名で警察に通報する。しかし、犯人が遺体を隠したと思われる倉庫の中にはチューバと墓があるだけで遺体は見つからず......。
このシリーズ読むの久しぶりすぎて「そういうばこいつらいたなぁ」と懐かしくなる探偵同好会の出演作。
倉庫での自体消失という現象が奇術のように鮮やか。それだけにそのトリックにはなかなか無理があるんではないかとも思ってしまうけど((ネタバレ→)さすがに警察の目の前でそれは厳しくないか?)、シンプルなところは好き。
「Question!」★★★★4
離婚調停中の2組の夫婦と燈馬らは謎の招待状で山奥の別荘に招待される。彼らにはそれぞれ「Question!」と書かれて奇妙な問題が記されたカードが届いていて......。
ミステリ的にというよりは離婚調停中の夫婦たちの人間ドラマ的な面がですが、かなり好きな話だった。
とりあえず別荘にそれぞれが違うクイズを携えてやってきた人々が宝探しの如くその答えを探すゲームみたいなところにワクワクします。一方で夫婦が互いに自分の主張ばかりをしているギスギスした感じが気楽なゲーム感と釣り合わなくてそのギャップの奇妙さも好き。
フェルマーの大定理をはじめ数学ネタがこれでもかと詰め込まれていて、正直何を言ってるのか全く分からないけどなんか凄い......という、燈馬の演説を聞かされる作中キャラたちと似たような気持ちにさせられました......。
45巻
「金星」★1
学生アパートの自室で大学生の男が撲殺され、恋人の女が逮捕された。しかし、彼女は無実を主張し......。
とりあえず真相があまりにも分かりやすすぎてもはや事件が起こると同時に分かってしまうし、これで状況証拠だけで恋人を疑う警察もさすがに無能すぎる......。
動機に絡む人間関係もベタだし、犯人の動機を押し出してるけどいまいち何が言いたいのかよく分からず、作中作の絵本は良かったけど内容の絡ませ方もそんなにで、全体にイマイチ。ただこんだけシリーズが続いてたらまぁこんくらいの話もあってくれないとかえって怖いけどね。
「初恋」★★★3
学校一の美少女に告白されて付き合うことになった冴えない少年。しかし、彼女を自宅に招いた日、ベランダに彼女のストーカーだった先輩の死体が現れ......。
どいつもこいつも怪しいこんがらがった状況が面白く、美少女の大変さを思い知らされます。
そんな複雑な状況からシンプルな真相が取り出されるあたりも好きなんだけど、ちょっとダミーのトリックが魅力的すぎて真相が霞んじゃう感はなくもないかな。
そしてタイトルの初恋の結末がまた良いですね。男子の恋は顔から入るもんだけどやっぱそんだけじゃあかんよね。
46巻
「失恋」★★★3
寄席の楽屋で500万円の盗難事件が起こるが、被害者のベテラン落語家は犯人を探すつもりがなさそう。前座の猫柳あやめは知人の可奈を通して燈馬に事件の解決を頼むが......。
若い女性の落語家あやめちゃん視点で語られる寄席の裏側がまず面白くて、テレビに出るとか落語じゃなくてお笑いの方が売れるんじゃないかみたいなイマドキっぽい葛藤もリアルで良い。
事件の真相については想像通りで全く意外性は感じなかったですが、そこからタイトルの「失恋」に至る若いあやめちゃんのほろ苦くも一つ成長したような顛末がとても良かった。あと、師匠の言葉が素晴らしい。
「巡礼」★★★★★5
校正者の内堀小雪はノンフィクション作家だった亡父の書斎から出版されなかった原稿を見つける。
原稿は、1941年、雨水という男が、妻を殺した強盗・山井の裁判で証言台に立ち「彼を死刑にはしないでください」と言い放った出来事についてのもので......。
QEDシリーズの中でも名作と名高いエピソードですが、評判通りめちゃくちゃ良かったです......。
まず「なぜ妻を殺した男を救ったのか?」という謎そのものがあまりにも強烈です。
さらに、雨水が辿った累計2500kmの巡礼の旅路の壮大さも凄くて、その辺の事件のあらましを聞くだけでいつにないシリアスさに引き込まれてしまいます。
そして燈馬が辿り着く真相らしきものには唖然としつつ戦慄しちゃうし、読み終わってみればまぁそういうことだよなと思うのに読んで間はまさかそこまですると思わず全然予想も出来ないのが凄かった......。
あと、雨水という男の物語であると同時にそれを追いながら最後の最後で確信が持てずに没にしたドキュメンタリー作家の矜持の物語でもあり、この短さで驚愕の真相のみならず人間ドラマまでどんだけ詰め込むのよ、ってとこも凄い。
読後「巡礼」の重みを感じつつ、重い余韻を振り切るようなラスト1ページがまた良い。
47巻
「陽はまだ高い」★★★3
バリ島にあるギーデル博士の研究施設で機密資料の盗難事件が発生。施設は厳重に管理されているため内部犯の可能性が濃厚な中、博士は3人の研究員それぞれに犯行の機会があったと燈馬に語り......。
まずバリの美しいロケーションが良いっすね。
自由人な博士のキャラが魅力的だけど私みたいな宮仕えの身には秘書の苦労の方が共感できてお疲れ様です......と思っちゃう笑。それはさておき、各人が犯人の可能性を挙げながらも最終的にはシンプルなトリック一つが決め手になるのが好きです。そして最後まで読むとやっぱ改めて博士のキャラクターに魅了されてしまう。
「坂道」★★★3
可奈の旧友でモデルのアキは、中学時代にゲーム機の盗難事件の濡れ衣を着せられたところを可奈が信じてくれたことで救われた。しかし同窓会で再会した可奈は、その時自分がどうしてアキの主張を信頼したのか覚えてないと言い......。
まず海と坂の町の美しいロケーションが良いっすね。
珍しくがっつり可奈ちゃん回なのでファンとしてはめちゃくちゃ嬉しく、中学時代の彼女の友達想いで真っ直ぐで正しいところが美しくてもう、改めて惚れ直してしまいました。ゲストキャラのアキにも愛着が湧きつつ、可奈ちゃんの魅力もがっつり再確認できる良い話。
中学時代のゲーム機盗難事件と、再会してから現在に起こる事件とから成る全体の構図が面白いし、(ネタバレ→)坂の町のロケーションを利用したトリックもなかなか好きです。
48巻
どうでもいいけど、前巻まで冒頭のキャラ紹介ページの絵が1巻の頃のままだったんだけど、この巻から新しいものに変わってて、「あと3冊で終わるのに今更......」と思ってしまいました。
「代理人」★★★3
人嫌いの大人気作家・世見の担当エージェントが殺害された。出版社は代理として新人編集者の星子に原稿を取りに行かせるが、作家は「犯人を突き止めたら原稿を渡す」と言い出し......。
ゲストキャラの新人編集者・星子さんの悩める新社会人的なキャラが良い。
殺人事件を扱いつつもそのトリックとかではなく、「何が起きているのか?」がよく分からない......という謎も魅力的だし、たった一つの真実から全てに説明が付くのも綺麗。また序盤の軽さからは一線を画した嫌な感じの結末も良いですね......。
「ファイハの画集」★★★3
アランとエリーの夫妻が学費の援助を決めていたモロッコの少女ファイハ。しかしそうとは知らずヨーロッパへ稼ぎに出ようとして乗った密航船から姿を消してしまい......。
このシリーズを読むのが久しぶりすぎて「アラン、いたなぁ......!」となってしまった笑。
そんなアランたちご夫妻は今回は脇を固める役で、主役は貧しい少女ファイハ。勉強したい、絵を描きたい、でも家が貧しくて......という彼女の大冒険にはハラハラさせられます。
ミステリ的には正直ネタが細かくて見どころは少ない気がしますが、少女が最後にくだす決断が印象的で、ラスト1ページのなんとも言えない余韻に浸りました......。
49巻
「無関係な事件」★★★3
就活生の笘篠はスマホで香港のマフィアの抗争事件のニュースを見た。自分とは無関係だと思っていたこの事件が、ひょんなことから彼の身に降りかかってきて......。
日本の普通の青年が香港マフィアの抗争に巻き込まれるというスリリングな展開がとても面白かったです。彼の友達が絶妙にウザいけど憎めない奴で好き。
そして燈馬くんによる解決がめちゃくちゃカッコよくて見直したぞ!
トリックはまぁシンプルすぎるきらいはあるけどストーリーがてんこ盛りなので物足りなさは皆無です。
「ラブストーリー」★★★★4
45年前に大学の映研で撮影された1本のラブストーリー映画。しかし、それは監督の蒲田が編集せずに未完のままに終わってしまった。そして現在、老人になった蒲田は、主演女優にそっくりな可奈をたまたま見かけて45年越しに映画を完成させることを決意するが......。
私も学生時代映研だったので映研が出てくるだけで点数があがっちゃうきらいはありますが、それを置いといても良い話でした。
学生時代に完成させられなかった映画を編集し直す、というエモい発端からまさかの展開、そして燈馬くん映画まで作れるの!?という大活躍、学生映画ならではのゆるさの愛おしさなど見どころたっぷり。
燈馬くんによる解決はミステリとしてはいわば投げっぱなしみたいな感もあるんですが、ここまでのお話があればこそ、これが正解だよ......と納得させられるのが凄い。
私も、映画、撮ってれば良かったなぁ。
50巻
「観測」★★★★4
燈馬のMITでの友人サリーの会社で製造した冷却器が各地の観測所で不具合を起こす事件が続発。しかし、現場は侵入や脱出不可能な密室状況の場所ばかりで......。
いやぁ、これは、良いっすね......。
何より燈馬くんの旧友のサリーちゃんが可愛いすぎるのに尽きますね......。
いや冗談はさておき、大仕掛けというわけじゃないけど意表をつく密室トリックがそれぞれの事件で使われていて、犯人の意外性もありつつ犯人がその人であることがサリーちゃんの物語として必然的でもあり、そこから切ない余韻の残るラストまで、青春モノとしてもミステリとしても見どころしかないお話でした。
「脱出」★★★3
何者かからの謎の手紙により脱出ゲームを作ることになった可奈。やがて招待客が現れゲームが始まるが、その裏にはかつて起きた殺人事件の存在があり......。
シリーズ最終話とはいえ「iff」に続くから最終話らしさは皆無で普通にいつもの1エピソードに過ぎないんですが、普通に好きです。
まずは脱出ゲームそのものが本編ではなかなか使えない軽いクイズの没ネタ投入回みたいになってて一緒に考えながら読めるのが楽しい。
そして、過去の事件の密室トリックも良いですね。
まぁ、このためにここまでするか!?みたいな無理筋な感じはなくもないけど、ここまでやっちゃうところが好きでもあります。