偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜2022/11

遡ってやってきた「今月のふぇいばりっと」コーナーもこれでおしまい!
今年からはもう映画の記事も内容薄かろうがなんだろうが記事数稼ぐために単体で載せることにしましたので、これにておしまいです。応援ありがとうございました!



今月の作品はこちら。

・テリファー(2016)
・X(2022)
・激突!(1971)


テリファー(2016)



ハロウィンの夜、酔った2人の女の子が殺人ピエロに遭遇するお話。

低予算B 級ホラーであることをしっかり自覚しているようで、余計な演出とかドラマ性とかは削ぎ落としてただ殺人ピエロに追われるスリルと人体破壊の面白さだけに振り切っているところがとても愛おしい作品です。
また、変なふざけ方はせずにシリアストーンを保っている、でもところどころで「怖面白い」くらいのギャグセンスもあるバランス感も大好きです。
おかげで、序盤の導入部を除けば全編が怖いシーン。
「こいつ怪しくないか......?大丈夫か......?」「ちょいちょい、後ろにおるんちゃうか......?大丈夫か......?」「うわ、出た!」みたいに緩急は付けながらも、常に緊張感が持続していく感じは大好きな『ハイテンション』にも通じる気がします。だから好きなんだと思う。
とにかくピエロさんが一言も喋らないのが良いですね。完全に不条理を体現しているだけの存在で、でも反撃されると意外と弱いところなんかに人間味があってギャップ萌えしちゃいます。顔が普通に怖い。
掃除のお兄さんとかヤバいおばさんとかもなんか不気味で良かったですね。

惜しかった点としては、被害者側がけっこう反撃できるのに誰もトドメを刺さないのが、数回なら良いけど毎度毎度のことでちょっとイラッとしちゃうってとこすかね。
あと、オープニングエンディングの枠部分が意味深な割に特に伏線回収だとかはなくそのまんま終わるのが肩透かしではある。

とはいえ、スラッシャー系のB級ホラーで観たいところだけで構成された潔さが堪らない傑作でした。続編も楽しみ。


X(2022)



1979年。
6人の若者がポルノ映画の撮影のためにテキサスの農場を訪れるが、農場主の老夫婦がなんかおかしい......っていうお話。

めちゃくちゃ良かったです。

とりあえず映像が綺麗だった。
ポップかつアート的なカッコよさが観やすいバランスで入ってて、タランティーノオマージュな車のシーンとか作中作のポルノ映画とか牛さん🐄やワニさん🐊とかがカッコ良い。
それと単純にミア・ゴスが魅力的すぎた。

そんでお話も良かった。
レザフェちゃんでお馴染みテキサスの片田舎でのベタすぎる殺人劇ですが、「若さと老い」をテーマにすることでただのスラッシャーに留まらない深みを出してきます。
若者たちの割り切ったセックス観も嫌いじゃない一方、殺人老夫婦の姿に未来の自分を視てしまって怖さや悍ましさよりも哀しさが強かったです。いや、むしよ悍ましさを感じてしまうことのいたたまれなさかな。なんにしろどっちを応援していいのかわからんかったっすね。
意味深な結末と、その後でサイコーなラストシーンがもう堪らんイキそうでした。

王道スラッシャーの楽しさと今風なテーマの両立がしっかり成された傑作。続編もある、つーか3部作構想らしいので今後も楽しみでしかないっす。


激突!(1971)

激突! (字幕版)

激突! (字幕版)

  • デニス・ウィーヴァー
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5年くらいぶり2回目。

荒野の一本道で仕事で急いでる主人公がゆったり走ってるタンクローリーを追い越すとそいつにめっちゃ煽り運転されるっていうお話。


スピルバーグの初長編で、制作費45万ドルと低予算ながらもアイデアだけで大勝利してる傑作です。

とにかくタンクに追いかけられるだけ。途中でガソリンスタンドやPAに止まったりはするものの、全編のたぶん8割以上は車で走ってるシーン。たぶん脚本A4で1ページくらいでしょっていうシンプルさ。
なんだけど、あり得ないくらい面白いんです。
まずアメリカの映画にいつも出てくる荒野のハイウェイの風景の美しさだけでも結構観れちゃったりして。これ以上ないくるい綺麗な青空の下で真っ赤な車と恐ろしくでかいタンクローリーとが疾駆してるだけで興奮しちゃうね。
そんで、緩急の付け方が上手いんすよね。セリフとかはマジでほとんど無いので、ほぼ緩急だけで観せてる。
同じ嫌がらせを何回かしてイラッと来たところで別のパターンを出してきたり、一瞬「あれ、いなくなったんじゃね?」と安心させてから出てきたり。また、前半はゆうても嫌がらせ程度だったのから一線を越えるシーンのインパクトはやっぱ凄くて「ひょえー!」ってなるし、そっからはギアが一段上がったみたいにアドレナリン全開で観れるし終盤はもはやスリラーからバトルアクションになったような感覚。
もちろん一貫してタンクの運転手の姿が見えないのも怖くて、その中で逞しい腕だけ見えんのも不穏。タンクそのものも怪物のように見えるし、運転手の腕も腕だけだとなにか人間ではない生き物のようで気持ち悪かったですね。

そんで、ラストがまたカッコいいっすね。特に説明もなく、その後もなく、ただ戦いの結末という事実だけがある感じ。
家で観てもこんだけ楽しいんだから、これ映画館で観てみたいですね。どっかでやってくれんかなぁ。