偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

君に捧げる「切断」ミステリ10選

😎へへへ、先週に引き続き、Twitterでやったやつのまとめです。
今回のテーマは「切断」!
ほんとはいろんな部位を切断したかったけど、読書量の少なさから首斬りが多くなってしまったのはお恥ずかしい限り。しかしどれも面白いことだけは間違いないですからね!へへん🔥




1.島田荘司占星術殺人事件

40年前、「6人の処女の体の一部を合成して完璧な女性のアゾートを作った」という遺書を残して画家が死んだ。その後、遺書の通り体を切断された女性たちの遺体が発見された。そして現代、天才御手洗潔が事件の謎に挑む!

まずはベタ中のベタですがこの作品を。
あまりに魅力的な謎と、それに負けないトリック。さらにトリックだけに頼らないストーリーの面白さも備え、本格ミステリ復興の嚆矢となった名作。
トリック知らなかったらもちろん、知ってても一読の価値あり、です。




2.西澤保彦『解体諸因』

九つのバラバラ殺人に匠千暁らが挑む、著者デビュー作でもある連作コンセプト短編集。

全編切断づくしの作品集なので選出するしかなかったですね。
九つの収録作ですべて切断を扱いながらも、事件の状況も切断の理由も毎度違うのが凄い。そして、各話の連関も凝りに凝っていて、切断ファン(なんだそりゃ?)はもちろん、趣向の凝らされたミステリが好きな方には積極的にお勧めしたい一冊。




3.積木鏡介『誰かの見た悪夢』

大学生の男女が、醜怪な幽霊病院で猟奇的で狂騒的な連続首斬り殺人に巻き込まれる。

現在進行形の首斬り事件と、病院関係者たちの過去とが絡み合う盛りだくさんな展開がまずは楽しい。
また、怪奇探偵小説らしいなんとも異様な雰囲気も良いです。
そして、著者らしいやり過ぎな展開の中で明かされる首斬りの理由に呆然。......と思いきやさらにさらにヤバみの連打からの、なぜか泣けるラストまで、最後までチョコたっぷりなハイテンションB級ミステリです。




4.飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』

かつて首斬り殺人が起きた田舎町へ引っ越してきた少年。部活で親友を作り、想いを寄せる先輩とも仲良くなるが、町では再び凄惨な斬首事件が起きて......。

著者の持ち味であるホラーと美少女の要素を詰め込み、ミステリとしても盛り沢山な内容の力作にして超傑作。
悪魔、蟹女、獣姦坊主、町の因習などなどあまりにいろいろ詰まってるので切断以外にも見所しかないわけですが、やはり首斬りに関するいくつかの爆笑ネタは今なお鮮烈に脳裏に焼き付いているので選出しました。てか獣姦坊主ってなんやねん......。
ちなみに著者の『砂漠の薔薇』は首斬りが主役なのでこちらを選ぶべきだったかも。並べてオススメです。




5.三津田信三『首無の如き祟るもの』

首にまつわる伝承の残る山村・媛首村。
戦前、村の旧家の男女の双子の十三夜参りで、奇怪な事件が起こる。やがて戦後、今度は首斬り連続殺人の幕が開く。

刀城言耶シリーズ3作目ですが、読みやすいのでこれが初手でも悪くないと思います。
少年視点のパートはそのまま怪談短編としても読めるくらい怖かったり、ホラーとミステリの融合が見事な作品。
また、首切りにまつわるたった一つの事実から37の謎が一気に解ける解決編のカタルシスはもはや異常。さらに特別付録・首無し屍体の分類も収録。首斬りミステリの新たな金字塔とも呼ぶべき力作です。




6.北山猛邦『「ギロチン城」殺人事件』

数々の処刑具と過剰なセキュリティ装置を持つ『ギロチン城』。外界から隔てられた城で過去に起きた密室斬首事件。そして、探偵と友人が城を訪れた時、再び凄惨な事件が起こり......。

城シリーズ4作目ですが話の繋がりはないのでこれから読んでも可。
現実から乖離した本格ミステリ空間とも言うべき雰囲気と、記号的を超えて本当に記号なキャラクタ。そして、四重密室斬首事件と来たらテンションブチ上がり。
事件のトリック自体はまぁ予想しやすいものですが、予想外のところからのメイントリックがヤバい。そのネタもまた「切断」の2文字を思わせる、タイトル通り全編切断に彩られた傑作です。




7.貫井徳郎『妖奇切断譜』

戊辰戦争の後の東京。美女を描いた錦絵が流行るが、やがてモデルになった女が次々にバラバラ死体となって発見される。

シリーズ2作目。これは出来たら順番に読むべきですね。
冒頭から屍の山が描かれ、全編にわたって猟奇と狂気に満ちたおどろおどろしさが良い。

そして、まさに狂気のサタデーナイトとしか言いようのない、それでいて確かに納得してしまう真相には唸らざるを得ません。
視覚的にも心理的にも、切断らしいエグさがばっちり味わえますよ。← ああ、嫌だ嫌だ。




8.歌野晶午『ROMMY 越境者の夢』

人気絶頂のシンガー・ROMMYが絞殺された。そして、一瞬目を離した隙に、遺体はバラバラに解体され胴体が持ち去られていた。

歌野さんの作品の中でも、物語としての魅力が意識され出したターニングポイント的一作。『葉桜』への助走のような。
1人の人間が伝説の歌手ROMMYになるまでがあらゆる角度から語られ、歌詞カードなども挿入されるといった遊び心のある構成が魅力的。
真相はシンプルながらも、明かされることで物語の余韻が格段に深まり、ROMMYの数奇な人生を想って泣けてしまう、切な系本格です。




9.綾辻行人「再生」

首の無い妻の屍体を前に、男は待つ。彼女の"再生"をーー。

『眼球綺談』収録のホラー短編。
あまりに異様な首無し屍体のある風景の美しさがとても印象的。あまりに異様な「再生を待つ」という行為に引き込まれて一気に読まされてしまいます。そして、あまりに異様な結末が、恐ろしくもどこか切なく、でもどこか笑えてもしまう。フランス料理みたいに複雑な後味が愉しめる、奇妙な味の名品です。インパクトがすげえんじゃ。




10.駕籠真太郎『フラクション』

連続輪切り魔が、自らの模倣犯を追う「WAGIRI-MA」
漫画家・駕籠真太郎が、輪切り魔事件を漫画にすべく、編集者にミステリ漫画講義を行う「MANGA-KA」
2つの物語が交差した時、驚愕の真相が明かされる......。

最後は漫画からセレクト。
単巻の長編漫画なんですが、とにかくバカなんです!なんせ、巻末対談で霞流一先生が出てきてるから、正統なバカミスですよ。
しかし、悔しいかなネタはしっかりしてます。全編が伏線になってる上に2つのパートそれぞれに驚愕の真相が待っていたりするから、脱帽しつつ笑いながら怒るしかねえ。
漫画ならではの視覚的に強烈な切断屍体シーンの数々が夢に出そう。