偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜2021/1-2

今月の作品はこちら。

・A GHOST STORY(2017)
・キング・オブ・コメディ(1983)
ショーシャンクの空に(1994)




A GHOST STORY(2017)


あけおめことよろ〜💕

さて、新年一発目は元旦の早朝に観たこいつです。

若い夫婦が郊外の一軒家に引っ越してくるんだけど夫が死んでシーツかぶった有令になっちゃうお話ですね。

ジャケ写からこの幽霊くん子供がシーツかぶって遊んでるようなイメージだったけど、実際は中身がケイシー・アフレックなのでそこそこ長身。そこにいるだけで存在感がヤバいです。

内容はというと、(ホラーの棚に置かれてるけど)詩的で哲学的な映画です。
生前の場面は最低限しか描かれず、そこでピタッと綺麗に彼らに感情移入することは出来ない。その余白のおかげで、逆に観る人によってどうにでも感情移入出来るようになってて上手いと思います。

音やセリフ、なんならBGMもあるんだけど、全体にめちゃくちゃ静かで観てる感覚としてはサイレントに近い印象。
その中で悲しみのズンドコで呆然としたようにパイを食うシーンが数分続くなど、ほぼ固定カメラによるリアルな間の長さの映像が続くのが、わざとらしく泣き叫ぶよりもよっぽどヒシヒシと悲しみを伝えてきます。

後半はまさかの超展開。キモいおっさんの演説が物語を読み解く鍵になってるあたりはなんとも脱力しちゃうけど。泣くしびっくりきて引き込まれたし。映像ならではのワンダーによって一気に共感させてくるあたり見事です。
この辺の解釈についてはいろいろありそうですが、いずれにせよ、もはや愛とは呼べないような何か大きな感情。永遠と刹那と、宇宙と私と、なんだかそういうミニマムでありながら壮大な感動に包まれる哀しくも優しい映画でした。好き。


キング・オブ・コメディ(1983)



コメディアンを夢見る主人公のルパート(デニーロさん)が、憧れの大物コメディアンをストーキングするお話。


ちょっと前に観た『ジョーカー』のオマージュ元......というよりはほぼ原作と呼べるくらい影響を与えてる作品。

ただ、誰もが共感してしまう『ジョーカー』のアーサーに対して、本作のデニーロさんには全然感情移入できないんすよね。
ほんとうに、ヤバい人がヤバいことをしでかすのをただ観てるだけのお話。話が通じなすぎて怖いんです。そのくせ行動力はめちゃあるし。
怖いのが、彼とは別にもう1人ヤバい人が出てくるところで、外見はめちゃ美人なんだけど話が通じなすぎるんですね。
話が通じない2人が会話するともう全然わけわかんなくてなんか良さがありました。

どちらかというと彼らと関わることになってしまう脇役の人たちに共感しちゃうんだけど、病気の人を見下す気持ちを表には出さずとも共有しているような嫌な気まずさがあってヒリヒリしました。
どういう感情になっていいのか分からないのに何故かやたらと引きつけられて目が離せない映画。


ショーシャンクの空に(1994)


無実の罪で刑務所に入れられた主人公のアンディの30年あまりにも及ぶ刑務所暮らしを、同じ服役囚で親友のレッドの視点から描いたドラマ。


ほんとに今更ですが、ようやく観ました。
もう、こんだけ名作と名高い作品ですから、観る前から面白いことは決まってるようなもんですが、案の定面白かったです。
主人公たちと喜怒哀楽を共にする、贅沢すぎる物語体験。

とにかく一つ一つのエピソードが良い。それに尽きます。
屋上の修理のシーンをはじめ、つらい刑務所生活の中で少しだけ空気穴が空いて閉塞感がなくなるようなエピソード。
あるいは、最初の処刑シーンなどの閉塞感を増すようなエピソード。
それらが連なって、一喜一憂と言いますか、上がったり下がったりの感情のジェットコースターに乗せられちまいます。
140分超の大作にして、このジェットコースターの速度に乗って一気に観ることができて、だんだんじわじわとキャラクターたちに愛着を感じてしまって、起承転結の転くらいからはもういつでも泣く準備は出来てますといった体たらく。
個人的には図書館のおじいちゃんと、田舎のヤンキーくんが好きでした。

そして準備しといた甲斐があって、最後はエモ泣いちゃう。
しれっと張られたあの伏線を回収するところとか、ぞわぞわしました。
主人公がカッコ良すぎるのと、モーガン・フリーマンが別にカッコ良くはないけど謎の良い味を出しすぎてる!

人間としての誇りと、希望。
つらい場面も多すぎてハッピーエンドとは言い切れないですが、それでもそれらを見せてくれてほろ苦くも痛快な余韻を持って観終わりました。


..... と思いきや、クソしょーもないオマケ短編が入ってて、短編の割に長いんだけどめちゃくちゃ笑いました。
こういう大学生の悪ノリみたいな話大好きなんですよね。