偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜2021/11

今月の作品はこちら。
エレファント・マン(1980)
ファイト・クラブ(1999)
ハロルドとモード(1971)
エクソシスト3(1990)



エレファント・マン(1980)


母親が妊娠中にゾウに襲われ、特異な容姿で生まれてしまった"エレファントマン"ことジョン・メリック。
外科医のトリーヴスは見世物小屋で働かされていた彼を引き取るが......。


実話を元にしたお話らしく、ストーリーの流れはメリックの伝記のような感じなのですが、そこはリンチ監督、映像や演出がバキバキにカッコよくて、伝記なのに芸術的でスタイリッシュでした。

お話はなかなかしんどかったっすね。
メリックの穏やかで上品な人柄にだんだんと惹かれていってしまいますが、それだけに彼が受ける凄絶な仕打ちに苦しくなり、善意の人々のその善意の裏に隠れた見下す視線にも辛くなってしまいます。しかし自分も彼が実際に目の前にいたら対等に接する自信はないってのが1番しんどいっすね。
それでも、主人公の医師が「自分は善人か、悪人か?」と自問していたように自分を省みる姿勢は持っていたいですよね。

中盤あたりの、病院で保護されて幸せそうなメリックの姿と、「僕は人間だ!」という彼の悲痛な叫びが印象に残りました。


ファイト・クラブ(1999)


むか〜〜しむかしに観たんだけどアレ以外忘れてたので見返してみたらめちゃくちゃ面白かったっす。

冴えない不眠症野郎のエドワードノートンがどうせ寝れないしとプラプラしてたらワイルド野郎のブラピに出会って殴り合い同好会を立ち上げるという摩訶不思議なお話。

ブラピが出てくる前のノートンがプラプラしてるとこからしてもうめちゃくちゃ面白いです。ギミック入れまくりでスタイリッシュすぎて今見ると逆にちょっとダサく感じてしまいつつテンションあがっちゃう映像・演出が最高。
ブラピと出会ってからはもうジェットコースターみたい。殴り合って女とやって仲間が増えてっていうだけなんだけど一つ一つのエピソードがとにかく面白い。そしてイかれたブラピがカッコいい。
刹那的で退廃的なまでの破茶滅茶なお話なんですが、後半でとある仕掛けがあって、それ以降ちょっとホラーとかサスペンスみを強めていきます。若い頃はそこら辺のミステリ寄りの展開にヤラれましたが、今見るとむしろ青春映画としてエモくなっちまいました。
間が抜けていて、そのくせめちゃ美しくて泣きそうになってしまうラストシーンが印象的。そこにぬけぬけとぶち込まれるアレも。ブラピが演じるタイラーという男の言うことに理性では「いやいやいや〜〜」と否定しつつも感情がそのカリスマ性に惹き込まれてしまって恐ろしいです。生の実感とかなんとか、世紀末っぽい題材にも思えるけど、現在でもまだ全然切れ味を失っていなくてぶっ刺さりました。
昔見た最高な映画を見返すの楽しいっすね!


ハロルドとモード(1971)



自殺ごっこを繰り返す少年が自動車盗難暴走ババアと出会って惹かれていくお話!

なんか分かんないけどめちゃくちゃ良かったです。
冒頭の、ハロルドが気合入った首吊り自殺を披露するのにオカンがガン無視する場面からしてもう心を鷲掴まれて、このまま離さないで!ってなっちゃいました。
期待に違わず、人の車盗んで爆走するイカれたモードというお婆さんが現れるに至ってもう一人で爆笑の渦を巻き起こしてしまいました。
まぁ正直近所に住んでたらちょっと嫌だけど、映画のキャラってこんくらいぶっ飛んでてくれないと楽しくないっすもんね!
中でも笑ったのは白バイ警官の場面と、「ババアぶっ殺してやる!」の場面と、「スキヤキ」の場面。1人で観ながらうけけけけと笑うキモい人に成り下がりました。
そういう、奇妙なユーモアがありつつ、死に憧れる青年が死を受け入れる老婆と出会って変わっていく様を描いた真面目なドラマでもあり、ピュアな純愛ラブストーリーでもありと、ヘンテコながら色んな見所があって面白かったです。生きるということを知る、みたいな。
なんか郷愁を誘われる映像の質感や音楽も良かった!


エクソシスト3(1990)


原作者で『1』の脚本も書いたウィリアム・ピーター・ブラッティ氏、『2』を観てブチギレ。「俺が本当の続編を見せてやる......」と脚本監督兼任して撮ったのが、『1』から15年を経た正統続編の本作。
ちなみに『2』は観てないです。

猟奇的すぎる手口の連続殺人が発生。『1』に出てきた警部が捜査をしていくが、現場に残された指紋から犯人は同一人物ではない可能性が浮き上がる。さらに、過去の事件との関連も出てきて......。

という感じの、刑事ものミステリーの筋立てでほんとにこれエクソシストかよって思っちゃいます。
その事件っつうのが本当に胸糞悪いくらい残酷。映像で直接には映されないから、映像のインパクトに萌えたりすることもなくただただ胸糞悪いです。
そこから捜査をしていくうちに徐々に神父さんとかが絡んできつつも、まだまだエクソシスト感は薄め。
そこから色々あってかなり終盤の方でようやくエクソシスって来るのですが、その辺がもう最高!
宗教的な描写も濃密で、その辺は正直掴みきれない部分も多かったですが、禍々しさはしっかり伝わってきます。
そして映像のインパクトもヤバい。猟奇殺人があっさり描写だったわりに最後でいきなり本気出してきて、もはや笑いと紙一重のヘンな恐怖映像の連発に震えました。
これ観ると、ヘレディタリーがめちゃくちゃ影響受けてるんだなってのが分かり、アリ・アスターファンとしても嬉しみ。