偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

梓崎優『叫びと祈り』感想


2010年のデビュー作である本書と、2014年の『リバーサイド・チルドレン』の、現状2冊しか著作のない寡作の著者。
しかし、本書はミステリランキングでは軒並み上位に入り、ミステリファンからもことあるごとに名前を聞く、ある種伝説的な作品です。



斉木という日本人青年が世界のあちこちの国で関わる謎を描いた、5編からなる連作短編集です。
各編で舞台となる国が変わるのが、単純に短編集としてのバラエティを豊かにしていて楽しいのもあるし、その舞台、その文化、その価値観でしか成立しない意外性を演出してもいます。
また、短編タイトルからも予想は付くので明かしてしまいますが、東京創元社からの短編集らしく最終話で全体が繋がる構成も見事です。尤もこれはミステリ的な伏線回収どわ〜って感じじゃなくて物語としての纏め上げみたいなものですが。
まぁそんな感じで、各話のレベルがまず非常に高い上に、一冊の本として美しく纏まっためちゃくちゃ凄え傑作です。
なんかもう敢えて無理に貶すならばちょっと米澤穂信っぽすぎるかなってとこだけど、米澤穂信ほど説教臭くないので好きです。

以下各話の感想。





「砂漠を走る船の道」


サハラ砂漠の「塩の道」で起きた殺人。過酷な道行の中、また極端に容疑者が限定される中、誰がどうして仲間を殺すに至ったのか......?

デビュー短編でこのクオリティはやべえ。
まず砂漠の風景描写や、短編の分量だから説明ばかりもしてられない中で端的にキャラバンの文化を説明する筆捌きの巧さが新人離れしてます。ベテラン作家の変名と言われた方がまだ納得がいくくらい。
そして極限状況における殺人という謎自体の魅力も抜群。渇いて殺風景なロケーションも相まってヒリヒリした緊張感があります。
その解決も異形にして納得。この舞台設定でしか有り得ない真相に唖然とします。これ、この真相が先にあって舞台を決めたのか、舞台に合わせてネタを作ったのかどっちなんだろう......ってくらいのマッチ度。異世界本格ならぬ異文化本格とでも言いたくなるような作風で、少し泡坂妻夫を彷彿とさせるところもあって最高です。
ただ、サブのアイデアの方は、物語に深みを持たせる点では素晴らしいとは思うものの、ちょっとさすがに無理があるのも否めないですね。
変な言い方ですが、ここの「思いついたから無理矢理でもやっちゃおう!」感に新人作家らしさを感じで安心すらしちゃいました。
それほどに完成度の高いデビュー短編です。




白い巨人


スペインのとある街の風車の中で、一年前、彼女は消えた......。
友人の斉木たちと再び苦い思い出の地を訪れた"僕"は、土産物屋の店主から、彼女の消失と似たシチュエーションで風車から兵士が消えた伝説を聞き......。

一転して、語り手の"僕"、斉木、ヨースケという友人3人での観光旅行という軽めのお話。
軽めと言っても前話に比べたらの話で、一年前の失恋を抱える主人公視点の物語は切なさや苦味、憂いもあって私好みの味わいでした。
ミステリとしては、まず消えた兵士の謎に対して3人がそれぞれ推理するという多重解決のような形になっていて贅沢!それぞれの推理自体もそれぞれ面白いです。
さらにもちろん語り手の消えた彼女の話も絡んできて、短編とは思えぬ贅沢な詰め込み具合。
(ネタバレ→)前話に引き続き、語り手の国籍に関する叙述トリックが仕掛けられているのもマジで短編かよ!?っていう濃さ。サクラ、ヨースケに対して斉木だけ漢字表記なのはフェアプレイ的には微妙ですが、前話に比べれば小さなツッコミどころでしょう。このトリックによって大学の所在地まで変わったり、「東南アジアからの留学生?」「生粋の日本人です」という会話の意味も反転するのが面白いです。
重いところもありつつ、青春ミステリらしい清々しさもあるちょうどいい読後感の傑作です。



「凍れるルーシー」


250年前から残る不朽体が安置されるという南ロシアの小さな修道院
斉木は、不朽体のリザヴェータを列聖させる審査の取材で、修道院を訪れるが......。

ロシア正教修道院を舞台に、腐らない遺体=不朽体をモチーフにした、ホラーっぽい雰囲気も漂う一編。
モチーフそのものの魅力はもちろん、2人の視点から交互に語られることでよりむんむんと匂ってくるミステリアスな雰囲気。
しかしその実、ミステリにおける謎らしい謎はなかなか出てこなくて戸惑ってしまいます。
その戸惑いを嘲笑うかのようにぶちかまされる衝撃、そして衝撃。
ミステリを読んでいて、体の芯からこうぞわぞわと震えがくるような衝撃ってのは、ミステリにハマりたての頃はともかく最近はなかなか滅多に味わえなくなってます。本作はそのなかなか滅多を久しぶりに味わわせてくれました。シンプルなんだけど、それだけにショック。さらに、真相だけでなく終わり方に至るまで衝撃的で、本書でも特に人気なのも頷ける傑作でした。



「叫び」


アマゾン奥地の少数部族の取材に訪れた斉木だが、部族内でエボラらしき伝染病が発生。皆に死が迫る中で、不可解な殺人が起き......。

「砂漠」もなかなか過酷でしたが、こちらもエグい。村人がほとんど伝染病で凄惨な死を遂げ、残った少しの人々も感染の可能性が高いという、まさに世界の終わりのような絶望的な状況。
謎の提示も「そんな状況でなぜ殺すのか?」という「砂漠」と重なるものですが、こちらもまたこの場所でしか成り立たない異形の真相が凄絶です。
また、辺鄙な土地で組織にも属さずに働く医師のキャラや、感染を恐れて村を見捨てて逃げたくなってしまう斉木の葛藤や自己嫌悪といった心の動きも読み応えがあり、短編とは思えない濃さと凄みのある、これまた傑作。

全く関係ないけど、本書を読みながらちょうどポリスのシンクロニシティを聴いてたら本作にスティングの名前が出てきて、「これぞシンクロニシティ!」と思った。



「祈り」


冬に鎖された牢獄のような療養所。
1人の患者と、彼を訪ねてきた森野と名乗る男は、とあるゲームをはじめる......。

壮絶な幕切を迎えた前話から一転して静かなサナトリウム、あるいは牢獄のような閉鎖空間で2人の人間が対話するだけの静かなお話。
隠されている部分はかなりあからさまですぐに分かってしまう、というかたぶん作者もそこまで隠すつもりはないんだらうなという感じで、むしろどうしてそうなったのか......?という部分がミソ。
(ネタバレ→)「砂漠」「白い巨人」では普通に探偵役らしかった斉木が、「ルーシー」「叫び」で永遠に分かりあうことの出来ないような異形と対峙して壊れてしまう......という本書全体の収録順までが伏線になっていて、それらの物語を語り直すことが斉木を救う祈りになるというのが巧いしエモい。
超絶技巧とかではないんだけど、ミステリ的にというよりは物語として本書全体をまとめ上げて美しく締める印象的な最終話でした。



追記

本書のタイトルを見てMr.Children「叫び 祈り」という曲を思い出したのですが、作者もミスチルファンで本作のタイトルもまんまそこから取ってるみたいです。
その曲が収録された「HOME」というアルバムも、伏線回収の見事な連作短編集のようなアルバムなのでこの場を借りてオススメしておきます。

澤村伊智『ひとんち』感想

『ぼぎわんが、来る』『予言の島』を読んだことのある澤村伊智によるノンシリーズのホラー短編集。


解説にもある通り、とにかく振り幅がすごいです。
基本的に「ふつうの日常が恐怖に侵食される現代モノのホラー」という外枠は全編に共通してるんですが、それでいて怖さの質感や方向性はそれぞれ全然違っていて、似た話がないんですね。
また、どっちかというと人が怖い話より怪異っぽいものが出てくる(解釈による部分はあれど)話が多い気がします。個人的には(陳腐すぎて言いたくないけど)やっぱ人間が1番怖いと思ってて、だから逆に人間が怖い系ホラーってのは怖くて当たり前だと思ってます。一方で、本作は人外のナニかが怖い系でありつつ、演出の上手さでしっかり怖くなってるのが凄いと思います。

『予言の島』のようなホラーミステリ作品も多い著者なので、ミステリ要素を期待していた部分もありますが、本作はミステリ要素は薄めでした。ただ、各話で展開にはしっかり捻りがあるので、そういう意味での意外性は十分で面白かったです。

あとはもう単純に文章が読みやすい。怖いんだけど一気に読めちゃうので、毎日寝る前にさらっと一編ずつ読むとかもオススメっす。

じゃあ以下各話の感想。



「ひとんち」

渡辺篤史をしっかりぶちかましながら旧友の家に招かれるというシチュエーションから、学生時代以来久々に集まった3人の結婚や子供の有無、夫の財力などの現在の生活の違いからバチバチとマウントを取り合う女の戦い......ありがちぃ......。
......とか思っていると、予想外の展開に度肝を抜かれます。
中盤くらいからはあるあるネタ(いや、ないやろ)を羅列していくような流れで、これもいちいち面白い。
ラストはそういうことなのかな???ラストの直前までめちゃくちゃ怖かったんだけど、ラストがちょっと狙いすぎてる感があってあまり好みじゃなかったかな......とはいえ掴みはばっちしの第一話でした。



「夢の行き先」

まだ第二話なのでちょっと軽め。なんなら起きる現象は(怖いんだけど)ちょっとギャグっぽさすらあります。
というか、関西弁の独特のノリで「ババアが」とか身も蓋もない言い方をされるとちょっと笑ってしまう。
タイトルにある「夢の行き先」をめぐるミステリーっぽい感じになるかと思いきやこちらも思わぬ展開で「なんじゃそりゃ」と思ってしまいます。
うん、怖いというよりナンセンスみたいな、「世にも奇妙な物語」の原作になりそうな話。



「闇の花園」

闇の帝王みたいなやつの厨二病全開な語りと、教育熱心な小学校教師が問題のある女子生徒とその母に立ち向かう本編の日常感とのギャップが面白い。
構成が特殊なので何かしら仕掛けとかがあるのかと思ったら何もなかったのは拍子抜けですが、闇パートを描いてる作者楽しそうだなって思うと微笑ましい一編です。



「ありふれた映像」

怖さ部門では本書でベスト。
あの映像をホラーにするっていう着想からして面白く、生活感からの悍ましさへの跳躍にぞくっとさせられます。
正直この発端が怖すぎてそれ以降の展開でこの怖さを超えてくることはないのですが、しかし何もかもよく分からないままのラストまで常に不気味な雰囲気全開で怖いし気持ち悪かったです。



「宮本くんの手」

同僚の手荒れが酷い......という、およそホラー小説の発端とは思えないような始まり方をしつつ、あるところでアレが絡む話だと明かされることで一気にシリアスさを増し、本書の他の話にはない深い余韻(と、もちろん怖さも)を残して終わる印象的な一編。物語性ではこれがベストかも。



「シュマシラ」

そんでもってこれは偏愛枠ベストかな。
昔の食玩のフィギュアにバックボーンの分からないものが一つだけ存在する、というニッチな発端が秀逸。
そこから、探偵ナイトスクープと民俗ホラーを足したみたいな話になっていくのも面白い。
クライマックスはなんていうか、私はよく旅行先であえてよく分からん山道みたいなところを通って迷子になるのが好きなんですけど、その時の感覚に近いような気がしました。不安や怖さもあるけど知らない景色を見る好奇心もある、みたいな。うーん、言葉にするのは難しいけど、その感覚にハマったのが偏愛枠たるゆえんですね。



「死神」

三津田信三にリングのトリビュート短編があったので本作もそれと同じ雑誌なり本なりに掲載されたのかと思いきや、どうもそういうわけでもなさそう(調べたけど出てこない)。単にリングオマージュの短編ってことみたいです。
はっきりしない「死神」の存在や、記憶の飛びなど、本書で最もストレートに不気味さに振り切ったような一編。
終盤で中途半端に謎解きというか答え合わせみたいなのがあるけど中心にいるもののことは何もよく分からんあたりがまた気持ち悪くて良いですね。



「じぶんち」

学校行事の合宿から帰ってくると家族が消えている......というマリーセレスト号のバリエーションみたいなお話。
帰りのバスから降りると異界ってのはちょっと「バトル・ロワイアル」を思い出しました。あっちはそもそも帰って来れてないけど......。
設定自体はよくあるものなので結末もなんとなく予想はしてみるんだけど、本作はここにそれをくっつけるかという意外性のある結末で面白かったです。
冒頭の表題作と対になるようなタイトルからこれだけ違った味を出してくるとこも凄い。色んな話が入ってる本書の中でも最大の異色作で、最後までアイデアの幅広さを見せつけてくるところに著者のドヤ顔を見るようで悔しいです。

シソンヌライブ[dix]雑感

例年、「そろそろシソンヌのDVD出てるかな〜」と思って調べてみると3ヶ月くらい前に出てるんだけど、今年は5ヶ月経ってました。
好きではあるんだけど、やっぱ小説映画音楽がメインだからあんま小まめに情報チェック出来てないですね......。


前回公演でネタの本数が大幅に減ってその分一本ずつが長くなったシソンヌですが、今回もそれを引き継いで5本立ての公演になっています。
初期のネタはわりと(売れ線狙いもあるかもだけど)設定やキャラのインパクトが強くてちょっと出オチみたいなのが多かったんですが、最近は、まぁキャラもインパクトあるけど昔ほど奇抜じゃなくなって、2人の間の空気感をじっくり味わう感じのネタになってきてるように感じます。

前回は『不安』をテーマにしたややコンセプチュアルな公演で、毎回出てた野村くんが出てこなかったりとかなり異色作の感がありましたが、今回は野村くんも復帰(?)し、メガネなしじろうあり、女装じろうあり、老人じろうありとバラエティ豊かなじろうちゃん見本市みたいな内容になっててこれはこれで楽しかったです。



「町の葬儀屋」

単純にバカバカしい不謹慎ネタなんだけど、昨今のなんでもポイントだのアプリだのコスパだのお得だのという風潮への風刺のようにも観られるお話でした。
「なむなむ」以降スピード感を増すボケとツッコミの応酬が楽しい。



「野村くん、寺山さんに会う」

野村くん、いつの間に高校生になってましたっけ?
より大人びた深いことを言いつつ基本的にわけわからんとこは相変わらずで久しぶりに野村くんに会えて嬉しくなっちゃいます(前回1回出なかっただけだけど)。
労働の日々に摩耗してる感じの寺山さんのキャラも凄く良かった。「こんな仕事やりてえやつそんないねえぞ」みたいなセリフは特定の職業の役で言うのは差別的な感じはするけど、しかし私も毎日そう思ってるので凄え共感しちゃったよ。だいたい本当にやりたいことやってる人なんてそんないないだろうし、やりたい仕事に就いたってパワハラで殺される人だっているし、案外みんなそんなもんなんじゃないのかな。なんかちょっと泣きそうになりました。



「居酒屋ございあす」

メガネ外したじろうちゃんの鬱陶しい枠の強烈キャラ。
こういう人いるよね。いや、ここまでのはいないけど、なんかこんな感じの人は意外といるよ?くらいのリアリティが凄い。
先輩後輩だけど体格差......みたいな2人のパワーバランスの不安定さが面白くもヒリヒリする緊張感も産んでいて、後半は「舐めてた相手が実はヤバいやつだった」系スリラーみたいになるのが笑えます。



株主総会

今回はじろうちゃんの女性キャラがこれ一本だけなのでちょっと寂しい気がします。
女性の役員登用に関する社会派っぽい話なんだけど、どうしてもこういう題材だと不謹慎さというか、茶化してる感じが出ちゃって微妙にモヤモヤした気持ちになったりも。そういえば前の話もちょっと茶化してる感じでしたね。
ただこういう気持ちを掬い上げて誇張する目の付けどころは面白いし、2人ともいい人ではあるのでなんだかんだほっこりしますけどね。こういう子供みたいな「The」の使い方が好き。



「人類の、未来のために」

人類の未来のための任務を抱える病床の老人......。
シリアスっぽいトーンで秘密めかした出だしから一転して原始的なバカバカしいコントに変わっていくコントラストが最高。
第一話が葬儀屋の話で最後が死にかけだけど人類の未来を想う老人の話ってのが緩い繋がりになっていて最終話感を強めています。
そして死にかけてるくせにたぶんこのネタが一番じろうちゃんの声量がデカい。なんか、急に大声出すから音でビビらせるホラーみたいなビビり方をしちゃいました。
前回の公演の最終話も老後の話でそっちはけっこう泣けたんだけど、この話のいい話なのに絶妙に全然泣けないところも好きです。

鵜林伸也『ネクスト・ギグ』感想

学園ミステリアンソロジー『放課後探偵団』に短編「ボールがない」が収録された著者ですが、それからしばらくのブランクを開けての本格的デビュー長編となったのが本作。
単行本が出た時から気になってはいたんですがこの度文庫化されたので読んでみました。




音楽ファンから絶大な支持を得るロックバンド"赤い青"。
しかし、ある日のライブのアンコールのステージで、ボーカルが胸に千枚通しを刺されて死亡した。
ライブの直前にボーカルが語っていた「ロックとは何か?」という疑問、そして、事件の直前に天才ギタリストが犯した稚拙なミスは、事件となにか関係があるのか......?


ロック×本格ミステリ、ということでどっちも結構好きなので楽しみに読んだんですが、めちゃくちゃ良かったです。
ミステリにロックが出てきても味付け程度なことが多く、「ロック」をメインテーマとして扱った作品は私は他に読んだことがないし思いつかないですね。
なんせ、ミステリとしての謎のメインが「ロックとは何か?」である、と言っても過言ではない内容。
実在のバンド名もバンバン出てくるし、作中のバンドの架空の作品名や来歴などがそれと並列で出てくるのも面白くて、サウリバも赤青もかいわれ大根もめちゃくちゃ聴いてみたくなりました。
読んでいると、登場人物の個々にというよりは、赤い青というバンドやロックというものに感情移入するみたいな感覚になり、ロックを愛するかれらの中に犯人がいるなんて思いたくない気持ちになりました。
また、本作の発表は2018年ですが、この時点で既に逼迫したライブハウスの懐事情が描かれていて、その後コロナ禍でさらに大打撃を食らってるわけで、なんかライブ行かなきゃなと思いました。なんせ3年以上行ってないですからね......。ライブ行きたい。

そしてミステリとしては、事件の謎はシンプルなロジックでするすると解かれるのが気持ち良く(話としてはつらいけど)、一方で人間ドラマとしての意外性は伏線の巧さがモノを言ってるように思います。
なにより、「ロック」そのものを謎解きと密接に結びつけているのが最高!解決編への導入の演出もエモすぎます。
終わり方は2人も死んでるのにちょっといい感じすぎる気もしますが、彼らには転がる石であり続けて欲しいですね。


そんな感じで、私はロックファンとまで言っていいのか分からんけどバンド音楽好きだしミステリも好きなので好き×好きでめちゃくちゃ楽しみました!
またそういう人はもちろん、ミステリが好きだけどロックに興味ない人にもぜひ読んで欲しい作品ですね。

ブレット・トレイン

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!う、、うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!......はぁ、、、。

......くらいしか感想がないですけど、一応もうちょい書きます。


伊坂幸太郎の『マリアビートル』がまさかのハリウッドで映画化!というのが伊坂ファンとしては衝撃だったんですけど、「どうせバカみたいなアクションになるんだろうな」という期待を裏切らずにいながら意外と原作のエッセンスはいっぱい詰まってて、伊坂作品×B級アクション大作の乗算が大成功した快作でした!

冒頭のブラピがブレードランナーみたいな東京を歩きながらアヴ様カバーのステインアライブが流れるところでもうとにかく楽しめばいいだけの映画なんだなと分かってブラピと一緒に弾丸列車の乗客にさせられてしまいました(ブラピが冴えない感じなのが既にウケる)。

キャラが多い、というか、人数はめちゃくちゃ多くはないけど一人一人の味付けが濃いから多く感じるのかな。それぞれのバックボーンなどが忙しなく挟まれていって、インパクトあるエピソードが語られたキャラが次の瞬間普通に死んだりするなんとなく浮き足だったような展開が楽しい!
原作では天道虫、蜜柑、檸檬っていう暗号名が英語でレディバグ、タンジェリン、レモンってなってるのも伊坂ワールドとは違ったパラレル伊坂ワールドみたいな感じで面白かったです。あ、レモンはそのままか。
キャラ付けも「不運」「トーマス」とか原作通りの部分もあれば、蜜柑と檸檬の関係性なんかは雑な言い方になるけどハリウッド映画っぽさが増してたりしてこれはこれで凄くアリでした。また、原作を知ってるからこそ、「あ、そっちじゃないんだ」みたいな捻りもあったり。
ストーリーにしても、特に中盤まではある程度原作に沿いつつ、終盤で急にバカアクション映画になったりとかして、「意外と原作通りじゃん」ってとこと「うわ、そうくるか!」のバランスがいい塩梅でした。
びっくりしたのが、台詞回しがかなり伊坂っぽいところ。特にブラピと電話の女の会話の特に内容はないけど惚けた面白みがあるところとか伊坂みを感じます。
無駄な会話や挿話の多さとかは、伊坂っぽいとも言えるけどむしろ伊坂が影響受けてるタランティーノに寄せてる感も。

日本の描写もネオン煌めくトーキョーからkawaiiっぽいのとかマスコットキャラ文化みたいなのから絵に描いたような極道から「なんでそこに富士山あんねん!」まで、「日本ってなんかこんな感じっしょ〜」みたいなのをわざとそのまま描いてるみたいな感じで笑いました。こういうの文化の盗用っつーのかな?個人的にはもっとめちゃくちゃでも良かったとすら思うけど。

あと、アクションがそのままコミュニケーションにもなっててお話に組み込まれてるのも好きです。たぶんアクション映画のファンじゃないから、ただ戦ってるの見るだけみたいなのが苦手なんだと思います。アクションがストーリーに直結したり、音楽とリンクしたりしてるような映画が好きなので......。

序盤からそこそこテンション上がる映画なんだけど、やっぱり中盤の蜜柑の「あり得ね〜〜!」な活躍以降でさらにギアが上がり、まさに""弾丸列車""なラストでついに血液が沸騰してくるような、だんだん加速する展開もツボ。
伊坂作品がスカッとジャパンなら本作は完全にスカッとアメリカンやなっていう身も蓋もないくらいの「よっしゃあ!」感も楽しすぎる。

そんな感じで、「伊坂がハリウッド!?いやいやいや......」と制作発表の段階ではわりとネガティブな気持ちでいたんですけど、観たらなんだかんだ楽しめちゃいました。
映画館に行ったら平日だけどコロナ以降では見たことないくらい人がいて、席が3割くらいは埋まってたのでそれもテンション上がりました。貸切も贅沢でいいけどやっぱ寂しいよね。

耳をすませば

いやもうこれなんで今まで観てなかったんだよ俺!ってくらい大好きです。青春とは病気だね of the Year!Yeah!


本を読むのが大好きな少女・月島雫は、いつも図書館の貸出カードに自分より先に名前が書いてある「天沢聖司」という人物のことが気になっていた。
ある日、ベンチに置き忘れた本を取りに戻った時に嫌味な少年と出会い......。


作中のカレンダーに私の生まれた日が映ってるように、ちょうど自分が生まれた頃の日本が描かれているのでトトロとかに感じるノスタルジーとは違ったリアルに懐かしい空気があってそれだけで引き込まれてしまう。

2人の出会いのきっかけが図書館の貸出カードってのがもう憧れの恋すぎて反則レッドカード一発退場Fuck。スマホのない時代ならではのトキメキよね。てゆーかスマホがないおかげで主人公の雫ちゃんがめちゃくちゃ本読んでて羨ましい。お前も20年後にTwitterはじめたら集中力を失って本読めなくなるぞという呪いをかけたい。
あと図書館のバーコード管理化ってのも図書委員でやった覚えがあるから懐かしかったです。その過渡期。

一応本読みなので図書館の話だけで長くなってしまったけど、実を言うとこの映画が好きなのはただ単に雫ちゃんがタイプなだけなんです。
中学の時こんな子いたら絶対好きになってる!ぜってえだぜ!畜生!
なんかもう、元気で本読んで可愛い女の子って好きです。好きですね。とても。
最初はクラスの男子A目線で「あの子可愛いなぁ俺とは縁もないだろうけど......」と諦めながら(何をだ)観てたんだけど、お話が進むにつれて彼女のある種自分中心の恋の嵐に共感しまくってわかるわかるマンになってしまいました。いやでもフラれた子も可哀想すぎてそいつにもわかるわかるしてたら誰にでもわかるわかるするおじさんになってた。青春は眩しい。お前ら〜っ、くぅ〜っ......。ジーザス。
そうよ中学生の恋なんて自分たちだけが主人公よ。そこらへんにありそうな街のそこらへんにいそうな子たちのそこらへんにありそうな恋でも、お前らだけはお前らの恋の主人公だからな!←誰なんだ俺は

美しい。美しい映像がたくさんあったよ。アンティーク屋さんの時計とかね、みんなで合奏するとことかね、雫ちゃんの書いてる小説の中の映像とかもすごく綺麗だった。あれに比べたら『猫の恩返し』なんて......いやなんでもないです。
というかあの街そのものが美しい。海が見える電車。坂道や階段が多い住宅地。何の変哲もないその辺の住宅地を散歩するのが大好きなので本作の何の変哲もないその辺の住宅地の映像だけでご飯50杯食える(あくまでも例えの話)。そんな街並みの中を猫ちゃん追いかけて走ってくとかどんだけエモなんだよ。エモが致死量だよ。

終盤は夢すなわちヴィジョンを持たない自分への焦燥から身を削る思いでやりたいことに打ち込む雫ちゃんの姿に良い歳してNO futureな私はソンケーしかねぇ。てか原石おじいちゃんいい人過ぎるやろ。いい人しか出てこない。
ラストとかももう最高でしょ!中学生の恋愛ものの最後はもうあの一言で終わってほしい!っていう私の歪んだ願望が具現化されたような終わり方でした。
現実なんか知らないからこそのあの無敵感。
1番良いのは、この街のこの景色が『平成たぬき合戦ぽんぽこ』で人間がたぬきたちから奪い取ったものってとこですよね。エグい。

というわけで、個人的には今んとこジブリで1番好きだし、たぶんまだ観てないやつ全部観てもこれは超えないんじゃないかななぜならロマコメだいしゅきだから〜Yeah。

五色園に行ったよ!

五色園(ごしきえん)は、愛知県日進市岩藤町にある日本で唯一の宗教公園。

(Wikipediaより)



お休みだったので五色園にお散歩に行ってきました。
中学生の頃に友達とチャリンコで行って以来15年位ぶりでしたが、相変わらずめちゃくちゃ良いところ!

親鸞聖人の生涯にまつわるエピソードのコンクリート像が大量に置いてあるんです。
この像の作者は浅野祥雲先生。たぶん代表作はこの五色園ですが、他にも桃太郎神社(やさしい鬼です)や関ヶ原ウォーランドなどにも先生の作品が置いてあるらしいです。どちらも行ったことないので行ってみたい!




















コンクリ像はもちろん、基本的にはただの山なので、夏の終わりの風景も楽しみました。エモい。











写真下手だけど、自分が撮る写真は1番自分の見たい写真って感じがして好きです。カメラ欲しいな。