偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜2022/12

こんにちくわ!
来年は、というか先駆けて今月から、「映画を観よう年間」ということに自分の中で決めちゃったのでまたふぇいばりっと映画のコーナーを復活させようと思います(いちおう偽物の映画館なので)。
相変わらず基本Filmarksに書いたのの転載とたまにネタバレ追加くらいでゆるくやってくのでよろしくお願いします〜。


今月の作品はこちら〜
・自由を我等に(1931)
・ル・ミリオン(1931)
或る夜の出来事(1934)
スミス都へ行く(1939)
天使にラブソングを(1992)
天使にラブソングを2(1993)


自由を我等に(1931)

自由を我等に(字幕版)

自由を我等に(字幕版)

  • アンリ・マルシャン
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刑務所で仲間だったエミールとルイは脱獄を企てるが、ルイだけが成功する。その後刑期を終えたエミールは一目惚れした女性が働く工場に勤め始めるが、その会社の社長はルイだった。2人は雇用者と労働者の立場を超えて友情を取り戻すが......。


サイレントからトーキーへの過渡期あたりの作品で、トーキーで物語を進めつつサイレントでギャグをやってちょいちょいミュージカルにもなるという折衷が今観ると新鮮で面白かったです。

建ち並ぶ煙突から排出される黒煙や、無機質な工場の建物、ベルトコンベアでの流れ作業などの無機質な映像が美しく、サイレントのギャグとして整然とした無機質さを崩す描写が多用されています。
また第2の主役であるルイが社長としては工場の機械化を進めるのに対し、友人のエミールといる時は子供みたいにきゃっきゃしてる(ここが可愛い)とこからも、機械と人間とか、効率化と人間性とかの対比を強く感じます。
その上でああいう結末になるのが好き。社会風刺っぽさもありつつ、あのラストシーンはもうシンプルに人間讃歌のようにも感じます。
というか、この時代に恋愛よりも男の友情が断然印象的な作品というのも珍しそうな気がします。エモい。



・ル・ミリオン(1931)


大勢のご近所さんに借金をしている画家のミシェル。金を返せと囲まれたところへ友人が宝くじの当選を報せる。これで一件落着、と思いきや、当たりくじを入れていたコートをチューリップおやじに盗まれていた!果たして当たりくじの行方は......?


『自由を我等に』に続いてルネ・クレール監督作。
くじの入ったコートを探す、という超シンプルな話なんだけど、コートがあちこちへ動き回り、探す側も主人公、友達、婚約者、愛人といてそれぞれの思惑とかもあって、簡単な話がどんどんこんがらがっていく面白さが味わえます。
常に誰かが誰かを追いかけてるみたいな話なので、短いサイレントコメディが連なっているような感じでもあり、最初のアパートの中を追いかけっこしたり行進したりするシーンとかの映像的な面白さが凄い。楽屋のシーンが1番好きかな。手がぶつかるとこ。
やっと見つけたと思ったら逃げられたりとかの連続はサスペンスフルでもあり、意外とドキドキハラハラさせられてもしまいます。
話全体を象徴するような、「お金が全てじゃないとか言うけどお金はほしい」音頭がまた最高っすね。
たらっと観れてなんかすげえ心地いい映画でした。


或る夜の出来事(1934)

家出した金持ちの令嬢エリーと仕事を失った新聞記者のピーターがニューヨーク行きの長距離バスで出会い、反発しながらも徐々に惹かれあっていく......という王道ラブコメ

ローマの休日』のことをラブコメ映画の元祖的な作品だとばかり思っていた無知が恥ずかしい。ローマの休日にすら影響を与えたチョー古典ラブコメ

なんせ今観ても凄え良いんすよね。

世間知らずだけど気の強いエリーと世慣れたピーターの相性が良すぎる。
最初はピーターに軽くあしらわれて反発するエリーという水と油みたいな2人がだんだん水と塩くらいに混ざりやすくなっていくのにニヤニヤしちゃうしかあるめぇよ。
こんなこと言うと恥ずいけど2人が一緒に過ごす時間の全てが愛おしい!
"壁"、ドーナツ、ヒッチハイクなど、印象的な胸キュンシーンもてんこ盛りで老体に染みる染みる。特にヒッチハイクのシーンが可愛すぎて「うへうへうへ......」ってキモく笑いながら観てしまった。

そうしたキャラの抜群の良さももちろんですが、ストーリー展開も上手すぎる。
前半はニューヨークを目指すというシンプルな目的たったのが、中盤からは家出人のエリーに懸賞金が掛けられることでマスコミや賞金稼ぎから逃げるというサスペンスが生まれ、さらに終盤では恋のすれ違いが絡んできてめちゃくちゃヤキモキさせられるし手に汗握らされました。まさか90年前の映画をこんなに前のめりで「いやいやそうじゃないってば〜気付いて〜〜っ!?」と応援上映する羽目になるとは思わなかったぜ。
ローマの休日っぽさが強かったけど最後のアレは別の某名作っぽさもあって、後に与えた影響も相当でけえんだろうなぁと思う。

て感じで、90年前の映画でも「歴史的な」とか「後への影響が」とか抜きでただただ面白い!のでラブコメ好きな人は絶対観た方がいいです!

(ネタバレ→)ピーターがモーテルを抜け出したことによるすれ違いはベタだけど、そこから結婚式当日に至るまで細かい勘違いを重ねてすれ違い続けるのはもはやアンジャッシュで、脚本めちゃくちゃうめえなと思った


スミス都へ行く(1939)

とある上院議員が死に、代役として白羽の矢が建てられたのはボーイスカウトの隊長で政治のことには無知なスミス青年。実は悪徳政治家による利権を巡る陰謀で、何も知らない青年をイエスマンにしようという肚だった。しかし正義感が強く実直なスミスは政界の腐敗に憤り、自身の法案を通すために孤軍奮闘する......てなお話。

これも80年くらい前の映画だけど今観てもめちゃくちゃ面白かったです。
政治の話だけどそんなに小難しいこともなく、何も知らない青年が巨悪と戦う、というだけのシンプルさが良い。
最初のうちはとんちんかんな言動で見くびられる主人公に感情移入しながらつらい気持ちになるんだけど、理解者を得て地元の少年たちとも連帯しながら反撃に転じようとするあたりは胸熱すぎる。
敵は卑劣な権力者だから劣勢劣勢の状況でも根性で挑んでいくスミス君がかっこいい。
そして、純粋な、悪く言えば単純なスミス君よりも、蓮っ葉な感じの秘書のお姉さんの心境の変化がドラマチックで印象的でした。
そしてなんと言っても最後の演説のシーンはもう、最高です。80年前の映画にこんなにのめりこめるのか!?とびびるくらい、息も吐かせぬほどのエモさがあります。というかそもそも会議室で喋ってるだけでこんだけの求心力ってやべえっしょ。

正義vs悪みたいな構図は今観るとちょっと単純すぎる気はしなくもないけど、現実の政治家だってこの映画の悪党どもが可愛く思えるくらい悪党全開でやってるわけだしお話の中でくらいこのくらいスカッと勧善懲悪してくれてもいいっすよね!......と思う。

(ネタバレ→)ラストはちょっとご都合っぽさもあるけど、ペインがかつての良心を取り戻しそうなフラグはギンギンに立ってたので納得できるのがよかった。あと傍聴席からサインを送り続けるクラリッサと優しい笑みを浮かべる裁判長のことが好きすぎる


天使にラブソングを(1992)


ギャングに命を狙われたクラブ歌手のデロリスはとある修道院に匿われる。厳格な修道院での日々にうんざりする彼女だったが、聖歌隊の指揮を任されることになり......。


金ローにて。実は観てなかった有名作シリーズ。
別に中身はそんなクリスマスって感じでもないけど、確かにクリスマスシーズンに観るのに最高なハッピーでハートフルでとにかく楽しい作品。
ウーピーゴバさんとマギースミスさんの対比だけでもうめちゃ面白いし、他のシスターたちもキャラ濃いし警部補さんは表情が濃いしでとにかく観ていて楽しい!
命狙われててなんで修道院やねん!を筆頭に無数のツッコミどころというかご都合展開がむしろ心地良くて、子供の頃のように頭空っぽでエンタメ作品観てうおーっ!てテンション上がる気分を久々に味わえた気がします。悪者がそんなに悪くないファミリー向けのコメディ映画ってすげえ心地いいっすね......。

しかしところどころEマークの付きそうな下品なワードが出てくるのもそのまま吹き替えてて金ロー始まったな......!とも思った。


天使にラブソングを2(1993)


前作から一年後、ベガスでスターになってたデロリスの元を訪れた修道院の面々。そしてなんやかんやあってデロリスは学級崩壊を起こしたカトリック系の高校の音楽教師に!......ってなんでやねん!
というもはやシスターあんま関係ないやんな、『ごくせん』っぽい話。
うぜえ先公が来たぞみたいなとこから段々デロリスのことをリスペクトしていく過程がベタだけどエモい。
てか、うちら世代だとごくせんだけどもうちょい前だとGTO?もっと前だと金八先生?と思うとこれってかなり日本受けするお話なんでしょうか。

閑話休題、少年少女の青春模様が加わったことで前作よりさらにドラマチックになり、音楽もよりガンガンかかって、「2の方が面白い」という珍しい作品となっております(個人の見解)。
今回のデロちゃんは生徒たちを見守り導く役目で、主役は歌いたい気持ちと家庭の事情との間で葛藤する少女リタ。演じるのは後にFuggesというグループのヴォーカルとしてデビューするローリン・ヒルさん。彼女を筆頭に、生徒たちがみんな歌うまいっす。
そして、それぞれ好きな音楽ジャンルが違うことと、それぞれ個性があることが重ね合わされ、そんなみんなで折衷して一つの歌を歌うことでクラスとして団結する......というドラマと音楽の重ね合わせがベタだけどやっぱアツい。

一方で、前作から引き継がれるシスターたちのわちゃわちゃの楽しさと青春要素の折衷はちょっと無理してる感があり、どっちも描き込みが弱くなってしまっている感じはなくもないかな。
とはいえ全編楽しさ満載、音楽もパワーアップ、後味は120%ハッピーでめっちゃ楽しい映画でした!
(ネタバレ→)第1位はどこどこ高校〜!そして最優秀賞は......っていうアレ、めちゃくちゃアホ臭くて好き。なんだよ最優秀賞って!(原語で何つってるかは知らんけどさ)