偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜(2019.7)

7月はめっちゃ映画観ましたねなぜか。



トゥルーマン・ショー
スリザー
ラストベガ
セブン
メリーに首ったけ
愛と青春の旅立ち
ネクロノミカン




トゥルーマン・ショー

トゥルーマン・ショー [Blu-ray]

トゥルーマン・ショー [Blu-ray]


海に囲まれた街に暮らす平凡だが幸せな男トゥルーマン。しかし、彼の人生は生まれた瞬間からリアリティ番組として24時間全世界に配信されていた。街はセット、妻も友人も通行人も全て役者。知らぬは本人ばかりなり。しかし、とあるきっかけで世界がおかしいことに気付き始めたトゥルーマンは......。


という、設定からしてめちゃくちゃ面白そうな作品ですが、実際めちゃくちゃ面白かったです。

まずもって、ジム・キャリーの魅力よ。
私がはじめて彼を見たのはたしか「エース・ベンチュラ」で、腹抱えて笑ったもののあまりの顔芸のクドさにだんだん鬱陶しくなってしまったのですが、その後「エターナル・サンシャイン」で見せたシリアスな演技ですっかり参ってしまったわけで。
いつものふざけた演技はそれこそマスクで、素のジム・キャリーは深い孤独と憂いを抱えている......かどうかは知りませんが、エタナルでそういうイメージを持っただけに余計、本作のトゥルーマンに空虚なものを感じてしまい、ついつい見入ってしまいました。

自分が観られていることに気付かず暮らすトゥルーマンの姿をコメディタッチで描いていきますが、そのユーモラスささえホラー。自分の人生が作られたもので、実はみんなに観られていたら......なんてことは誰しも想像したことはあるでしょうが、それを物語にしてしまうとこんなにも怖いものなのかと震えました。
街のいたるところに「飛行機に乗ると墜落するよ!」「地元最高!」みたいに外に出たくなくなるように、情報さえ管理されて与えられているというのが怖い。
そしてまた恋愛さえも与えられた女性との与えられたロマンスを演じさせられる。自らの意志は潰され、操られていると気付かぬままに操られている。

恐ろしいのが、この状況が利益だけではなくある程度の善意で作られていること。トゥルーマンに理想の人生を与えてやっている製作陣、彼を愛し見守っている観客たち。そんな動物園の檻の中の絶滅危惧種みたいな扱いが恐ろしい。
そして、一番恐ろしいのは、自分もまた観客であり、それを知らぬが仏と思ってしまう自分もいること。
だって、自分の人生がテレビ番組だと知らないままお膳立てに従って理想のホームドラマを演じて死んでいけたら、それはそれで楽でいい人生なんじゃないか......?という問いを突きつけてくるのです。自分で選んでもこんなゴミみたいな人生を送る私からしたら羨ましくさえあるよ。

それでも、気付いてしまえばそれはもうカタストロフ。中盤からの、世界がバグる感覚はもう完全にホラー。
ただ、あり得ないような出来事が次々と起こっていくのは映像的には不思議でとても面白くて怖いけど目が離せない。
なんて言ってる間に怒涛のクライマックスからのラストシーンがヤバイっすね。だって、普通に生きててあんな状況を経験するなんてあり得ないっすから、未知の感情との遭遇ですよ。冒頭の平凡なホームドラマからラストシーンまでの飛距離に驚きながらも、祭りの後のような奇妙に静かな満足感もあって、改めてなんてものを観てしまったんだという感慨があります。

うん、なんてものを観てしまったんだろう。これはなんだったんだろう。
自分とは何かという哲学的な問いかけでもあり、世界が崩壊するホラーでもあり、ショービジネスを皮肉った社会派ドラマでもあり、運命の恋を追いかけるラブストーリーでもあり、世界を変える神話でもあり......なんかもう、あらゆる感情が詰まりすぎていて圧倒されるほかないのですが、あえて一言で言い表すならばこうなるでしょうね。

そう、めっちゃエモい!




スリザー


とある田舎町に隕石が降ってきた!
妻のスターラと喧嘩をしたグラントは気晴らしに散歩してるところを隕石から出てきた地球侵略を目論む宇宙人に寄生されてしまい......。

これは思わぬ掘り出し物でした!
肉塊系グチャドログロテスクエイリアンSF(ややコメディ)の皮を被ったドロドロ三角関係ラブストーリー。ただし皮を被りすぎてほぼ皮しか見えない!


いやもうグロい......ってゆーかキモい。キモすぎ!
わりと早い段階で既にキモグロ肉塊火星人になってしまった夫の衝撃映像が流れるスピード感に好感。さらには肉風船bomberナメクジ型ペニス大量発生ズルムケちんぽこパニックに生理的不快感が行き過ぎた謎の快感で爆笑と吐き気の同時責めされたらもう敵いませんよ〜〜。
スリザーってのはずるずる滑るって意味らしいですが、まさか粘液まみれのちんちんがずるずる滑るってお話だとは思わず笑いました。
でもこのちんこナメクジの鳴き声(?)とか動きに妙に愛嬌があるのもウケました。口から入ってくるってのは最悪ですけどね。

あと、風呂場のシーンとか、終盤で大人気のあのジャンルが入ってくるとことか、ホラー映画愛に溢れるパロディとしても絶品でしたわいね。いい意味で既視感のあるシーンも多くて「そうそうこれが観たかったのよ!」みたいな!


......しっかしそういう肉肉しいモンスターパニックやホラーパロディの皮を剥いてみれば、現れるのは嫉妬の恐ろしさと切なさを描いたズルムケのラブストーリーだから驚きです。これ、どっち視点で見るかでごそっと印象が変わりますけど、そういう愛の視差の恐ろしさもテーマなのであろう、シンプルにして普遍的な恋愛映画でした。
ラストは二重の意味で泣けちゃったりなんかもして、うん、まさかの感動作......。

てなわけでクソホラーかとナメていたらあれやこれやと振り回されてなんかヘンなとこへ連れていかれちゃう素晴らしき官能純愛異星人侵略肉塊映画でした。文句なしにオススメ!




ラストベガ

ラストベガス(字幕版)

ラストベガス(字幕版)


幼馴染で60年来の友人であるじいちゃん4人組。
そのうち1人だけ長らく独身だったビリーが若い女と結婚することになって、ベガスで4人組で婚前パーティ!でも妻を亡くし失意に暮れるパディは、ビリーとの間に深い確執を抱えていて......。


超豪華老人会による、下ネタ満載だけど最後はほろっとくるエンタメ純度100%のハイテンションコメディっす。

最初、ビリーが友人の葬式で散々アメリカンジョークをぶちかました後で小娘にプロポーズするシーンで爆笑しちゃえば後はもうハマります。

いったいこういうアメリカのコメディはどうしてこんなに愉快痛快なのか。この人たちがドヤ顔でアメリカンジョークを繰り出すたびに「うへへっ」って声出ちゃう///
若い男を脅すくだりなんて、「アンタッチャブル」観てたら「マジやん」としか言いようがなくて恐ろしかったですw
あとベガスだけあって巨乳美女たちが水着でたくさん拝めるのも素晴らしい。普段辛気臭い映画ばっか見てるけどたまにはこういうハッピーなのもいいっすよね。

でもそんな中にもドラマはやっぱりあって、人生を知り尽くしているようでもあり、ずっと子供のままのようでもあるような彼らが今再びの青春模様を繰り広げる様には胸を締め付けられたり、お祭りの後の寂しさっていうあの感覚に泣きそうになったり......。分かりやすく青春のエモをぶちかましてきてくれてサイコーです。

そして、エンディングがセプテンバーなのも嬉しい。踊りました。




セブン

セブン (字幕版)

セブン (字幕版)


新人刑事ミルズと定年前の最後の一週間を迎える刑事サマセットのコンビは、七つの大罪に見立てた猟奇殺人の捜査をしていくが......。


2回目の鑑賞。筋は知っていたものの、改めてモノスゴ過ぎて震えました。人智を超えた超傑作です。

まずもって映像がカッコ良すぎます。
暗くて鬱々としてて、雨が印象的にもかかわらず変にじめじめとはしすぎないスタイリッシュな画面に釘付け。

メインキャラは主役の刑事2人とブラピの奥さんの3人だけ。だからこそキャラの描き込みがしっかりしてるんだけど、でも説明的にはなりすぎてないのもいい塩梅。
奥さんがモーガンに相談する場面とか、人間臭すぎて好きすぎました。

事件の写し方についてはエグい見立て殺人のわりに淡白で、たぶんこの監督、ホラーとかミステリーをやることに興味ないんだろうなぁと思わされますが、それがいい方に出てるというか。
私なら七つの大罪の見立て殺人ならもうここぞとばかりにグロい死体とか密室トリックとか犯人当てとか盛り込みたくなるところですが、そういうゴアや謎解き要素は皆無。
むしろ周到におぞましいことをやってのける犯人の冷静さ、ただのサイコ野郎じゃなさそうなことが怖いという感じ。


そして、そんな犯人がついに出てくるラストはもう本当に衝撃。
何から何までキマりすぎてます。今まで神とか悪魔とか信じてませんでしたけど、こんな見事な脚本が書けるのはそのどちらかしかいないのでは。少なくとも、人間が書いたのではないと言い切れます。
この予想外にして納得のオチの上手さ自体がどんでん返しとして衝撃的な上に、それが単なる驚かせるためのどんでん返しではなくて、本作における「人生とは?」というテーマそのものでもあるわけですから。この上手さは人智を超えてますよ。

なんかもう、これは好きとか以前の問題として、ヤベえっすね。
あとエンディングがボウイのハーツフィルシレッスンなのに今回初めて気付きましたがカッケェよな。




メリーに首ったけ


キャメロン・ディアスマット・ディロンと大スターが出てるから、ゆってもそれなりにまともな映画だと思ってたらクソほどお下劣なアメリカン・シモ-ジョーク・コメディだったのでびびりました。

発端となる出来事からしてちんこ見えましたからね。作り物とはいえ、ちんこがモロ出ましたからね!


高校時代、奇跡的にプロムに誘えたものの一緒に行くことができなかった美少女メリー。あれから13年、彼女のことを忘れられないテッドは探偵を雇いマイアミにいるというメリーの居場所を突き止めようとするが......。
というお話。


もう、とにかくキャメロン・ディアスが魅力的すぎてやばい。
こりゃ画面越しに観てるだけで首ったけになっちゃったから実際に身近にいたら100億千万%首ったけですよね!
どうでもいいけど、子供の頃は首ったけの意味を知らずにメリーちゃんという女の子が首だけになっちゃうホラーコメディだと思ってました。あんな無垢な頃に観なくてよかった。むしろ観てても何も分からなかったか......。

もう、とにかくキャメロン・ディアスが魅りょ......って、これはさっき言ったか。何回でも言いたくなるくらい可愛いんですよ惚れたわ腫れたわまじ卍インスタ映え

で男たちもこれまたどいつもこいつも個性が過ぎますよ。観てるぶんには爆笑しつつも「リアルに知り合いでこんなやついたら殺してるわ」ってくらい最悪なやつらばかり。でも映画の中では憎めないから映画って本当にいいもんですねぇ〜。

あと、とにかくキャメロン・ディアスが魅力的すぎてやばい。
たぶん静止画ならそこまで(いや、もちろんめちゃ美人なんですけどまだしも)首ったけとまではいかないだろうけど、その表情が動くと男はぶち抜かれるんだよハート。そう、本作に出てくる男たちは最悪だけど、たしかにどんなことをしてでも手に入れたくなるあの笑顔はプライスレスですよ。

そして、とにかくキャメロン・ディアスが魅力的すぎてやばい。
ジャケ写の髪型の誕生秘話とかクソわろいはしたんですけど、キャメロン・ディアスにあんな......って何だか酷く主人公が羨ましくなつてしまつたんですよね。ああ、あんな神をも恐れぬ......あれ、されたい!!()

てなわけで、ほぼほぼキャメロン氏の魅力でぶちかましてる映画ではあるんですが、ギャグも悪い意味で面白く、ラブストーリーとしてもシンプルにいい話なのでサイコーでしたわ。

うん、俺もメリーに首ったけ💫




愛と青春の旅立ち


母を亡くし、娼婦に溺れる父親の元で育ったメイヨが、人生を変えるために士官学校に入り、製紙工場で働くポーラと恋に落ちていくお話。


メイヨが過ごす士官学校の卒業までの厳しい13週間を軸に、恋愛、友情、上官との関係などが描かれていく非常に重層的な人間ドラマです。

なんせ、色んなことが描かれるし色んな人が描かれるから、一言で言えば「一言で言えない」というタイプの作品です。

近所のTSUTAYAに行くと、映画ってのはたいていホラー、コメディ、青春、ラブストーリー......みたいにジャンル分けされていますが、人生はジャンル分け不可。棚分けしようとすんな、終わらないPOVだ、曖してくのさ曖してくのさ、なんてベボベが歌っていた通りでありまして。
恋も訓練も友情も親もあるし恋人も友達も仲間も上官も恋人の家族も街のチンピラも色んな人がいて、それらが全て複雑に絡み合っているのが人生というもの。

だからなんつーかまとまった感想は書けないけど、とにかく喜怒哀楽あらゆる感情が詰め込まれてて、いくつもの印象的な場面がそれぞれバラバラに胸に残るようなイメージの後味ですかね。
ただそんな中でも個人的にはこの世代のリアルな恋愛事情が刺さりましたね。時代こそ違え、共感できる部分は多々ありました。
そしてやっぱり有名なラストシーンは色々もにょもにょと後を引きながらも胸キュンでしたね。
あと、教官がめっちゃいい奴だった。なんの関係もないけど『セッション』のクソハゲとの格の違いを思ってあのハゲやっぱクソやったな〜と謎の実感を深めました。




ネクロノミカン

ネクロノミカン [DVD]

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ラヴクラフトを原作に、3人の監督が愛とグロを描くオムニバスムービーです。

まず、ラヴクラフトが"悪魔の書"を邪教の教会みたいなとこの図書室で見つけるという枠の部分は、第3話も手がける我らがブライアン・ユズナが監督。
プロローグこそありがちなものの、エピローグの方ではさすがの悪趣味さを見せてくれました。
そして各話については以下に......



1.The Drowned
サイレントヒル』のクリストフ・ガンズ監督。
妻子を失った男が人体錬成に挑むお話です。

いつの世でも人体錬成に犠牲はつきものでありまして......。愛の深さゆえに悲劇になってしまうという物語によよと泣きつつもクトゥルフと聞いて真っ先にイメージするタコさん聖人の登場にはやっぱテンションも上がっちゃうし泣きながら「うへへタコさん可愛い〜」ってなりましたね。退屈な前半をぶっ覆すラストの狂騒的ぬるぬるバトルが最高。



2.The Cold
デスノート』の金子修介監督。
若い女性が寒い部屋に住む医者のおっちゃんと恋しちゃうお話。

クライマックス以外グロ度は控えめながらお話が一番ちゃんとしてて、一番真っ当に面白かったです。
おっちゃん医者が良い人なんだけど抱えている秘密のために恋は悲劇的に終わってしまうというのが切ないですね。
で、その恋の終わり方というのがクライマックスでグログロのドロドロ。ほんとに、どろどろりんって感じでぐちゃどろりんです。
そして、その後の枠部分の結末も分かっちゃいながらなかなか衝撃的で、その怪奇な切なさの余韻がまじじわりました。



3.The Whisper
『死霊のしたたり』シリーズのブライアン・ユズナ監督。

警官のカップルがカーチェイス中に事故って、男の方が何者かによって近くの廃墟に連れ去られてしまう。女の方が追いかけると怪しい老人がいて犯人は"ブッチャー"だと語るが......。

一番ぐちゃぐちゃどろりん。
ストーリー性は一番薄いんですけど、とにかくグロい。そもそも舞台がなんか胃の中みたいなぬるぬる壁の地下室だし、人体を切断して切断面から髄液を吸ったりしちゃいますからね。最高にハッピーな気分になれますね♪
ありがちではあるけど、あの絶望的な演出も好き。赤黒と白のギャップの残酷さが堪らんす。



そして、再びラヴクラフト氏の図書館パートに戻ってエンド。
ここのハゲ僧侶ズルムケ事件がもしかしたら本作全体のグロ描写の中でも最も好きかもしれません。爆笑ものです。金庫の閉まり方も中二病感満載で最高!
どうも全体にラヴクラフトの原作の要素は薄いらしいですが、B級スプラッタホラーとしては最高に面白かったのでそんなことはどうでもよく素晴らしい作品でした!