偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』読書感想文

タイトル通り、アリス先生が選ぶ本格短編アンソロジー
いきなり失礼なこと言いますが、作家としての有栖川有栖にはそこまで興味がなくて、学生シリーズこそ好きで全部読んでるものの、作家シリーズの方は短編集読んであんまり肌に合わなくてやめちゃいました。
でも、ミステリの読み巧者としての有栖川有栖には信頼を置いているので、そんな彼が選者の本書もとても楽しめました。

有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー (角川文庫)

有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー (角川文庫)


全体が「読者への挑戦」「トリックの驚き」「線路の上のマジック」「トリックの冴え」という4部構成になっていて、それぞれのカテゴリーにいくつかずつ短編があるという、目次を見ただけでワクワクしちゃう感じもさすがです。ミステリなんて遊びだから、こういう遊び心が堪らんのです。
また、チョイスもマニアックで、本邦初訳の作品や、推理研の先輩が即興で書いた作品などほぼここでしか読めないようなものもあり、こういうレア感もまたワクワクさせてくれます。

では以下各話感想。



巽昌章「埋もれた悪意」

著者はミステリ評論の方面では代表的な人物ですが、小説を読むのはこれが初めて......というか小説自体ほぼ発表してないみたいですね。
本作は非常に地味でオーソドックスな犯人当てですが、それだけに上手さが際立ちます。
また、開き直ったかのようにメタなネタを飛ばしたりと、物語性は完全度外視でただの推理ゲームとして作られているのも良いですね。新本格はこうでなくっちゃ。
解決の前に読者への挑戦が挟まれるので私も考えてみたのですが全然だめでした。犯人当て読む時って毎度のことなんですけどとっかかりになるヒントに違和感を覚えながらもそれが何なのか分からないまま降参しちゃうんですよね......。もっと自分の違和感を信じなきゃ......。
そんなわけで白旗を揚げたものの、解決を読んでいけばあれもこれも露骨に伏線で、意外性と論理を踏んでく面白さと両方あって、地味ながら犯人当てのお手本みたいな作品だと思いました。手形のシーンがめっちゃ犬神家オマージュなのには笑う。



白峰良介「逃げる車」

これは著者が大学のミス研に在籍していた頃に電車の中で即興でばーっと書き上げた犯人当て、という超異色作。
異色作といえば聞こえはいいものの要は素人がワンアイデアでパッと書いたものなので正直言ってそんなに面白くはなかったです......。
要となるあの発想の転換に関しては正直お話が始まった時から気づいていたので、「ならこういうこと?いやでもさすがにそんだけじゃ根拠として弱いか......」と思っていた勘がそのまま真相だったので拍子抜け。
ただ(ネタバレ→)ロボット三原則の応用というワンアイデアだけは面白いし、そこから即興でここまで形になったものを書けるのも凄いとは思います。



つのだじろう「金色犬」

これまた異色の、つのだじろうによる少年向けミステリ漫画。
少年向けとはいっても侮るなかれ、お屋敷での遺産争いと凄惨な事件、人を喰う金色犬というモチーフ、孤児だった少女と車椅子の老人、そして名探偵......そう、本作には我々が大好きな"本格ミステリ"がぎっしり詰まっているのです!
もちろん雰囲気だけじゃなく真相もなかなかのもの。犯人を名指しする決め手はあまりにもはっきり目の前にあったのに気づけない。トリックは漫画ならではのナンジャソリャな大胆さが楽しいです。そしてお話としての余韻も残り、読み終わって満足感しかない。
よくもまぁこんなまさしく「隠れた傑作」を発掘してきたものだと、有栖川氏の嗅覚にも畏敬の念を感じます。



ロバート・アーサー「五十一番目の密室」

タイトルは聞いたことがあるやーつ。
とある作家が「私の次回作は51作目の密室ものミステリで、そのトリックは全く前例のないものだ!」と豪語しといてからに本人が密室で殺されちゃって、作家仲間の語り手がそのトリックを知るべく事件の謎に挑むという、ちょっとおちゃらけた密室ミステリです。
作家が主役なだけあってか、作中には実在の作家たちも大勢顔を出します。ゆっても私はクイーンとカーくらいしか知らなかったけど、こういう内輪ネタの遊び心がサイコーですよね。
そして事件自体は凄惨な上に「類例のない密室トリック」が使われていることが初めから明かされているので楽しさしかない。
そのトリック自体は2019年現在ではもう「よくある密室トリックのパターン集」の中に収蔵されてしまっていますが、これが世界初だと思えばとても微笑ましい気持ちになりますね。よくもまぁこんなバカな発明をしたものだ......。
で、現在の観点からはむしろトリックよりユーモアたっぷりのストーリーの方が魅力的。
死んだ友達のトリックを盗もうと画策する主人公の作家としてのサガも笑えるし、ラストの犯人の正体とか動機は噴飯も......じゃなかった、爆笑もの。さらに「エラリー・クイーンのあとがき」の検証まで含めてひたすらに内輪のノリでやってるのが楽しい、ミステリファンという"内輪"の人間なら絶対楽しい一編です。



W・ハイデンフェルト「引き立て役倶楽部の不快な事件」

ワトソン博士をはじめ、偉大な名探偵たちの助手を務める引き立て役たちが一堂に会した、こちらも内輪ネタのミステリパロディ短編。
トリックはこれも見覚えがあるものの、それでもこの大胆さには笑うしかないですね。あと、このトリックと引き立て役倶楽部との関係にも笑いました。たしかに、引き立て役倶楽部じゃなきゃ成り立たないトリックですよねこれ。
そして、ストーリーの方もブラックユーモア満点。引き立て役たちの、そのキャラならではの迷推理がいちいち面白いです。そしてHow dunitのつもりが思いもよらぬWhoの驚きを見せてくれて爆笑。これはちょっと豪華すぎる......。



ビル・プロンジーニ「アローモント監獄の謎」

これもトリックものですが、今度は内輪ネタとかじゃなくシリアス。
とある刑務所で絞首刑に処された死刑囚が、衆人環視の中死刑台の奈落から一瞬にして姿を消した......という不可解な謎がステキなサスペンス・ミステリです。
凶悪犯が脱獄した可能性があることから、素早い解決が求められるハラハラ感。そして監獄だけに収まらない動きのある展開がサスペンスとしても本作を傑作たらしめています。
そしてトリックには完全にやられました。前の2編のように派手ではないだけに、リアリティに限りなく近いバカさが出ててめっちゃ好きです。「あれ、これ冷静に考えればバカトリック......だよねぇ?」という感じ。
また謎の提示自体もまるでマジックショーのように劇的。これはもうめちゃくちゃ傑作です。



余心樂「生死線上」
スイスに住む台湾人作家の作品。
有栖川有栖が台湾のミステリ雑誌でたまたま見つけて面白そうだからと知り合いの編集者のツテで翻訳してもらったという、レアもの中のレアもの。こういう、他では絶対読めない作品って、ミステリファンはそれだけで喜んじゃうんですよね。捻くれてるから。でも、もちろん内容も面白かったです。
まずスイス人の妻とスイスに暮らす台湾人の主人公という日本の小説では絶対に見かけないような設定が面白いです。
また、主人公と奥さんのパートナーシップの築き方もすごい素敵ですわ。
事件の方はガチガチの時刻表鉄道もの。その性質から真相の一部は最初から分かっているようなものですが、むしろ主人公がそこにたどり着くまでの道のりが面白いです。事件の真相の"手がかり"ではない部分の"伏線"が見事。その描写にまで意味があったの?っていう。
言葉で魅力を説明しきれないですが、なんとなく愛着の湧く作品でした。



上田廣「水の柱」

これも鉄道もの。
事件の起きた列車の車掌の投書からはじまり、車掌と刑事がそれぞれに調査をしていくというお話。
消えた愛人の謎、といういかにもノスタルジックなところがいいですね。女を探す過程のちょっとした旅情とか、そういう全体に古き良き推理小説という感じを満喫しました。
ネタに関しては北村薫の指摘の通りちょっと無理やり感が否めないところではありますが、ともあれ面白かったです。



海渡英祐「『わたくし』は犯人......」

「わたくし」が書いた推理小説のプロットと、現実の「わたくし」の身近で起きた殺人事件とが奇妙にリンクするお話。タイトルの通り「わたくし」が犯人らしい、しかし彼女にはアリバイが......。
著者のアリバイものを集めた短編集からのセレクトらしく、作品の後には著者のライナーノーツもついていてお得感があります。
トリックは正直「そこまでうまくいく?」と思っちゃいますがそれを言うのも野暮ですかね。トリッキーな構成とパズル的なトリックの楽しい佳編です。



ジョン・スラデック「見えざる手によって」

芸術家の元に届いた殺害予告。名探偵に憧れる哲学教授の主人公が警護に当たるが、彼の見張りにも関わらず、芸術家は密室内で殺されていた......。
ユーモラスな本格ミステリの王道。不可能性の強い事件の状況、どいつもこいつも怪しすぎる関係者たち、どほけた語り口に周到な伏線に驚きのトリックに小粋な結末(といっても文化の違いか訳のせいかいまいちピンと来なかったですが)と、こういうミステリのお手本みたいなもんでは。久しぶりにミステリ熱が疼きだした気さえしますよ!傑作。

スピッツ『フェイクファー』今更感想

スピッツ全作感想シリーズ(目標)第2弾でございます。
今回はファン人気の高いこのアルバム!

フェイクファー

フェイクファー

スピッツファン男子は必ずこのジャケ写のお姉さんに恋をするという......。邦ロック史上最高のアルバムジャケットです。はい。
そして、歌詞カードのデザインもかわいい。柔らかい雰囲気の写真の一部が溶けるように白抜きされていて、そこに草野マサムネの手書きの歌詞が書かれているという凝ったデザイン。最後のページのアルバムディスコグラフィーなんかも面白い。目にも楽しく、CDという形で手元に置いておきたい一枚です。

私がこのアルバムを初めて聴いたのはたぶん中学生の時。というかそもそもほとんどのアルバムを中学生の時に聴きましたね。スピッツどハマり期。
ただ、当時はこのアルバムそこまで好きじゃなかったんです。というのも、やっぱり中学生男子なんでこう、ハヤブサみたいなああいうノリノリな感じが良いわけですよ。フェイクファーみたいな冬っぽくてメランコリィな感じはそんなにピンと来なかった。
でも、大人になって自分はもう死んだ方がいいのではないかと思い始めた時にsyrup16gART-SCHOOLといっしょに『フェイクファー』を改めて聴いて、このちょっと暗いトーンがありつつも、だからこそしんどい時に寄り添ってくれるような優しさが初めて沁みてきました。スピッツはずっと好きですけどまさかの10年越しに私の中で再評価されたわけですな。

スピッツ史的なところから見ると、このアルバムは『インディゴ地平線』あたりまでで大ヒットしてしまったスピッツが、それまでのプロデューサーから離れてこれからどうするかという苦悩の中で作った作品、と、ざっくり言えばそんな感じ。
その当時の苦悩を思い出すからあまり好きじゃないとメンバーは語りますが、そういう悩みの中で作った雰囲気が本作に流れるちょっとメランコリックで切ない雰囲気の源なのかも知れないと思うと、やはりこれはこれで私は好きなのです。


では以下では全曲感想を。



1.エトランゼ

タイトルはフランス語で「見知らぬ人」という意味だそう。スピッツのタイトルのセンスって超絶ですよね。この音の響きのオシャかっこよさ。
アルバムのイントロの役割を果たす、1分ちょいの短い歌。静かなオルガンみたいな音の中で歌だけがある、聴いた感触としてはアカペラに近い印象の幻想的な曲です。
歌詞も

目を閉じてすぐ 浮かび上がる人
ウミガメの頃 すれ違っただけの
慣れない街を 泳ぐもう一度 闇も白い夜

というこれだけ。
しかし、これだけでも輪廻、運命というワードを連想させるショートムービーのような物語が幻出します。"ウミガメの頃"っていう言い方がスピッツ節ですよね!
まぁ言ってしまえば「君の前前前世から僕は君を探し始めたよ!」ってことですね!(雑)
しかしウミガメの頃すれ違っただけの見知らぬ人を探して泳ぐというイマージュはアルバム全体にもふわ〜っと溶け出して流れているような気がします。あ、タイトルに合せてフランス語でイマージュだなんて、うっかり教養を披露しちゃいましたね(。・ ω<)ゞてへぺろ


2.センチメンタル

からの、ロックなギターサウンドで始まる、タイトルとは裏腹になかなかハードな曲。
AサビAサビ間奏Aというシンプルな構成ですが、ギターの音とタラ〜〜っとしたボーカルがクセになって聴き入ってしまいます。サビ終わりの「は〜あ〜は〜はぁ〜〜」みたいなとこがエロい!
そして中学の頃はボーカルばっか聴いてましたが、改めて聞くと間奏が長くてカッコいいっす。
終わり方も潔くて「あれ、もう終わり?」という感じが良い。

歌詞は

おとぎの国も 桃色に染まる頃

とあるように、おとぎの国を信じていた子供から、エロいことに目覚める思春期に突入してしまった少年の歌、だと思います。

震えていたよ まだセンチメンタル・デイ
裸の夢が 目覚めを邪魔する 今日もまた

というサビのフレーズは、クラスメイトへのセンチメンタルな初恋と、テレビや道端に捨てられたエロ本から自分の中に入ってきた裸の夢との間で板挟みになるあの感覚、性欲と純愛の間の葛藤を思わせます。
大学時代映画部に入っていて、まぁ撮影といってもそんな真面目にやれなかったしほんのお遊びの素人のインスタのストーリー程度のものしか撮ってませんが、四年生の時にヤケクソで撮った作品(というのもおこがましいが)がエロい妄想と純愛の狭間というテーマでやらせていただいたので、余計に今聴くと響きますね。いやもちろんこの曲が月だとしたら私のはミミズのうんこですけど。


3.冷たい頬

お得意の切ないアルペジオ(最近覚えた音楽用語シリーズ)で始まるシングル曲。
始まりはシンプルな演奏がサビに向かってだんだん盛り上がって、でもどかーんと盛り上がらないままふわ〜〜っとサビが終わっていく気だるさが最高です。
間奏はギターソロだとばかり思っていましたが、誰かが言ってるのを見て改めて聴いたら、これベースっぽいですね。ギターとベースの音の違いも分からないなんて恥ずかしいけど正直素人にこのくらいの微妙なやつは分からんわ。
歌詞についてはなんだかよく分からないけど明るい歌ではないことは確か......という感じ。架空の日々、とか、手帳の隅で眠り続けるストーリーというところからストーカーの妄想みたいな印象があります。なんにせよ、平易なようでいて全ては到底理解しきれないのでこの切ない幻の恋のイメージに酔うのが一番。
個人的に好きなのは、「時のシャワー」という言い回しと、「小さな午後」というのどかな言葉が曲全体に流れるどこか不穏で切ない雰囲気を逆に強調してるところですかね。


4.運命の人(Album Version)

これもシングル曲ですが、アルバムバージョンは半音下げ......という音楽的なことはもちろん調べて分かったことで、聴いた印象は「なんかシングルより暗いな」という感じでした。
まずはキラキラしたポップなイントロが印象的で、入りの歌詞の

バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日

スピッツの歌詞の好きなフレーズ総選挙したら絶対ベスト5までには入る人気フレーズです。
ちなみに他のランクインフレーズは「誰も触れない二人だけの国」「君を不幸にできるのは宇宙でただ一人だけ」「猫になりたい 言葉ははかない」「君のおっぱいは世界一」です(完全私見)。
それはさておき、こうしたなんとなく言いたくなる、ツイートしたくなる言葉の響きの魅力にはもはや太宰治を彷彿とさせます。
続く

愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ

もあまりに強烈なパンチラインですよね。
ただ、こうした耳と頭に残る歌詞なのはいいものの、ではどう解釈すればいいのかとなると途端に難しいです。
曲全体の印象は陰キャラがめっちゃハッピー!みたいな(笑)。こう、地道にでいいから君と二人で生きていこうみたいな。手放しでパリピっぽくハピネスできないけどしみじみ幸せを噛み締めて、たまに「輝く明日!!」とかエクスクラメーションしちゃうような浮かれトンチキ感もある、明るい歌としか考えられません。
......られないのですが、いくつか引っかかる点もあり......。

まず、いちばん謎いのはPVですよ。

https://youtu.be/AMWDAuPx26Q

え、なにこれ。
死んだメンバーたちがストレッチャーで手術室(解剖室?)に運ばれてきて、医師の見てない時だけ動いて歌ったり演奏しだすっていう、なんか表情みんな楽しそうだけど完全ホラー。
で、生前の回想シーンみたいなのが入るんだけどそこは「ハチミツ」のPVみたいな、少年みたいにはしゃぐおっさんたちのこれまたおぞましい映像(失礼)。
「地道に生きていこう」というイメージの曲のつもりが、PVでは死のイメージを刷り込んでくる......。深読みしたいけど私の頭では難しいので誰か教えて......。
他にも「神様」という言葉の意味深さや、冒頭の人気フレーズの意味など、どういうことかは分からないけど何か裏がありそうな感じの曲ですよね......。


5.仲良し

素朴なアコギの音から始まる短めの曲。バンドの曲ではありますが、雰囲気は弾き語りっぽいです。
短い中にも、たら〜っとしたメロ部分から高揚するサビ前半、さらにエモの高みへ登るサビ後半と、感情が三段変速して強いドラマ性を産んでいます。
もちろん、そのドラマ性の強さの最大の要因は歌詞にありまして、冒頭の

いつも仲良しでいいよねって言われて
でもどこかブルーになってた あれは恋だった

これだけで、もう、一つの詩、一つの物語として完成されている、この凄さ!!!?
思わず「?」まで入れちゃうほど意味わかんない言葉のセンスしてますよねこの人。
この2行で私が思い浮かべるのは幼稚園から小学校低学年くらいの男の子と女の子で、周りの子や親たちから「いつも仲良しでいいよね」なんて言われて、でもその言葉に子供心ながらに「ちゃうねん!ワシは異性として見られたいねん!」の萌芽のような気持ちになる、そんな甘酸っぱい初恋のお話。
私の場合も、だいたい仲良しの女の子に惚れますからねぇ......。そしてだいたい友達としか思われてないパターンのやつでしたからねぇ......。大学の時に振られてからしょっちゅうこの曲聴きながら夜の公園で「死ね〜」って叫んで酒飲んでましたよ。はい。
ちなみに、以前ネットでショタのBL説という解釈を見て仰け反りました。しかし、私は全くそうは思わないけど、この歌詞を私というフィルターを通さずに読めばそういう解釈の余地も全然ありますよね。そんな懐の広さが草野文学の真骨頂です。
さて、私のフィルターをもう一度かけ直しましょう。

冒頭はそんな幼い恋の印象ですが、Aメロの続く何度も口の中〜というところはイメージは中学生くらい。そして、サビでは

時はこぼれていくよ ちゃちな夢の世界も
すぐに広がっていくよ 君は色褪せぬまま
悪ふざけで飛べたのさ 気のせいだと悟らずにいられたなら

と、ここまで過去形だったのが現在形に変わり、初恋に囚われた男の哀れな末路が浮かび上がってくる、このエグさよ!「気のせいだと悟らずにいられたなら」というのがとても残酷な、取り返しのつかない苦しみですよね......。
私なんかも未だにこの曲を聴くと浴衣にサンダル履きのあの子の後ろ姿をぼんやりと眺めていたことを思い出します。この歌の主人公とは違って今ではもう何とも思ってないけど、これ聴いた時だけはちょっとセンチメント。


6.楓

出ましたよ。たぶん御三家(空飛べ、ロビンソン、チェリーのこと)以外の曲では最も知名度が高い部類に入るのではないでしょうか。
ピアノの音からのイントロが「ここがアルバムの一つのクライマックスやで!」と教えてくれるかのようで、すでに名曲のオーラがぱねぇっす。

そしてメロディがエグい。
以前何かのテレビで平井堅草野マサムネの歌に対して、「ビブラートやこぶしといった技巧を一切使わず、上手そうに見せずにさらっと難しいメロディを歌いこなす上手さ」というように評していましたが(うろ覚えなので違ったらすみません)、その時例に出されていたのが(確か)この曲でした。まさにその通りで、さらっと歌ってるから俺も歌えるわと思って歌ってみた私は5分後には落ち武者みたいに無残な姿になって発見されたという......。
てか、なんなら口笛ですら音程取れない。いや、むしろ頭の中ですら歌えない。だからこそ、心の中で一緒に歌いもできずにただ聴いて、ただただ圧倒される、そんな美しいメロディです。

歌詞の内容については色々と「意味がわかると怖い話」的な通説が出回っていますが、それはそれとして、私はやっぱり恋人との死別の歌に聴こえます。

かわるがわる覗いた穴から 何を見てたかなぁ?

この"穴"というのはたぶん望遠鏡の穴のような、でも物理的な望遠鏡ではなく、二人の将来を、"一人きりじゃ叶えられない夢"の行き先を、つまりは未来を見る望遠鏡、というイメージ。でもそう言っちゃえばダセェところをこういう言い方するあたりがほんとにセンスですよね。私、スピッツのタイトルや歌詞の"言葉"でダサいもの一つも見つけられないですもん。まぁ、強いて言えば「ナサケモノ」かなぁ、ちょいダサ。
突然のナサケモノへのディスは置いといて、

さよなら
君の声を抱いて歩いていく

というのは、普通に受け取れば死んだ彼女のことを歌っているようにしか聴こえないですもんね。

風が吹いて飛ばされそうな軽いタマシイで
人と同じような幸せを信じていたのに

ってとこがめちゃくちゃ好きです。
タマシイがカタカナ表記であることにすら色んな含意がありそうですが、私はここでいうタマシイというのは自分という人間の精神性というイメージ。みんなと同じような本物の"人間"になりきれないような、レプリカの軽さ、その軽さを持った精神を、皮肉めかしたカタカナで、しかしそれが自分そのもの、まさに魂であるという意味での「軽いタマシイ」。というのは結局私はニセモノなんだという、人になりきれなかったデキソコナイの哀しみを私が抱えているから、なんて言ったらカッコつけすぎですが、要は人の気持ちが分からなくてジコチューなんですよね。そういう自己愛の強さの中で他人とちゃんと関われる他の人を羨む気持ちが私の中にあるから、こういう解釈になるんです。
などと長々とどーでもいい自分語りをしましたが、歌詞全体の意味がはっきり分からなくてもフレーズ単位で自分を投影できるのもスピッツの歌詞の魅力!と無理やりまとめてみましょう。

また、Cメロの「瞬きするほど〜聴こえる?」というところも素敵。
瞬きするほど⇔長い季節、という、一瞬なのか長いのかという矛盾が、一気にリスナーを内面の世界に連れていくかのよう。その中でこだまする声......聴こえる?

っう"あ"あ"!キツすぎて吐くわ!


7.スーパーノヴァ

そんなヘビィな「楓」から心機一転するようなハードロック調の曲。延々繰り返されるイントロのギターのフレーズがクセになります。
歌詞は抽象的でさっぱり分からないですが、稲妻、地獄、鋼鉄、革命といったハードロック歌詞辞典に載ってそうな単語(なんだそりゃ)が並び、語感がおもろい!
一方で、「膨らみもくぼみも」「オレンジ色の絵の具で汚し合う朝まで」「ひとつ残らず燃やそうよ」といった性的なイメージのあるフレーズもあって、すごい雑な言い方をすればハードコア・セックスのイメージ(!?)。
スーパーノヴァ」というのはまぁなんか星が爆発することらしくて、それもエロっぽい気もしませんか?私は男だから分からないけど、女性の絶頂というのは、それはもうまるで恒星爆発のようなエネルギーを伴う云々......(フェードアウト)


8.ただ春を待つ

なんか、みょ〜んって感じの曲。
......酷い!音楽的なことわかんないから説明の雑さが酷い!なんかギターの音だと思うけど、にょわ〜んってさせてますね。だめだ、諦めよう。
ま、とにかく不思議な音で、気だるい心地よさが素敵です。
仮タイトルは「環八ラバーズ」。最初は渋滞待ちするカップルの歌を作るつもりで書きはじめたらしいですが、実際はもっと色んなイメージを包含した曲になってます。
「春」というのが、季節としての春とも、恋愛的な人生の春とも、入試のサクラサクみたいなイメージにも取れて、人それぞれの「春」を想って聴けるんですね。

ただ春を待つのは哀しくも楽しく

というサビ。何にしろ待ってる間、実際に手に入れるまでは、まだ持っていないからこその気楽な楽しさや、待つこと自体の楽しさというのもやっぱりあるんですよね。
そういう、歌詞の上でもやはり気だるくも心地よい感じが曲調にピッタリ合った、良い味出してる名脇役みたいな曲です。


9.謝々!

イントロからしてトランペット、トロンボーン、ジャズっぽいピアノ、女性のコーラスが入ってるめちゃくちゃポップな曲。軽快なドラムの音も良いですね。
歌詞にくす玉🎊が出てくることも含めてなんかこう祝祭感に溢れていて、このアルバムで唯一手放しに明るい気持ちになれる曲です。

終わることなど無いのだと 強く思い込んでれば
誰かのせいにしなくても どうにかやっていけます

「思い込む」とか「どうにか」というちょっと自信なさげな感じもありつつ、前に進んでいく強さが感じられます。
例によってシチュエーションはよくわかりません。最初はにぎやかさから結婚のイメージがあったものの、「今度は一人ぼっちでも」のところとそぐわないような気も。
通説ではプロデューサーの笹路さんから巣立ったことについての歌と言われています。なんにしろ、聴いて元気でるし、苦悩の中にいたという当時のスピッツがこういう曲を歌っていることにも救われる気がします。


10.ウィリー

ゴリっとした感触のベースのイントロが印象的なミドルロックチューンです。
「いぇ〜〜」「うぉ〜〜」というゆるい雄叫びが心地よいです。「うぉ〜〜〜〜きな夜と(大きな夜と)」と、雄叫びを歌詞に組み込んでる遊びもスピッツには珍しいような気がします。
Cメロのとこのコーラスとか、その後のい"えぇえあ"〜〜っ!みたいなシャウトが後ろで控えめに鳴ってるのもおもろカッコいいです。
あと、アウトロの最後のとこのベースとギターのでんでーんじゃらーんってとこもイイ。

歌詞は夢を追う若者の葛藤と決意、というイメージ。
いきなり「サルが行くサルの中を」と皮肉っぽいとも滑稽ともつかぬヘンテコなフレーズがマサムネ流ですが、

だんだんやめたい気持ち湧き上がっても手に入れるまで
もう二度とここには戻らない

というところなんかはストレート。
と思いきや、

甘く苦く それは堕落じゃなく

というところは何のことやら。ただ、甘く苦く堕落じゃなくと単調に韻を踏んでいるのが気だるいというか、眠たげな感じを出していて、眠れないからいっそ朝まで踊り明かした後の眠りについて「それは堕落じゃなく」と言ってるのかなぁという印象。
個人的には「電話もクルマも〜堕落じゃなく」までにちょっとエロいイメージもありますね。電話とかクルマとか、何とは言わないけど隠語っぽいし、夜と踊り明かすのも別の隠語っぽい......
......いけないですね、スピッツ聴いてるとなんでもエロく思えてしまう......。しかし、堕落じゃなくと言い訳がましく言っているのにはエロ解釈も合うのでは。


11.スカーレット(Album Mix)

澄み渡るような音色のイントロからただならぬ名曲感ですが、一言目の「離さなーい」で早くもそれが確信に変わる名曲中の名曲of the名曲。
音的には、後ろで鳴ってるキーボードやコーラスが柔らかい印象とともに、名曲としての真摯さ(なんだそれはと思うかもしれませんが、ニュアンスです)を醸し出しています。

離さない このまま 時が流れても
ひとつだけ小さな赤い灯を守り続けていくよ

この、「赤い灯」というのがタイトルの「スカーレット」でしょう。
赤い灯とは何か。何かあったかくて、小さくても大事なもの。ここに何を当てはめるかは聴く人次第ですが、私はこれは恋の初心だと思います。時が流れても、君を大事に思う気持ちは守り続けるよ、と。
そう、私はこれはプロポーズの歌、というか、彼女とのウン周年記念日のデートの前の日に明日プロポーズしようと決意する男の歌、だと思っています。
記念日云々というのは、「時が流れても」「無邪気なままの」と、変わらないことを誓う様が記念日などの節目をきっかけに改めて君の大切さを噛み締めている、というイメージから。
「乱れ飛ぶ声」「ほこりまみれの街」と、世間の冷たさを描き、それと対比した「赤い灯」の暖かさと大切さが染みてきます。

プロポーズの前日、というのは

ありのまま全てぶつけても 君は微笑むかなぁ...

というところの不安な気持ちから。
このフレーズの後物思いにふけるような(?)感想があって、再び最初の「離さない」のフレーズに戻ってくる構成もめちゃくちゃ素敵です。
今ドキなんかはもう「恋人いりません」「結婚しません」なんてのが主流になってますが、私はそういうのは「じゃあ何のために生きてるの?」と思ってしまうタイプです。要は、結婚したい!でも、特に大きな問題はないうちの過程でさえオカンは「あんなんと結婚したのが最大の汚点だわ」とか言い出すし、「結婚は人生の墓場」っていう有名な自由律俳句もあるくらいですから不安もあり......。
でも、この曲を聴いてるとやっぱり結婚に憧れる気持ちが強くなっちゃいますよね。
とか熱く語ってるけど今のところはそんな予定はないので私のファンの女性陣はご安心ください。ふはは!

あと、アルバムの流れから見て、実質一曲目の「センチメンタル」が思春期の始まり、これは結婚と、大きく青年期のはじめから終わりまでをアルバム全体で描いているようにも聞こえます。まぁそれぞれの曲の解釈自体私の独断なので、スピッツが意図的にそうしてるとは言いませんが。個人の感想として。


12.フェイクファー

そしてアルバムの掉尾を飾るのがこの表題曲。
静かにはじまり、徐々に高まっていき高まっていき、大サビの部分で最高潮になり、最後にはまた静かな冒頭に戻ってくる、一曲の中でも行って戻ってきた感があってそれがアルバムの締めらしい余韻を残します。

歌詞はまたなんとも拗れに拗れた感じですが、どうしても「スカーレット」を聴いた後だから前向きに解釈したい気持ちになります。
タイトルからしてフェイクのファーですからね。偽物の毛皮。その温もりも偽物だよ、と言われているような......。
「たとえ全てがウソであっても」「分かち合うものは何もないけど」「偽りの海に体委ねて」と、僕と君の関係が偽りであるかのような口ぶり。
でも、これらのフレーズの続きを見てみると「ウソであってもそれでいいと」「恋のよろこびにあふれてる」と、肯定的な言葉が続きます。
こっちの方を真と取ると、一気に共感できる歌になっちゃうんです。
そうすると、

君の名前探し求めていた たどり着いて

というところも真摯な響きを持って聞こえます。私はこの部分は1曲目のエトランゼと対応しているように思います。ウミガメの頃すれ違っただけのエトランゼ(見知らぬ人)、その名前に、ここにきてやっとたどり着いた。このアルバム自体がそんな壮大な前前前世からの運命の物語に見えて、思わず

「君の、名前はーー」

と言いたくなります(僕らタイムフライヤー♪)
いやぁ、やっぱりRADWIMPSは最高だな!

いや、冗談はさておき......。
また自分語りで恐縮ですが、私はこう、毛皮のマリーズ銀杏BOYZを聴いて「あいあいあいあいしてましゅだいしゅき〜〜!」だの「君のことが大好きだからあぁぁぁぁ!」とかカラオケで歌って自分で泣くような人間です。いわば、恋に恋するってやつ。そしてそんな自分に酔ってるところがあります。
でも一方で冷静な自分は「俺は恋に恋してるだけであの子に恋してるわけじゃないな」と思ったりもする。
この「フェイクファー」という曲を聴いてると、私はそういう自分の気持ちこそがフェイクファーな気がするんです。
それでも、私は自分なりに本当に君のことが大好きだから僕は歌うよと思ってるし、それが人から見たら全てウソであっても、それでいいと思うこともあります。
なんだか最後なのにまとまらなくなってしまいましたが、要は私の恋心は偽物かもしれないけど、それでも恋のよろこびにあふれてるんだよ、という、応援歌として、私はこの曲を聴いてます。
もちろん完全に自分を投影し過ぎていて客観的な解釈からは程遠いですが、このブログはあくまで「感想」ですので悪しからず。





というわけで、全12曲書いてみました。疲れたわ。
書いたのを見返してみると思い入れの有無で分量にかなり差がありますが、そーゆー好きな曲とそうでもない曲があるのもアルバムの醍醐味。そして今回聴き直して新しい発見があったり昔はそうでもない曲だったのが好きな曲になったりと、やっぱり何度聴いても楽しめちゃったのでスピッツはすごい。そう思います。

連城三紀彦『明日という過去に』読書感想文

全編が二人の女性の手紙のやり取りという体で進行していく書簡体の長編小説。
連城作品の中では無名な方だと思うのですが、なぜか今も絶版を免れてAmazonとかでは新品で入手可能という不思議な作品です。

20年来の友人の綾子と弓子は、しかしお互いに大きな嘘を隠していた。弓子から綾子への手紙をきっかけに、女たちの戦いが始まる......。


書簡体。
地の文で嘘を書いてはいけないミステリの世界において、書簡体というのは嘘書き放題=どんでん返しし放題という最強の武器であり、下手にやると後出しジャンケンばかりの興ざめなものになってしまう扱いづらい道具でもあると思います。
ただ、少なくとも中期以降の小技を連発する作風の連城作品にとっては白米と明太子くらい相性ぴったりなんですよね。
なんせ、連城三紀彦といえば心理描写を極めすぎて異次元の心理が現れる作風(私が勝手にいってるだけ)なので。
第一の手紙から途切れることなく毎度嘘や新事実を積み重ねる小どんでん返し連発の構成は、最初の方こそ予想の範囲内にとどまるものの、「この調子が続くのかな......」と思ったところで新展開を迎えたりするので面白いです。

それ以降のことはもうネタバレが怖いので特に書けませんが、終盤のわりかし大きなどんでん返しと、さらにもう一発余韻を残す終わり方によって登場人物たち、特にとある人の姿が印象に残ります。
短いながらもしっちゃかめっちゃかした挙句最後は綺麗にまとまった、連城長編の王道な傑作。オススメです。

スピッツ 『醒めない』今更感想

さて、突然ですが、スピッツの全アルバム感想をこれからやっていきます。
といっても私の中では突然ではなく、高校生の時からいつかブログでやりたいと思っていつつずっと出来ていなかったことなのです。恐らくスピッツの新作が出るであろう今年、ついにやっちゃおうかなというわけで。
とりあえず第1回目は現時点での最新作であるこちらのアルバムからいきまっす!

醒めない(初回限定盤)(Blu-ray付)

醒めない(初回限定盤)(Blu-ray付)



てわけで、『醒めない』 は2016年7月27日にリリースされた、スピッツの15枚目のオリジナルアルバムです。
前作から3年ぶりということと、全14曲のうち「雪風」と先行シングルの「みなと(cw ガラクタ)」を除いた11曲が未発表の新曲ということがあって発売前の期待値はバリ高でしたが、そんな期待すらあっさり越えられちゃいましたね。名盤です。

むかし流行った「3の倍数でアホになる」という芸人がいますが、スピッツの場合3の倍数枚目のアルバムは名盤になるというジンクスがあります。私が勝手に作っただけですけど。
でもでも、
3枚目『惑星のかけら』
6枚目『ハチミツ』
9枚目『ハヤブサ
12枚目『さざなみCD』
と見ていくと、なんとなくスピッツの中でも重要作が揃っている感じがしませんか?
......まぁそんな感じがするかどうかはともかく、この15th Album『醒めない』も、近年のスピッツにとっての大重要作なのです!



このアルバムの大きな特徴として、アルバムとしてのテーマ性が強いことが挙げられます。
近作の『とげまる』『小さな生き物』では、ダウンロード全盛の時代を考慮して、アルバムの流れよりも一曲ずつ単体でDLしてもらっても大丈夫!という点が意識されていたようです。
しかし、本作は一転して、今だからこそあえてアルバム通して聴く良さを......という、アルバム形式に呪縛された音楽ファンには嬉しい仕上がりになっています。特に「雪風」について、私は人生で初めて「アルバムマジック」(シングルなどですでに発表されていた曲がアルバムに入ることで違った聴こえ方をする)という言葉を実感しました。

で、肝心のこのアルバムのテーマですが、
①醒めない
②死と再会
の2つだと思います。思いますっても私が考えたんじゃなくて、①はタイトルだし②は草野マサムネが言ってたんですけどね。(。・ ω<)ゞてへぺろ

①30年バンドやってきてまだ音楽に醒めていないというファンへの宣言なのでしょう。ファンの側としても「わかる〜。まだまだスピッツに醒めないわ〜〜」って感じです。と言うと軽く聴こえますが、物心ついた時からファンやってるともうこんなもんですよ。特に感動的に言うまでもなく当たり前にいつまでも醒めないもの、それがスピッツ

②詳しくは各曲の感想で書きますが、別れの歌が多い序盤、終盤の死の歌、それに対する感動のエンディングと、本作は「死(別れ)と再会」をテーマにした一つの物語のようになっています。
インタビューで草野マサムネは「コンセプトアルバムを目指して途中でやめた」みたいなことを言ってましたが、結果的に多彩な曲がありながらも全体になんとなくの流れがある、ちょうどよく通しで聴きたくなるアルバムになってると思います。

あと、テーマとはまた違いますが、全体を通して演奏やアレンジが若返ってますね。
「ヒビスクス」はスピッツ流おしゃれミュージックだったり、「ブチ」のキメまくりのロックサウンドは誰とはつかないけど最近のバンドっぽい。アジカンとかアレキとか?
まぁそんな感じで、音もトータルコンセプト(未遂)も今までになく進化した名盤でありますよ。


以下全曲一言感想〜。




01.醒めない

アルバム表題曲。
最初に「醒めない」というアルバムタイトルだけが発表された時は、「夜を駆ける」とか「新月」みたいな静かで幻想的で夜っぽいイメージを勝手に持ってしまいましたが(醒めない悪夢、というニュアンス)、実際には軽快なリズムで賑やかなイントロから始まる超絶ポップなロックソングでびびりました。
イントロの感じは「チェリー」+「運命の人」というイメージですかね。
ってわけで実際には「醒めない」というタイトルは、ロックから、そしてスピッツであることから"醒めない"という、デビューほぼ30年にして所信表明のような意味でした。
そして、歌詞では

任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい

と、ファンに向かっていつになく自信満々に言ってのけています。今までファンに対して語りかけるような曲なんかなかったのでめちゃくちゃびびりましたが、彼が任せろというからにはこれはもう任せちゃえばいいのではという説得力もあって泣けましたね。ファンやっててよかった!超ド級のご褒美💕
さらには、

さらに育てるつもり 君と育てるつもり

と、もはや完全にファン参加型になってきたので狂喜!俺も育てるぞマサムネ!!

......ところで、この曲は上に書いた「別れと再会」というテーマからは外れたものですが、「死」「別れ」というテーマ自体これまでスピッツが歌ってきたものなので、一曲目にこの「醒めない」が入ることで「これから醒めないままでいつものスピッツはじめるよ!」というまえがきのような位置付けになってて結局この曲もきちんとアルバムの流れに組み込まれてるんですね。
そして......




02.みなと

2曲目のこれは、タイトルからしてど直球な別れの歌(港といえば、別れですよね?)。
このアルバムを半コンセプトアルバムとしてみた場合、これが本編の始まりとも言える曲です。

船に乗るわけじゃなく だけど僕は港にいる

君ともう一度会うために作った歌さ
今日も歌う 錆びた港で

というのが冒頭とサビ終わりの歌詞。
僕がなぜ君と会えないのかなどの具体的な説明は一切排し、「みなと」という漠然とした舞台を使うことで聴く人によって様々な想像が当てはめられる曲です。まぁスピッツはみんなそんな感じですけど、特にこれは巧い......。
そもそも君の行き先からして、物理的に外国とかに行っちゃったようにも、別れて心理的に遠くに行ったようにも、はたまた天国へ行ったようにも取れる。巷では東日本大震災についての歌だと言われていて、まぁ確かにそれが一つの模範解答のようには思えます。しかし、そこに固定せずに自由な解釈を楽しませてくれる懐の深さが良いですね。

遠くに旅立った君の 証拠も徐々にぼやけ始めて
目を閉じてゼロから百まで やり直す

というところを聴くたびに泣きます。
私自身はそういう悲しい別れを経験したことはないんですけど、ゼロから百までやりなおすという言葉のセンスがエグい。

音的には何と言っても間奏の口笛が良いですね。聴くたびに真似して口笛吹くんですけど、あんなにうまくは吹けないわ。
あと、Mステでこの曲やった時にマサムネが歌の入り間違えたのが可愛かった。




03.子グマ!子グマ!

これもまた別れの歌ですが、「君ともう一度会うために」と言いつつもう会えなさそうな予感をたたえた「みなと」とはまたちょっと変わって、強がって笑顔で「君」を送り出す歌です。
この曲でも、君との関係が曲のタイトル的には親子というのが模範解答に思えつつ、失恋の歌としても違和感なく聞けて、やはりそれぞれの立場で、子供がいれば子供の巣立ちの歌として、学生とかなら失恋の歌として聴けちゃう名曲。
音はおしゃれミュージック。
この曲については単体で記事書いたので詳しくはこちら。

スピッツ「子グマ!子グマ!」を聴いた男




04.コメット

タイトルの「コメット」というのは彗星のことで、金魚の品種名でもあります。
一瞬きらめいて消えてしまう彗星のような"君"との時間の儚さを、黄色い金魚をモチーフに歌った曲で、ダブルミーニングなタイトルが光ります。

美しく、切なさも湛えたピアノのイントロから始まり、バンドサウンド主体の静かなAメロ、抑制されつつ盛り上がる前触れを見せるBメロと来て、再びピアノがフィーチャーされてスピッツの全曲中でも屈指の美しいメロディが炸裂するサビへと、なんかもう、エモエモのエモです。聞いてると思わず心の中で一緒に歌ってしまい、心の中にとどめたつもりが力入りすぎて喉から変な音が出ちゃいます。そんな醜態を晒すほど素晴らしいメロディ。

で、すっげえのがそんなスピッツ史上屈指の美メロ、つまりはJ POP史上屈指の美メロ(ファンの欲目です)にくっついた歌詞がこれまたありえないくらい美しくて、全然メロディに負けてない、完全に美しく調和してるんですね。さっきから興奮して米津玄師ばりに美しい美しい言ってますけど。

黄色い金魚のままでいられたけど
恋するついでに人になった

金魚というワードは前のアルバムの「りありてぃ」を彷彿とさせます。あの曲では水槽に囲まれた閉じた存在として"金魚"という言葉が使われていましたが、この曲はその延長線上というか続編的なというか、水槽の中に閉じこもるのをやめて外へ出ていって恋をしたというストーリー。「ついでに」という捻くれた言い回しも可愛い。
しかし、その恋がどんなものかには触れられないまま、Bメロではもう別れを目前にしたシーンにまで時は進んでしまいます。
その別れは、絵に描いたような、駅のホームで列車の扉を隔てた別れ。

「ありがとう」って言うから 心が砕けて
新しい言葉探してる
見えなくなるまで 手を振り続けて
また会うための生き物に

手を振り続けるところまではベタなお別れの風景ですが、「また会うための生き物に」がいいじゃん。金魚から人間になって、また会うための生き物になるっていう、いわば第三形態ですね。
言ってしまえば、駅のホームでお別れして、また会うためだけにこれから生きていこうと思う、それだけの歌ですが、草野マサムネの天才的な言葉選びのセンスにかかればリアルでありながらどこか幻想的で、切なくも前向きな気持ちにもなれる最高のラブソングに仕上がっちゃいます天才日本一!

「さよなら」ってやだね 終わらなきゃいいのに
優しいものから離れてく

というところも好き。「優しいものから離れてく」というのが、今回だけではなく人生がさよならの連続であることを一言でさらっと言い表してます。ワードセンスの塊......。




05.ナサケモノ

アルバムの発売前、タイトルだけ見てナンジャコリャと思った曲ランキング第3位。もちろん1位は「子グマ!子グマ!」で2位は「モニャモニャ」。やべえ、50歳のおっさんバンドがゆるふわゆめかわいい曲名ばっかやんけ!
とはいえ、「ハネモノ」なんかもあるくらいだからスピッツらしい造語タイトルとしてすんなり受け入れられました。
ゆるキャラみたいな名前の「ナサケモノ」とは、サビの歌詞にある「情けない獣」の略。
イントロではゼンマイを巻くような音やチクタクという音など、おもちゃっぽい音がバンドの演奏の後ろで鳴らされていて、バンドサウンド自体はかっこいいのにどこかコミカル。タイトルのイメージにはぴったりです。
しかし歌詞の内容はまたも失恋ソング方面で。
一番は「恋のはじまり」なんかを思わせる甘酸っぱい歌詞。君の名前を褒めるというスピッツらしい愛情表現は「君みたいないい匂いの人に〜」「君のくしゃみが聞きたいよ」に連なる変態胸キュンシリーズ!(なんだそれ)
今までの妄想的な歌詞と決別するかのような

イメージに篭らずに届けよう

という強い決意のフレーズがあるかと思えば、

これを恋というのなら 情けない獣さ

と弱腰なところも見せる、このへんのふにゃっとした感じがスピッツ
2番では恋の過程が歌われます。アッシーくんメッシーくんのギャグはちょっと年齢がバレるからやめといたほうがいいのでは?と余計な心配もしちゃいますが......。

夢中で生きていられた ありがとう

と言うフレーズの過去形に違和感を感じたところで、サビではこの恋が既に終わっていることが明かされ、タイトルのナサケモノという言葉が今度は切ない響きを持ち始めます。
にしても、「逝けてない屍さ」というのはすごいフレーズですよね。失恋した自分を幽霊に例える歌はあれど、屍というワードを(しかもこの可愛い曲調で)もってくるセンスよ......。
そして、ラスサビでは「エンドロールには早すぎる」の「意外なオチに賭けている」とほとんど同じことが歌われますが、曲の雰囲気のせいなのかなんなのか、「エンドロール」が諦めつつの強がりに聞こえるのに対し、この曲はまだ希望があるように感じられます。これはほんとに感じなので根拠とかはないけど、失恋ソングなのにじめじめせず風通しの良い爽やかな曲になってます。だからこそ切ないというのももちろんありますが......。




06.グリーン

ジャカジャーンジャカジャーンという力強いリフから始まり、疾走感のあるずっちずっちというドラムで引っ張る爽快ロック。
ナサケモノで兆した爽やかな風が、この曲で吹き荒れます。スピッツの曲でもトップクラスの爽やかさ。くどいですが、50歳のおっさんバンドだぞ?こんなにエヴァーグリーンでどうするもっと渋みを出せ!とキレたくなるくらい鮮烈に爽やか。

そして歌詞と音のマッチング具合もスピッツは毎度すごい。
この曲の歌詞は、内向的なオタク少年が"君"に出会ってふっきれる、みたいな感じ。その君というのが、ステキな女の子でもあり、ロックンロールでもある。ダブルミーニング
いきなり2番から引用しますが、

コピペで作られた 流行りの愛の歌
お約束の上でだけ 楽しめる遊戯
唾吐いて みんなが大好きなもの 好きになれなかった
可哀想かい?

という、J POP界の大御所がそんなこと言って角が立たないかいと思うくらいストレートな表現。これがそのまま、クラスのカーストの下の方から、スピッツを聴いて「俺はお前らより音楽のセンスがあるんだ」と唾吐いてた中学時代の記憶と重なって泣けてきます。
私にとってあの時代は間違いなく黒歴史。まぁ私の人生自体黒歴史とも言えますけどそれは言わないお約束。
そんな黒歴史を、

でも悩みの時代を経て 久しぶりの自由だ

という一言で救ってくれるんです。この爽快感ったら。
ここまで別れの曲が続きましたが、ここで新たな風が吹き込んだわけです。




07.SJ

タイトルはメンバー曰く「坂上二郎の略」だそうですが、本当の意味は明かされていません。Spitz Japanとか色々考えましたが、わからん。あ、スピッツジャパンはもちろん冗談ですよ、やだなぁ。とりあえず色々と想像の膨らむ良いタイトルだと思います。ただ覚えづらい。よく間違えてSPとかJAとか言っちゃうのは私だけじゃないはず。

まず音楽的なところからいくと、構成が変わってますね。スピッツの曲ってABサビABサビC大サビというのが多いですが、この曲は言うなればサビAサビCAサビみたいな。曲の中でサビの割合が高く、常に盛り上がってる印象。そして音もスピッツにしては重厚感のあるロッカバラードなので、3:18という短さに反して壮大な印象のある曲です。

歌詞は私は完全にスピッツというバンドのことだと思ってました。

夢のかけらは もう拾わない これからは 僕が作り出すから

というのがこう、頑張るぞ宣言みたいな。
ただ、よく読んでみると、「醒めない」で歌われたスピッツというバンドの無敵感に比べてこの曲の歌詞はかなり陰がある感じがします。
他の人の解釈を調べてみたら、これは駆け落ちの歌だというものがあって、なるほどそういう解釈のが腑に落ちるかなと思いました。




08.ハチの針

これカッケェっすよね。
全体にロック感の強いこのアルバムでも一番ロック感の強い曲。ギターロック。
で、Cメロではちょっとラップ調というか「どんどどん」「Na・De・Na・Deボーイ」みたいになる。若い!(笑)

歌詞はまた分かるような分からないような。
スピッツというバンド名は「小さいけどよく吠える」というバンドの性質を表していますが、ハチというのも小さいけど針を持ってる虫でありまして、SJは違うとしてもこの曲こそは絶対スピッツというバンドについて歌っているんだと思います。
そうだとするとまぁざっくり言えば音楽業界の思惑とかは知らん!リスナーの"君"にだけ歌を届けたいんだ!という所信表明、「醒めない」Repriseみたいな内容なのかなぁと。
ただ、スピッツが魔女とか針とかハニーとかを歌詞に出してくるときは十中八九エロい意味なので、もしかしたらそっちの意味とダブルミーニング的なことなのかも?

あと、「亡霊〜」のとこの歌い方がめっちゃ好きなんだけど分かる人います?




09.モニャモニャ


50歳のおっさん「モニャモニャが一番の友達〜♪」
ヤバいですよね。
モニャモニャはジャケ写に写っているバケモノのこと(失礼)。ぬいぐるみのグッズ化とか期待してましたが、実際したのが5000円とかそんくらいのでかいやつだったんで買うのは諦めました。でもそんなん発売するくらい親しみやすくてそばにいてほしい存在がモニャモニャくんなのですね。

音もすっごいほんわかとしてて、ペダルスチールギター(って楽器らしい。よく知らないけど、歌詞カードにそう書いてあります)のちゃんちゃんいう音が眠気を誘います......で、私は最近は音楽聴くのだいたい車の中だから、この歌は眠くなるのでよく飛ばしてました(ごめんなさい)。

あと間奏のギターの音がなんかビートルズでこういう音色聴いたことあるような気がするんですけどうろ覚えすぎてなんの曲かも、そもそもほんとに似てるのかも分かんない......。

歌詞は真の意味で癒し系。
主人公の"僕"にはどうも何か悲しいことがあったようで、モニャモニャというイマジナリー・フレンドを作って自分の殻に閉じこもっています。しかし、モニャモニャと遊ぶことで少しだけ癒されて、

この部屋ごと 気ままに逃げたい
夢の外へ すぐまた中へ

なんて、まだパッと外に出る勇気はないけど、出て行きたいという気持ちが兆したような、そんな歌。
なんかのインタビューでモニャモニャはロックの暗喩だと取れるようなことを言っていた気もします。そう考えるとあいみょんの「君はロックを聴かない」のサビの「恋を乗り越え」てるまさにその最中みたいにも思えます。うん、これはあいみょんのエピソード0ですね(てきとう)。




10.ガラク

「みなと」のカップリング曲ですが、スピッツカップリングらしいヘンテコな曲です。
縦ノリなロックサウンドの後ろでガラクタというタイトルを表すかのように、おもちゃの楽器みたいな音がわちゃわちゃと鳴っていて、カッコよくも可愛くいかがわしくもある曲。

歌詞は文章ごとの繋がりが全くなくて、意味さえあるのかどうか分からないのですが、実際は結構単純に解釈してもいい気もします。

ゲスな指先 甘辛い ガラクタ ラブストーリー

はい、こんなこと言ったら川谷絵音ファン失格かも知れませんが、ゲスといえば不倫。これはもう、「たらちねの」といえば母、みたいなもんなので間違いないはずです!
この歌が不倫の歌とすると、

しばらく会わないうちに 素敵になってジェラシー

というところから、元カノに再会したら結婚してたけどそっからズルズルと......みたいなイメージが浮かびます。
まぁ、そうやって一応の筋道が立ったとしても、結局のところ全体に散りばめられた不思議ワードの大半はよく分からないままなのですが、その辺はもう語感を楽しむということで、変な言葉の羅列おもしろーいっていって聴きます。
でも、「夢うつつで聞く 風鈴気持ちいいな」というのは私は絶対エロい話だと思いますがいかがでしょう?

あと、2サビ終わりの「あ〜あ〜あ〜あぁ〜♪」ってとこが好き......というか、こういうのなんか昔の別の曲でもありませんでしたっけ?思い出せん......なかったっけ......。




11.ヒビスクス

「ガラクタ」のガラクタ感溢れるサウンドから一転して、オシャレ洋楽風の壮大なアコースティックピアノの音からはじまります。そのままAメロBメロと、演奏はピアノと静かなギターの音だけ。アルバムが出る前にCMでサビの部分を聴いているので「こんなんだっけ?」と思ってたら、あれですよ。
まさかスピッツの曲でサカナクションの「夜の踊り子」と同じ驚かされ方するとは!
あとまさかスピッツがこんなEDMみたいな曲作るとは!ちょっとスピッツにしてはかっこよすぎて笑っちゃいますよね(失礼)。

歌詞の内容は白い花が咲く美しい風景ながらも不穏さもあってなんとなく雰囲気で今まで聴いていたのですが、調べてみると特攻の話だという考察が多くて目からウロコでした。
一旦そう思っちゃうとそうとしか聴こえないのですが、そう考えると

戻らない僕はもう戻らない
時巡って違うモンスターになれるなら

という歌詞のスピッツらしからぬストレートな反戦のメッセージが胸を打ちます。




12.ブチ

これはゴースカで初めて聴きましたねぇ。懐かしい。
曲調自体はわりと癒し系だけど、演奏はロック。
そもそも、イントロいきなり「ジャッ、ジャッ、ジャッジャッ、ジャッ」というキメから始まるのがすごいなんかこう、若返った......?という感じ。あんまり演奏については分からないのであれですが、アジカンとかアレキとかの曲っぽさすらあります。
この曲(と最後の「こんにちは」)はスピッツのセルフプロデュースで、クージーボコーダー、オルガン、シンセで参加していたりと、まさにライブから生まれた曲なのです。
また言葉の選び方も、Aメロで微妙に韻を踏んでるようになっていて語感が気持ち良かったりと、あらゆる意味でライブ映えする曲になってます。
歌詞の内容はモテない男に初めて彼女が出来た歌......というイメージですがどうでしょう。

心は言葉と逆に動くライダー

しょってきた劣等感その使い方間違えんな

というところから、ひねくれてて自信がない、つまりはモテない野郎の姿が見えてきます。しかし、

ジグザグ転ばずに かけ抜けて 消してしまった呪い

君と出会ったことで精神的童貞性という呪いを消してしまった、ということだろうと思います。

優しくない俺にも 芽生えてる 優しさ風の想い

というのもすごい分かる。はぁ。がんばろ......。




13.雪風

ドラマの主題歌として書き下ろされ、アルバム発売より1年前に配信限定シングルとしてリリースされていた曲なのですが......このアルバムのここに入ることでアルバムマジックを起こしてとんてもない名曲に化けているのに驚きました。
なんなら、シングルとして出た時には「まぁいい曲やな〜」くらいでそこまでハマらなかったのが、今ではスピッツの好きな曲ベスト10には入るほど。

この曲は実はスピッツ初の雪ソングらしいです(たしかに冬っぽい曲はあっても雪の歌はなかった気がする)。しかし音にも歌詞にも、雪の物悲しいイメージと、寒さから逆に連想される「暖をとる」というような暖かいイメージが両立されていて、しっかり雪ソングしてます。

歌詞の話に入る前にアルバムのここまでの流れをざっとおさらいします。まずはアルバム全体の所信表明のような「醒めない」。そこからお別れソングゾーンが「ナサケモノ」まで続き、そのあとは再びバンドの醒めなさを象徴するような曲が続き、その上でこの「雪風」で再び別れの歌に戻るわけです。

で、別れは別れでもこの曲は死別の歌(だと思う)。
というのも、この曲の歌詞には「僕」という言葉が出てこなくて、終始主人公が「君」に語りかけるような形になっているんです。これが、主人公が既に死んでいて、死別した恋人の君が落ち込んでいるのを見て励ましているような、そういう歌に聞こえるのです。
そう考えたらもう、細かく語るまでもなく全ての歌詞が泣けますよね。
そして、全てを包み込むような

まだ歌っていけるかい?

という最後はもう何回聴いてもぞわぞわします。
そして......




14.こんにちは

最後なのに「こんにちは」というセンスがいかにもスピッツw
この曲が「雪風」の後、アルバムの最後に入ることによって、アルバムマジックがかけられ大団円となります。
大団円とは言っても、この曲自体は2分20秒とスピッツの曲の中でもかなり短いもの。セルフプロデュースで4人の音だけで演奏されたテンポのいいロックチューン。イメージはブルーハーツに憧れてた頃みたいな、原点回帰的なシンプルな曲です。こういう軽妙な曲でさらっと大団円しちゃうのがスピッツらしいですね。

で、さらっととは言っても、歌詞は今まで聴いてきた別れの歌たちを全て包み込んで新たな「こんにちは」という、通しで聞けば感慨深くて泣いちゃうようなもの。ずるいわ。

また会えるとは思いもしなかった
元気かは分からんけど生きてたね

今までは輪廻だのなんだの歌っていたスピッツが「生きてたね」という形で再会の歌を書いてくれるだけで泣けるでしょ。
会いたいけど会えない人、昔は当たり前に一緒にいたのに別れてから会わなくなった人......そういう人たちが友達少ない私にも何人かはいます。小学校の頃の友達の青木くんとか、初恋のあの子とかね......。
あと「子グマ!子グマ!」の感想でも散々と見苦しいことを書きましたが、その件についても、今ではもうこんにちはという気分ではあるわけで......。そういうこんにちはのことを想ってちょっと切なくも優しい気持ちになれる歌なんですこれ。
結局トータルコンセプトアルバム(未遂)とは言っても、そのコンセプトはただただシンプルな「こんにちは」なのがスピッツなんですよね。

こんな日のために僕は歩いてる
おもろくて脆い星の背中を

というのが、このアルバムの最後の言葉ですが、聴き終わってからもスピッツの音楽とともに歩いて行こうと思わせてくれる素晴らしいフレーズ。最近のスピッツのアルバムの最後の曲はわりと明るい前向きなものが多い気がしますが、これはその極地ですよね。
人生を「おもろくて脆い星の背中」と表現するのもらしさ満点で、こういう崩れた言葉だけど可愛さだけがあって全然下品にならないところはほんと私も見習いたいです......ツイートとかで......F××kとかA×× ××leとか汚い言葉ばっか使っちゃうから......。




はい、というわけで長くなりましたがスピッツ『醒めない』の感想でした。
書いてみて思ったのは、長い割に内容のない感想だなぁということ(突然の自虐)。
こんなことになるならもっと短くまとめればよかった。というわけで、スピッツアルバム感想シリーズ、次回からはもっと短くします。歌詞の引用も控えます。じゃなきゃあと18枚も書けないもんね......がんばります。

あと、これを書いてる間にスピッツの新曲が朝ドラ主題歌に決まってうほ〜〜っ!と思いました(語彙)。
これでアルバムが出るであろうことも心証的には確定的!楽しみに待ちたいと思います。

加門七海『蠱』読書感想文

私がまだ大学生の頃、一時期ホラーにハマろうとしていた時期があってその時に買ったまま積んでいた本。
紫色の背表紙に『蠱』という魅惑的なタイトル、目次を見ても、魅力的な単語ひとつのシンプルなタイトルが並び、本の長さも5話で200ページと短め。
これは面白そうだし読みやすそう!と思ったものの、結局その時には読まず今になってようやく読みました。

蠱 (集英社文庫)

蠱 (集英社文庫)


とある大学で民俗学を教える御崎教授という人物を狂言回しに、各話で主人公が日常から徐々に怪異の世界に足を踏み入れてしまうという、緩やかな連作形式のホラー短編集です。

全編共通の感想としては、短いページ数でしっかりまとまったお話ばかりなのが良かったです。
構成はわりとオーソドックスで、日常に徐々に怪異が入り込んできて最後にはオチもしっかり決まって余韻が残る......という、いわゆる『世にも奇妙な物語』型。これがうまく行けばシンプルイズベストな面白さに、失敗すればありきたりで印象に残らないお話になってしまうわけですが、本書は前者でしたね。

まず、舞台と題材がナイスチョイス。
都会の大学という平和で日常的な場所に、巫蠱の術や弥勒信仰といった田舎のどろどろした感じを持ち込んでくる良い違和感。怪奇幻想(あっち)と現実(こっち)の境目がふわ〜っと溶けていくような物語の展開が各話とも素晴らしかったです。
また、描く情報の取捨選択が「断捨離か!」ってくらいシビアで、それだけに余計な文章は一切なく話の筋だけに集中して一息に読み終えられるというのも上手いですね。個人的にはホラーって一回本を閉じて集中が途切れるとなんだか嘘くさく感じられてきて続きに入り込めない時があるんですよね。その点本書は一編あたり十数分で読めるので、異界に行ったきり状態で最後まで堪能できました。

そんなわけで、短いけど内容は充実したお話が好きで、ホラー大丈夫な人にはぜひともオススメしたい一冊です。

ちなみに、本書文庫版の「あとがき」は半分小説の続きのようなものなので読後に読んだ方がより楽しめると思います。また、「解説」については各話の内容をオチまで要約した上でちょっとだけ自分の雑感を書くという、(民俗学の知識以外は)正直小学校の読書感想文レベルのものなのでこれも先に読むのはダメですね。


それでは以下各話のちょっとずつ感想〜。



「蠱」

"浮気性の恋人"を持つ主人公の女子大生が巫蠱の術にチャレンジするお話!

はい、のっけから虫が出てくる表題作で嫌になりますね。私は人体破壊系のグロ描写はそこまで苦になりませんが虫はダメ。本作は読んでて虫の映像が鮮やかに脳裏に浮かぶので最悪でした。
巫蠱の術というとどうしても犬夜叉でやってたみたいに色んな虫(犬夜叉では妖怪だったけど)を壺に入れて戦わせるイメージでしたが、本作ではそれとは違いやや婉曲。その内容自体がネタみたいなものなので言いづらいですが、主人公が過去に見た映像の生理的不快感が強く、そこから彼女がああなってしまうことになんとなく納得させてくれます。
また、民俗学的題材を現代の大学という皮袋に注ぎ直す手腕もすごい。本書は全体にそういう雰囲気はありますが、特にこれと「桃源郷」は題材が題材だけに身近な場所が異界になる恐ろしさが特に強いです。
で、ホラーというのはだいたい人が怖いか怪異が怖いかのどっちかですが、本作はどっちも怖いから良いですね。古き良き怪異の怖さと現代ホラーらしい人の怖さの融合。展開と結末は普通ですが、それでも綺麗にストンと落ちるので不気味な余韻が残ります。



「浄眼」

カメラの専門学校に通う青年が自分の眼は人と違うのではないかと悩むお話!

民俗学的匂いの強かった前話とはちょっと変わって、目と視覚の認識についての物語です。
自分に見えている世界は他人の見ている世界とは違う。自分が認識している色、形、方向はどこまで"普通"なのか......?という認識という名の迷宮に入り込んでしまう主人公の不安や疑心暗鬼が描かれていて面白かったです。
ただ、主人公があまりにセンシティブすぎて、そんなことでそこまでアイデンティティ揺らぎます?とはなってしまいます。この辺は怪異が出てこない話なだけにむしろリアリティのなさが際立ってしまっているような......。
ちなみに私もほんの軽度ですが色弱のケがあるらしく、車の免許取る時の色の認識のテストにちょっと引っかかって「まぁ信号は見分けれてるしいいでしょう」みたいな感じで通った経験があるので、その点では身近に感じられましたが。だって私もたまに「その黒い服さ」「黒?緑だよ」みたいな言われますからね......。あれ、私が見てる世界って、もしかして............



桃源郷

主人公の女子大生が弥勒信仰の村出身の友人と民俗学を学ぶ先輩とのカンケイにほのかに嫉妬するお話!

1話目に続いてこれも「ここ犬夜叉でやったやつ!」と。いや、『犬夜叉』って今思うと本格民俗学ホラーだったんですね。あんなもん子供の頃から見せられてたからこんな風に歪んだ人間になっちまったんだ。
それはさておき、犬夜叉即身仏のエピソードが頭にあったから余計に生々しくエグさが伝わってきます。
オチ自体は最初から「あっ」と見当がついてしまうものの、むしろそこにどう結びつくのか分からない主人公の気持ち悪さこそが際立ちます。というか他にもあれだけ色々ある中でまず主人公が気持ち悪いというのもある意味すごいな......。ラストは予想がつくとは言いましたがそれでもあの光景は鮮烈だし、なにより主人公が気持ち悪いので印象的でした。



「実話」

女子高生が友達と怪談話をしていたら根暗で自称「霊感のある」陰キャ男子に脅されるハメになるお話!

これが一番怖かったです。
発端は、女の子たちが怪談を語るところから始まるのですが、主人公はそれを信じてない。そう、幽霊なんかまるっきり信じてないんですけど、信じてなくてもそういう話聞いた後で暗い道を通ったり、なんなら家のトイレに行くくらいでもちょっと怖いっていう感覚はありますよね。よっぽど無感動な人じゃなければ誰しも少しはそういうところがあるはずで、そこを突いてくる描き方がほんとうまいし怖かったっすね。
また、出てくる怪談話自体は適当なものなのにそれとは関係なく怖い目に遭うという理不尽さも好き。オチも本書で最も綺麗に決まってます。
加えて、オタク陰キャ少年が好きな子にイジワルする青春ストーリーにも読めて、黒歴史を想起してむしろオバケ原くん視点で悶えました。中学の頃女子からあんな風に見られてたのか......。
実は私これ入浴中に読み終えたのですが、読み終えてさてシャンプーしようと目を閉じたときに、私も幽霊なんか信じちゃいないのにすごく怖くなりました。これでも今年で25歳になります。



「分身」

自分の外見がいつまでも大人っぽくならないことに悩む会社員の主人公が迷信深かった祖母の予言を思い出すお話!

これも怖かったです。
雰囲気としては「浄眼」に近い、主人公が自分の体に対する違和感を膨らませていく話ですが、「浄眼」よりも異変がはっきりしているので感情移入もしやすかったです。
また、主人公の私生活がほぼ描かれないので、この短編のためだけにふわっと生まれた人間みたいな印象があり、それが分身というタイトルの味わいを深めます。
また、これまでは自ら動くことのなかった御崎教授が今回はいやに乗り気になってしまうのも怖いところ......。
怒涛のようにおぞましいことになっていくラストも印象深く、映像的なインパクトは本書でも一番。気持ち悪く、それでいて切ない余韻が残ります......。

連城三紀彦『白光』読書感想文

ひっさしぶりの連城三紀彦
旧サイトにはたくさん感想のっけてるようになかなかのファンではあるのですが、少なくともこっちのブログ初めて以降は読んでなかったですね。この度久しぶりなので短めの長編でなおかつ評判もいい本書を選んでみましたが、うん、正解。
もうべらぼうに面白くかったし、今までは連城三紀彦には読みづらいイメージがあったのですが、本作が特別なのか、私が読書家として成長したからか、今回は一気読みしちゃいました。
もうほんと、寺生まれって凄い、改めてそう思いました(寺生まれでわない)。

白光 (光文社文庫)

白光 (光文社文庫)



はい、それでは本作の内容を紹介していきます。

夫と娘、痴呆が酷くなってきた舅と暮らす主婦の聡子。一見ごく普通に見えるこの家庭で、4歳の少女が殺される事件が起きる。殺された少女は聡子の妹である幸子の娘。幸子が出かけるために預かっていたが、歯科医に行くためボケた舅と2人で留守番させていたところだった。警察は舅を疑うが、やがて両家の抱える問題が次々に浮き彫りになり、事態は混迷を極める。

といった具合に、少女を殺した犯人探しが一応の本筋ながら、その過程で見えてくる関係者たちの秘密と嘘が主眼となっています。
特徴的なのが、複数の人物の一人称 or 単視点三人称で物語が語られていくこと。
そのため、連城作品ではお馴染みの、嘘や思い込みといった心理描写のどんでん返しを幾度も味わえる贅沢な作品になっています。
なんせ、この人の作品はいつもそうですが、「私はこう思った、というふりをしてこう思った、ように見せかけて実はこう思った、のだがそれは周りにそして何より自分についた嘘で本心はこうだった、というのは勘違いで......」みたいに、際限なく反転していく心理描写。ここまでくると、もはや人間心理の枠を超えた"なにものか"の範疇に足を踏み入れてしまっているようにさえ感じられ、心理描写に凝りすぎて却って不自然で人工的になってしまっているという歪さがあります。これぞ、連城作品でしか味わえない異様な醍醐味ですよね。
まぁ、これって連城作品のどれにも当てはまることではあると思うのであれですが、本書はこうした心理的どんでん返しが短いページ数で何度も決まった、連城作品の中でも特に傑作の部類に入る作品だと思います。



で、これだけだと連城三紀彦自体の感想みたいになっちゃうので、以下はネタバレありでもう少しだけ本書特有のよかったところについて書いていきます......。

























はい、ではこっからはネタバレコーナー。

なんと言っても、解説でも指摘されていた通り芥川龍之介の「藪の中」を具体的な"解決"のあるミステリの範疇でやってしまうという大胆不敵な構成が面白いです。
全員がある程度読んでいて納得のいく論拠の下で犯人だと名乗り出て、それがまた別の人物の告白によって覆され......といった形でどんどん事実だと思っていたことが反転していく面白さ。その末にある解決では、もはや被害者や故人までが"真犯人"の称号を奪い合い、結局のところ起こった出来事自体は明確になりながらも、心理的な意味ではみんなそれぞれ犯人でした!みたいな、なんとも複雑な構造が見事......というよりはちょっと巧すぎて怖いくらい。
その中で、両家族にとって完全によそ者であるはずの平田青年だけが少女の命を心配し守ろうとした、という皮肉もまた悲しいですね。

そんなどろどろ昼メロからのイヤミス的しんどいミステリですが、小説としては全員に部分的ではあれ感情移入できる余地があるのがまた小憎たらしいところでして......。
全員がどこか歪んでいて最初は感情移入できませんでしたが、歪むに至ったプロセスがじわじわと解きほぐされていくにつれて、全員にどこか同情してしまうようになり......。もちろん、何の罪もないのに大人たちの勝手な業を投影されて殺された(殺すような動機を全員から持たれていた)少女のことを思うとつらいですが、だからといって誰が悪いとも言い切れない感じがね......。ずるい。
また、「白光」というタイトルも良い。登場人物それぞれが見た白い光として物語全体を儚く覆っていて、筋立てとは関係ないですが象徴的なモチーフとして印象付いた素晴らしいタイトルだと思います。
きっと、本棚に並ぶこの本の背表紙を見るたびに、あの島の白い光が、そして少女が最後に求めたあの白い光が、私の脳裏にもふわっと差してくるのでしょう。

さくらももこ『ちびしかくちゃん』(全2巻)を読みました。


静岡に旅行に行ったんですよ。
そんで、ちびまるこランドに行ったらこの本がお店に並んでて、「なんぞこれ」と思って思わず家へのおみやげに買ってきちゃったんですけど、読んでみたらまぁ〜いい意味でしょーもないセルフパロディ漫画で、ニヤニヤが止まらんですわい。


主人公は「まる子」ならぬ「しか子」ちゃん。そのまんま四角い顔。
家族構成はまる子と同じだけど、家族全員顔四角い。クラスメイトたちもまる子と近いけどどっかちょっとずつ違う。
しか子ちゃんはまる子みたいに要領よく世の中を渡っていけない引っ込み思案な女の子なんですが、そんな彼女を取り巻く家族や友人はみんな「ちびまる子ちゃん」のおなじみの面々よりちょっと性格悪い。
お母さんはすぐキレるし、お姉ちゃんはお姉ちゃんという立場を利用していじわるばっか言うし、おじいちゃんも孫は可愛いけど我が身が一番可愛いという保身主義者。
そして、親友の「だまちゃん」が、「たまちゃん」とは違って最低の人間だったり......。

各話数ページのショートストーリーなんですが、どれももう話もめちゃくちゃで、人間社会のつらみがのしかかってくるオチで、でもなんかにやにや笑えて......。
ちびまる子ちゃん」の世界をパロディにしつつ、「さくら先生がこれ見たら草葉の陰から泣くでしょ......」というようなヒッドいパロディをまさかのさくら先生本人がやってるんですねぇ。お前自分で書いたんかーい!(ズコーッ!)

私は中学生の頃さくらももこのエッセイをいくつか読んだんですが、どれもめちゃくちゃ面白かったんだけどさくら先生の性格の悪さが滲み出てて「絶対友達になりたくないわー」と思ってそれ以来あんまり関わらないようにしていたのですが、やっぱり皮肉めいたゆるさでは日本一ですよね。
もちろんアニメのまる子は見てましたが、エッセイを読んでから実に10年ぶり、漫画を読むのは初めての今作で、ちょっと本家の「ちびまる子ちゃん」も原作ちゃんと読んでみたいなという気持ちになりました。そのうち「ちびまる子超おもしれー」ってツイートしだしますので温かく見守ってください。