偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

今月のふぇいばりっと映画〜(2020.1)

こんにちは。

今月はほとんどホラーですね。別にそんなつもりはなかったんだけど、時々ホラー見たくなる時があるねんな。久々にそれだったのかも。




死霊の罠
死霊の罠2 ヒデキ
ミスト
悪魔のいけにえ
要塞警察
サマー・オブ・84

死霊の罠

死霊の罠 [DVD]

死霊の罠 [DVD]


深夜番組のMCの名美の元へ届いたビデオテープ。収められていたのは女性が惨殺される映像だった。映像が本物かどうか、映っている廃墟へ確認に向かった名美とスタジオの仲間たちだったが......。


本邦初の"本格的"スプラッタホラーと呼ばれる作品。
本格の定義がどうこうはよくわかんないですけど、これ以前にもそれっぽい作品はありつつここまでガッツリやってんのは初めて、くらいな感じらしいっす。

で、これの1と2のBlu-ray化プロジェクトをクラウドファンディングでやるって言うからさ、出資したんすよ。作ったBlu-rayがそのままもらえる10000円コース。
で、届いて、ディスクの最後に収録された出資者の名前リストを見ながら「俺の名前どこだ〜?............無いっ!?」ってなりました。
そう、よくよくプロジェクトの資料を見ると、名前がクレジットされるのは1000円コースと15000円コースのみで、なぜか10000円コースはクレジットされないらしいと気付いてガックリしました。これが本当の資料の罠、ですね。

......なんていうくだらない愚痴はともかく、作品自体は素晴らしかったです。

冒頭からどっかで聴いたことある(ものを数段ショボくした)ような音楽のオープニング。
主人公の元に届いたスナッフビデオのチープながらスタイリッシュな映像美に引き込まれます。
日常パートは雑に飛ばして(島田紳助懐かしい......)一気に廃墟へ向かうスピード感のある展開も良し。美女たちが廃墟をお散歩するだけで不穏な美しさが醸し出され、その場でヤっちゃうのも、セックスした女から殺されるのも鉄板の13金イデオロギー

その殺し方もまた凝ってて好き。
ギャグみたいな串刺しから始まり、エロすぎる格好で車を乗り越えたり、はたまたジグソウ先生を思わせる機械仕掛けのトリッキーな殺しまで、とにかくどれも面白すぎます。

そうこうしてるうちに、中盤くらいまでに主人公たち主要キャラ以外の全員がぶち殺されてテンション上げ上げ。
このへんまでは、13金とか悪魔のいけにえみたいなアメリカの古典の展開に、フルチやダルジェント(略称)みたいなイタリアの悪趣味さをまぶしたような、要はスラッシャーファン垂涎の内容に仕上がっているわけです。


ただ、終盤になると人がどんどん殺される展開に一区切りつき、ちょっと別の作品になったみたいに雰囲気が変わります。
こっからは言うなればJホラー的な情念がじわじわと出てして、やや冗長にも感じます。
しかし、クライマックスはクローネンバーグとかヘネンロッター的な、気持ち悪すぎて性的興奮に近い興味を覚えてしまうようなグロさが堪らんのです。


そんな感じで、好きなホラー映画の要素をコラージュしたみたいな良い意味で同人誌的な歪ながらに剥き身の熱量が伝わってくる作品でした。個人的にはこういうハチャメチャなホラーは大好物なので、時々思い出し笑いしちゃってます。
何はともあれ、Blu-ray化おめでとうございますね㊗️🎉




死霊の罠2 ヒデキ

死霊の罠2 ヒデキ

死霊の罠2 ヒデキ

  • メディア: Prime Video


というわけで、2です。

2とは言っても内容は特に繋がってなくて、「ヒデキ」という名前の子供が出てくるってことだけ。
内容はめちゃざっくり言うと女2人が1人の男を巡って戦うっていうもの。
子供が出てくるってえと、普通なら「オーメン」みたいな子供怖いホラーになりそうですが、本作におけるヒデキはほぼ空気でした(笑)。たぶん、ヒデキは登場人物たちの心の闇みたいなものを仮託したシンボル的な存在であって、彼自身が何かをするわけではないんです。
そう、本作はホラーというよりは、人間心理の闇を描いた観念的な作品なんですね。だからけっこう難解だし。
個人的には前作の感じを期待してしまい、肩透かしを喰らったかなぁというのはあります。

とはいえまるっきり別物として見ればなかなか面白いのではないでしょうか。



ほぼ廃墟が舞台だった前作に対し、今作は東京の街が舞台になっていて、ビル街の灯りなどの華やかではありながら虚ろさも感じさせる都市の撮り方が美しいです。

で、登場人物が全員イカれてます。
そして、なんというか、自我が肥大化しすぎて他者との繋がりが虚無ってるんですよね。そのことの象徴的なモチーフがセックス。序盤の生理的嫌悪感を催させるホテルのシーンでは愛どころか快楽さえあまり感じさせない、むしろ嫌々面倒な作業をこなすような交尾が描かれてちっともちんちんが勃ちませんでしたね。また子供ができると言うことさえ、欲求を満たす道具にしか使われない。
そういったドライな人間描写が続くのが非常に印象的。それが終盤にかけてだんだんドロドロしていくのが凄絶。醜女と美女の接近戦の画のヤバさよ。あと、クライマックスの佐野史郎のヤバさよww

結局最後まで見てもどういう話かさっぱり分かりませんでしたが、よく言えば白昼夢のような不思議で異様で怪奇な様子と、都会の空気の生々しさのギャップがなかなか面白く、なんだかんだ嫌いじゃなかったです。まぁ正直中盤ちょっと寝たけど......。




ミスト

ミスト (字幕版)

ミスト (字幕版)

  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: Prime Video


とある田舎町にある朝突然、霧が立ち込める。
息子を連れてスーパーマーケットに買い物に行った主人公は、"霧の中に棲むモノ"の姿を目撃し、他の客や従業員らと共に店に立て籠ることになるが......。


はい胸糞〜。
というわけで、後味悪い映画の世界代表選手たる本作、数年ぶりに観ましたがやはり後味悪かったです。でも面白い!


もうとにかく全編に渡って緊張感がやばい。

あの怪物(?)ども、今見るとCGはややちゃちいものの、メタル感の強いビジュアルには中二心をくすぐられます。タコさんとかもうちょい触手プレイ的なヌメヌメしたイメージだったけど完全に鋼鉄製ですやん。あと虫キモいやめて。虫はあかんねんキモいねん。

ってな具合に愉快な邪神たちとわちゃわちゃバトルを繰り広げる一方で、もっと怖いのは人間ですよみたいなよくあるアレなんですけどそこがまぁ非常に良さがあるんですな。
なんせ、ガチで悪意のある人間はいない中でもこんなことになってしまうわけですからね......。信じるものの違いや心の強さ弱さによって、集団は簡単に分解して争いが生まれてしまうという......このスーパーマーケットが世界の縮図のようでもあり、怪物よりも人間関係の方によりヒリヒリします。

そして、本作を語る上で外せないのはオチのえぐさ。
まぁ、なんとなくそういう方向へ向かうんだろうとは考えたんですが、その予想通りにいくかと見せかけての、それを超える胸糞悪さにはやられましたね。はい。
彼女と一緒に観たんだけど、見終わったあとしばらく口を利かずに黙ってラーメン食べてました。はい。




悪魔のいけにえ

悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(字幕版)

悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(字幕版)

  • 発売日: 2015/11/04
  • メディア: Prime Video


2回目。
やっぱり良いですね。はい。

テキサスを訪れた5人の若者が殺人鬼に襲われるお話です。

テロップとナレーションによるオープニングからしてただごとではない何かが始まる予感に満ちていて、冒頭のヤバいヒッチハイク屋さんを乗せちゃう場面ですでに予感は確信に変わる。俺は今、ヤバいものを観ているという感覚に囚われます。

こういうスラッシャー映画のエポックメイク的作品だと思いますが、後年の作品や、これの「2」と比べても、本作だけが空前絶後の異様な質感を持っています。
というのも、本作にはホラー映画としてのエンタメ性とかサービス精神みたいなものがないんですよね。グロ描写そのものは控えめだし、怖がらせようという演出もほとんど見当たりません。

その代わりに全編に満ち満ちているのは剥き出しの狂気と不快感。
この時代だからこその荒削りな映像は、全ての場面がそのまま美術品のように美しく、醜悪。
技術が進歩して映像が綺麗になっていっても、こういう昔の粗い映像に惹かれてしまうのは天邪鬼だから?
そして、終盤では台詞もほとんどなく、一応ヒロイン的な女の子のトチ狂ったような絶叫と、殺人一家の不愉快な笑い声だけが響くという、音の不快さも凄い。

で、ラストシーンがもう伝説ですよね。一応言い終わり方のはずなのに全然救いが感じられない。そして、最後のカットが凄い。今見るとやや萌えるんだけど、あの異様な色合いが目に焼き付いて徹頭徹尾でヤッベェもんを観ちゃったという気持ちになります。
そんな感じで、久々に観たけどやっぱやべえわこれ。よい子はみちゃダメなやつだよ。




要塞警察

要塞警察 デラックス版 [DVD]

要塞警察 デラックス版 [DVD]


囚人を護送中の一行が、引越し中の人も設備も薄い警察署に立ち寄る。
そこに、娘を殺された男が駆け込んでくる。
「追われているんだ!」
その時、電灯が切られ、署はストリートギャングたちに包囲された......。



警官と囚人が生き延びるために共闘するという、シンプルにアツいポリスアクションです!

なんつーか、うん、カーペンター、良いわぁ。この人の作品だとはっきり分かる音楽と映像。黒字に赤い文字とかっけえ音だけのシンプルなオープニングからしてワクワク。
前半はかなり静的に登場人物や状況の紹介なんだけど、とにかくずっと浸っていたくなるようなカラッとした映像の良さと、余白のありまくる物語の描き方にシビれます。
例えば、主人公は"ナポレオン"の異名を持つキザで知的な囚人なんだけど、なぜナポレオンなのか、なぜ人を殺したのかってとこが分かりそうで分からない。また他のキャラクターも台詞の端々に性格や来し方を想像させるような深みを感じさせつつも、それをわざわざ深掘りするような野暮なことはせずサラッと流す。
あるいは、人の死についてもかなりあっさりと日常と地続きのように描かれていて、そんな映画らしからぬリアリティが逆に映像として脳裏に焼きつきます。あの、少女のシーンとかね。

で、少女のシーンで犯人側への同情の余地を一切排してくれるから、後半のアクションパートは怖くてアツかったです。
何が起きているのか把握し切れていない時の静かな緊迫感。「転んだわ、あはは」なんて笑っているところから突然の"動"への転換。2分間の短くも長い攻防。そして絶体絶命。
一気にガラッと激しくなるここんとこの動き方がもう最高でした。
そしてナポレオン氏が本領発揮とばかりにお姉さんにキザなことを言いながら戦う様がカッコ良い。でもなんならむしろお姉さんのが更にカッコいい。

「時間なんか元からないさ」

そして、激しいバトルの後の静かであっけらかんとした「え、もう終わっちゃうの?」くらいな腹八分目エンドもキマッてる。

抑えたエモさの際立つ銃撃戦に、立場も違う見知らぬ他人同士が一瞬の邂逅を経てある者は死んで生き延びた者もまた元の他人に戻っていくような無常のドラマの渋さが静かに心に残る傑作でした。




サマー・オブ・84

サマー・オブ・84 [Blu-ray]

サマー・オブ・84 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ブロードウェイ
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: Blu-ray


ナインティーエイティーフォーのサマー、郊外の町。フィフティーンの少年デイビーと、友達の不良くん、メガネくん、デブくんの4人は今日も刺激と女を求めていました。
そんなある日、デイビーは隣人の警官マッキーが巷で起きた連続殺人の犯人なのではないかと疑って、一夏の冒険とばかりに彼が犯人である証拠を探し始めます。




なかなか良かったです。

舞台が1984なだけに、町の様子や主人公の部屋とかに80sの匂いがぷんぷんするんですが、しかし具体的な小ネタとかはあんまり出てこないのに好感が持てました。
いやまぁ、細かい小ネタを散りばめて教養をひけらかす様な作品も好きなんですけど、そういうことはあんまりせずに雰囲気だけ寄せてく潔さが良かった。

ストーリーはほんとにシンプルで、隣人が殺人鬼だという証拠を探すだけ。それだけに中盤やや長く感じてしまうことは否めませんが、全編に漂う青春のキラキラの裏にべったりと張り付いた不穏さがスパイスになっているため飽きることはなく観られました。

大人には束縛されながらも、それを破る彼らの無敵感は青春特有で眩しい。
しかしそんな無敵感が一時期だけの幻想に過ぎないのだと急に現実を突きつけてくるような嫌な大人みたいなラストが好きです。俺も嫌な大人になっちまったんだな......。

「連続殺人鬼も、誰かの隣人だ」

あと、ヒロイン的な女の子が可愛かった。こういう映画にいがちな男を振り回す嫌な女!女なんてクソだわ!という感覚が、モテないのに女の子への興味は強かった思春期を思い出させてくれてつらい。