偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ヴィレッジ(2004)

ホラーミステリーのような寓話のような不思議なお話です。


舞台は周りを森に囲まれ外界と遮断されたとある村。
お墓の周りに集まる人々の映像から物語は始まります。墓石には「ダニエル・ニコルソン 1890-1897」の文字。7歳で亡くなったこの少年の死をきっかけに、村には異変が起こりはじめます。村に言い伝えられる「森に棲む怪物」の気配が濃く漂うようになったのです......。

冒頭から不穏な映像と台詞で観客の心もこの村へと連れていかれます。
どうやら村は何らかの理由で自ら外界との接触を絶っているようですが、果たしてそれは何故なのか......?そして動物が殺されるなどの奇妙な出来事は森の怪物の仕業なのか......?そもそも森の怪物とは......?
そんな疑問をこちらに投げかけたところで、今度はメインキャラ達が続々登場しますが、彼らもまたクセのある人ばかり。

主人公である盲目の少女アイヴィーは、恋人の好青年ルシアスと幸せな日々を送っています。一方でルシアスの友達で知的障害を持つノアは友達の彼女であるアイヴィーに好意を寄せていて......。

主な登場人物はこの3人ですが、危うい関係の彼らに中盤で訪れる急展開にまずは驚かされます。何が起こるかは書きませんが、逆にわざとらしいほど淡々とあっさりと映されるので思わず「えっ?」と言ってしまいました。
そして、そこからストーリーが動き出すのです。

外にいる悪い人たちから隔たったユートピアであるはずの村。しかし、その中で悲劇が起こったことでアイヴィーは村への疑問を抱くようになります。そして、彼女はある目的のために森を抜けて街へ出ることを決意します。
盲目の彼女は危険な森を抜けて街へたどり着くことができるのか......?

というわけで森を抜けるシーンが本作のホラーとしての最大の見所だと思います。不気味な森と不気味な怪物......。そして何よりも"ある点"がはっきり明かされないことによる心理的な怖さが後味悪いです。

そしてシャマラン作品ではおなじみのどんでん返しも本作にはあります。地味ながらなかなかヘンテコなネタなので全然予測することができませんでした。シャマランのどんでん返しはいつもそうですが、ただの驚かしではなくストーリーと密接に関わっている、なんならテーマを体現しているとすら言えるところが素敵です。

コテコテの村ホラーっぽいのにホラーメインじゃないあたりやどんでん返しのヘンテコさが賛否両論分かれる作品ですが、ホラー、サプライズ、ギャグ、ドラマ、全部揃った傑作だと思います。